FP1級過去問題 2018年9月学科試験 問44

問44

相続の限定承認に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 限定承認は、共同相続人の全員が共同して家庭裁判所にその旨の申述をしなければならないため、共同相続人のうちの1人が相続の放棄をした場合、その相続について限定承認をすることはできない。
  2. 限定承認の申述が受理された場合、限定承認者または相続財産管理人は、受理された日から20日以内に、すべての相続債権者および受遺者に対し、限定承認をしたことおよび一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。
  3. 被相続人の負債額が不明であったために限定承認をした後、被相続人に2,000万円の資産と1,500万円の負債があることが判明した場合には、1,500万円の資産と1,500万円の負債が相続人に承継されることになる。
  4. 限定承認をした場合に、相続財産に不動産があるときには、被相続人がその財産を時価で譲渡したものとみなして譲渡益が所得税の課税対象となり、その後に相続人が当該財産を譲渡するときには、その時価により取得したものとして譲渡所得の金額が計算される。

正解 4

問題難易度
肢14.5%
肢238.8%
肢38.3%
肢448.4%

解説

  1. 不適切。相続の放棄をした者は、当初から相続人とならなかったものとして扱われるので、相続開始から3カ月以内に、残りの共同相続人全員が共同して申述することによって限定承認をすることができます(民法939条)。
  2. 不適切。限定承認の手続は、家庭裁判所に申述を行い、受理された後に限定承認者または相続財産管理人によって財産の換価処分・弁済等がされます。限定承認者は、限定承認をした後(受理審判後)5日以内に、相続財産管理人の場合は10日以内に、限定承認をしたこと及び2カ月以上の期間を定めてその期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければなりません(民法927条1項)。
  3. 不適切。限定承認は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務を承継する方法です(民法922条)。限定承認を選択すると、申述時の相続財産目録に基づいて相続財産から債務の弁済が行われ、弁済後に残った残余財産のみが相続人に承継されます。
    本肢のケースだと、1,500万円の負債を弁済した後に残る500万円が共同相続人に承継されることとなります。
  4. [適切]。相続等において相続人が限定承認を選択した場合、被相続人には「みなし譲渡」として、相続時に時価による譲渡所得の課税が行われます。この時、課税の繰り延べはなく、取得費の引き継ぎの必要もないので、相続人の取得費は相続時の時価となります。このため、相続人がその不動産を譲渡する際は、相続時の時価で取得したものとして譲渡所得を計算します。
したがって適切な記述は[4]です。