FP1級過去問題 2018年1月学科試験 問46(改題)

問46

民法における遺言と遺留分に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  1. 公正証書遺言の作成にあたって遺言執行者を指定する場合、遺言者の推定相続人および受遺者を遺言執行者とすることはできない。
  2. 公正証書遺言を作成していた遺言者がその内容に抵触する自筆証書遺言を作成した場合、その抵触する部分については、自筆証書遺言で公正証書遺言を撤回したものとみなされる。
  3. 被相続人が相続開始前10年以内に相続人に婚姻もしくは養子縁組のため、または生計の資本として贈与した財産は、贈与者および受贈者が遺留分権利者に損害を加えることを知っていたかどうかにかかわらず、遺留分の算定の基礎となる財産の価額に加算する。
  4. 遺留分権利者が相続の開始前において遺留分の放棄をするためには、家庭裁判所の許可を受けなければならない。

正解 1

問題難易度
肢153.3%
肢27.9%
肢322.2%
肢416.6%

解説

  1. [不適切]。遺言執行者の欠格事由は未成年と破産者です(民法1009条)。よって、遺言者の推定相続人および受遺者を遺言執行人とする遺言は何ら問題ありません。遺言者の推定相続人および受遺者が欠格事由となっているのは、公正証書遺言を作成する際の証人です。
    公正証書遺言を作成する場合、証人2人以上の立会いが必要であるが、遺言者の推定相続人および受遺者ならびにこれらの配偶者および直系血族は、この証人になることはできない。2022.5-44-3
    公正証書遺言を作成する場合、証人2人以上の立会いが必要であるが、遺言者の兄弟姉妹は、遺言者の推定相続人または受遺者でない者等であっても、この証人になることはできない。2020.9-45-3
    公正証書遺言を作成する場合、証人2人以上の立会いが必要であるが、遺言者の推定相続人および受遺者ならびにこれらの配偶者および直系血族は、この証人になることはできない。2019.1-44-1
    公正証書遺言の作成時、遺言者の兄弟姉妹は、遺言者の推定相続人または受遺者でない者であっても、証人となることができない。2016.1-44-1
    公正証書遺言を作成する場合、証人2人以上の立会いが必要であるが、遺言者の推定相続人は、この証人になることはできない。2014.9-44-3
  2. 適切。遺言書が2つ以上が存在しそれぞれの内容が異なっている場合、その異なっている部分については遺言の方式にかかわらず、後の遺言で前の遺言を撤回したとみなされます(民法1023条)。よって、作成日付の新しい遺言の内容が有効になります。
    公正証書遺言の遺言者が、公正証書遺言の正本を故意に破棄したときは、その破棄した部分について遺言を撤回したものとみなされる。2024.9-45-1
    公正証書遺言を作成していた遺言者が、公正証書遺言の内容に抵触する自筆証書遺言を作成した場合、その抵触する部分については、自筆証書遺言で公正証書遺言を撤回したものとみなされる。2023.1-44-3
    公正証書遺言は、原本が公証役場に保管されており、遺言者が公正証書遺言の正本を破棄したとしても、遺言を撤回したものとはみなされない。2022.5-44-4
    公正証書遺言の遺言者が、公正証書遺言の正本を故意に破棄したときは、その破棄した部分について遺言を撤回したものとみなされる。2019.1-44-3
    公正証書遺言を作成していた者がその内容に抵触する自筆証書遺言を作成した場合、その抵触する部分については、自筆証書遺言で公正証書遺言を撤回したものとみなされる。2016.1-44-2
    遺言者が、遺言をした後に、遺言の内容に抵触する財産の生前処分を行った場合、その抵触した部分については遺言を撤回したものとみなされる。2014.9-44-1
  3. 適切。相続開始前の10年間に相続人に対して行われた特別受益に該当する贈与額は、遺留分の算定基礎となる相続財産に加算されます(相続人以外の者への贈与は相続開始前1年間に限る)。ただし、遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときには10年以上前の贈与についても加算対象となります(民法1044条)。
    被相続人が相続開始前10年以内に相続人に生計の資本として贈与した財産は、贈与者および受贈者が遺留分権利者に損害を加えることを知っていたかどうかにかかわらず、遺留分の算定の基礎となる財産の価額に加算する。2016.1-45-1
    被相続人が相続開始前3年以内に相続人に贈与した財産は、原則として遺留分の算定の基礎となる財産の価額に加算する。2015.1-44-3
  4. 適切。遺留分は、相続の放棄と異なり、相続開始前であっても家庭裁判所の許可を受けることで放棄することができます(民法1049条1項)。相続開始後は各自が自由にできます。
    被相続人の相続開始後に遺留分の放棄をする場合、家庭裁判所に遺留分放棄の許可の審判を申し立てる必要がある。2025.1-44-4
    推定相続人の1人が相続開始前に遺留分の放棄をした場合、他の相続人の遺留分の額は増加する。2021.9-45-2
    相続の開始前において遺留分を放棄するためには、家庭裁判所の許可を受けなければならない。2016.1-45-2
    推定相続人が相続の放棄を相続開始前に行うためには、その旨を申し立て、家庭裁判所の許可を受ける必要がある。2015.9-46-1
    相続開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。2015.1-44-2
したがって不適切な記述は[1]です。