FP1級 2017年1月 応用編 問56

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 Aさん(40歳)は、将来に向けた資産形成のため、上場株式と投資信託への投資を行いたいと考えている。Aさんは、上場株式についてはX社に興味を持ち、下記の財務データを入手した。投資信託については、YファンドとZファンドの購入を考えている。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

〈X社の財務データ〉(単位:百万円)
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〈Yファンド・Zファンドの予想収益率〉
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  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問56

《設例》の〈Yファンド・Zファンドの予想収益率〉に基づいて、YファンドとZファンドをそれぞれ6:4の割合で購入した場合の①ポートフォリオの期待収益率と②ポートフォリオの標準偏差を、それぞれ求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入すること。

正解 

① 3.70(%)
10%×0.4+5%×0.5+(-10%)×0.1=5.5%
(-15%)×0.4+10%×0.5+20%×0.1=1%
5.5%×0.6+1%×0.4=3.70%
② 3.35(%)
10%×0.6+(-15%)×0.4=0%
5%×0.6+10%×0.4=7%
(-10%)×0.6+20%×0.4=2%
(0%-3.7%)2×0.4+(7%-3.7%)2×0.5+(2%-3.7%)2×0.1
=3.35%(小数点以下第3位四捨五入)

分野

科目:C.金融資産運用
細目:9.ポートフォリオ運用

解説

〔①について〕
2資産から成るポートフォリオにおける、生起確率を踏まえた予想収益率は、各ファンドの予想収益率の期待値をファンドの組入比率で加重平均した値となります。
ファンドYの予想収益率の期待値
10%×0.4+5%×0.5+△10%×0.1=5.5%
ファンドZの予想収益率の期待値
△15%×0.4+10%×0.5+20%×0.1=1%
組入比率は、ファンドY:ファンドZ=6:4なので、

 5.5%×0.6+1%×0.4=3.70%

よって、正解は3.70(%)になります。

【別解】
シナリオごとの期待収益率を、シナリオごとの生起確率で加重平均する方法でも計算可能です。こちらで計算すると②標準偏差の計算が楽になります。
シナリオ1の予想収益率
10%×0.6+△15%×0.4=6+△6=0%
シナリオ2の予想収益率
5%×0.6+10%×0.4=3+4=7%
シナリオ3の予想収益率
△10%×0.6+20%×0.4=△6+8=2%
生起確率は、シナリオ1:シナリオ2:シナリオ3=40:50:10なので、

 0%×0.4+7%×0.5+2%×0.1=0+3.5+0.2=3.70%

〔②について〕
生起確率を踏まえたポートフォリオの標準偏差は、以下の手順で求めます。

 標準偏差=∑生起確率×(各シナリオの収益率-ポートフォリオの期待収益率)2
  1. ポートフォリオの期待収益率を求める(①で求めた3.7がこの値です)
  2. シナリオごとに期待収益率との差(偏差)を求める
  3. 2.で求めた偏差を二乗した値をシナリオごとの生起確率で加重平均する
  4. 3.で求めた数値の平方根を求める
①の【別解】の計算より、シナリオごとの期待収益率はシナリオ1が0%、シナリオ2が7%、シナリオ3が2%です。それぞれ平均値との差(偏差)は、シナリオ1「0%-3.7%=△3.7%」、シナリオ2「7%-3.7%=3.3%」、シナリオ3「2%-3.7%=△1.7%」となり、各値の二乗を生起確率で加重平均すると、

 △3.7%2×0.4+3.3%2×0.5+△1.7%2×0.1
=13.69×0.4+10.89×0.5+2.89×0.1
=5.476+5.445+0.289
=11.21

最後に上記の値(分散)の平方根を求めて標準偏差の値とします。

 11.21=3.348…%
(小数点以下第3位四捨五入)3.35%

よって、正解は3.35(%)になります。