FP1級過去問題 2018年1月学科試験 問45

問45

遺産分割協議書に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 被相続人が生前に銀行に預け入れていた預金は、遺産分割の対象とならず、相続人に法定相続分で当然に分割されるものであるため、相続人が相続預金を引き出す際、自己の法定相続分までであれば遺産分割協議書が求められることはない。
  2. 共同相続人間で法定相続分とは異なる割合で成立した遺産分割協議に基づき、不動産を取得した相続人が相続登記をする場合、登記原因証明情報として遺産分割協議書を登記申請書に添付する必要がある。
  3. 遺産分割にあたって、相続財産を現物で取得した相続人が、他の相続人に対して代償財産を交付する場合、代償財産の支払期日や支払方法などを記載した遺産分割協議書を公正証書により作成する必要がある。
  4. 遺産分割協議書に共同相続人全員が署名・捺印し、遺産分割協議が成立しても、その内容に不服がある相続人は、協議成立後1年以内に限り、家庭裁判所に分割の調停や審判を請求することができる。

正解 2

問題難易度
肢14.4%
肢268.9%
肢310.0%
肢416.7%

解説

  1. 不適切。被相続人が銀行に預け入れていた預金は、遺産分割の対象になります(最判平28.12.19)。預貯金払戻し制度の限度額を超えて払戻しをする場合には、自己の法定相続分までであったとしても遺産分割協議書が求められます。
    「預貯金の額×1/3×法定相続分」かつ同一金融機関当たり150万円まで
  2. [適切]。法定相続分とは異なる割合で取得することが遺産分割協議で成立した場合、移転登記の登記原因証明情報として、登記申請書に遺産分割協議書を添付する必要があります。一方、各自が法定相続分通りの割合で取得した場合は、遺産分割協議はなく、相続登記をするとその不動産は共同相続人の共有に属することとなります。
  3. 不適切。遺産分割にあたり、他の相続人に対して代償財産を交付する場合、代償財産の支払期日や支払方法などを記載した遺産分割協議書を作成する必要がありますが、必ずしも公正証書によって作成する必要はありません。
  4. 不適切。遺産分割協議を再度やり直すには共同相続人全員の合意が必要です(最判平2.9.27)。したがって、遺産分割協議が成立し、共同相続人全員が署名・捺印して合意したときは、その内容に不服があったとしても相続人の1人が家庭裁判所に分割の調停や審判を請求することはできません。ただし、相続人の中で故意に相続財産を隠していた場合や詐欺・強迫などにより、やむなく協議に応じた場合等はこの限りではありません。
したがって適切な記述は[2]です。