FP1級 2018年9月 応用編 問60

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 Aさんは、昨年、父親が死亡して甲土地および乙土地を相続により取得した。甲土地は、父親が1人で居住していた家屋の敷地であるが、Aさんは既に自宅を所有しているため、相続した家屋は空き家となっており、今後も移り住む予定はない。乙土地は青空駐車場である。
 Aさんは、相続した家屋について、老朽化が進んでおり借手も見込めないため、家屋を取り壊し、その敷地である甲土地と隣地の乙土地を一体とした土地上に賃貸アパートを建築するか、あるいは甲土地を売却することを検討している。
 甲土地および乙土地の概要は、以下のとおりである。

〈甲土地および乙土地の概要〉
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  • 甲土地は180㎡の長方形の土地であり、第二種中高層住居専用地域に属する部分は120㎡、第一種住居地域に属する部分は60㎡である。
  • 乙土地は120㎡の長方形の土地であり、第二種中高層住居専用地域に属する部分は80㎡、第一種住居地域に属する部分は40㎡である。
  • 幅員3mの公道は、建築基準法第42条第2項により特定行政庁の指定を受けた道路である。3m公道の道路中心線は、当該道路の中心部分にある。また、3m公道の甲土地および乙土地の反対側は宅地であり、がけ地や川等ではない。
  • 乙土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。
  • 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
  • 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問60

建築基準法の規定および「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」に関する以下の文章の空欄①~⑧に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。

  1. 〈建築基準法の規定〉
     甲土地と乙土地を一体とした土地上に建築物を建築する場合、その全部について、()地域の建築物の用途に関する規定が適用される。
     また、甲土地と乙土地を一体とした土地上に建築物を建築する場合、原則として、その全部について防火地域内の建築物に関する規定が適用される。建築基準法上、防火地域内においては、原則として、階数が()以上、または延べ面積が()㎡を超える建築物は耐火建築物等とし、その他の建築物は耐火建築物等または準耐火建築物等としなければならないとされている。
  2. 〈被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例〉
     相続または遺贈により被相続人が居住の用に供していた家屋およびその敷地を取得した相続人が、当該家屋やその敷地を譲渡した場合、所定の要件を満たせば、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(以下、「本特例」という)の適用を受けることにより、譲渡所得の金額の計算上、特別控除を受けることができる。
     本特例の対象となる被相続人居住用家屋とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されており、かつ、昭和()年5月31日以前に建築された家屋であって、当該相続の開始の直前において当該被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものとされ、()登記がされている建物は対象とならない。
     本特例は、被相続人居住用家屋のみを譲渡する場合や当該家屋とその敷地をともに譲渡する場合のほか、当該家屋を取り壊し、その敷地のみを譲渡する場合であっても対象となる。ただし、いずれの場合であっても、その譲渡の対価の額が()円以下でなければならない。また、被相続人居住用家屋を譲渡する場合は、当該家屋が譲渡の時において現行の()基準に適合するものでなければならない。
     なお、本特例の適用を受けるにあたっては、当該家屋およびその敷地が所在する()において「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を受け、確定申告書に添付する必要がある。
地域
以上
登記
基準
 

正解 

① 第二種中高層住居専用(地域)
② 3(以上)
③ 100(㎡)
④ 56(年)
⑤ 区分所有(登記)
⑥ 1億(円)
⑦ 耐震(基準)
⑧ 市区町村

分野

科目:E.不動産
細目:3.不動産に関する法令上の規制

解説

〔①について〕
建築物の敷地が2以上の用途地域にわたっている場合、その敷地の過半が属する区域の用途制限が適用されます。甲土地と乙土地を一体とした土地は、半分を超える部分が第二種中高層専用住居地域に属しているので、第二種中高層専用住居地域の用途制限が適用されます。
よって、正解は第二種中高層住居専用(地域)となります。

〔②、③について〕
防火地域において耐火建築物等としなければならないのは、階数(地階を含む)が3以上または延べ面積100㎡を超える建築物です。
よって、②は3(以上)、③は100(㎡)が正解となります。
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〔④、⑤について〕
空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例は、相続や遺贈によって取得した被相続人の居住用財産であり、その後、空き家になっていたものを一定期間内に譲渡した場合に、その譲渡所得の金額から3,000万円を控除できる特例です。本特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、相続開始の直前において被相続人の居住用となっていた家屋で、次の3つの要件全てに当てはまるものをいいます。
  1. 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築されたこと(旧耐震基準)
  2. 区分所有登記がされている建物でないこと
  3. 相続開始の直前において被相続人以外に居住者がいなかったこと
よって、④は56(年)、⑤は区分所有(登記)が正解となります。

〔⑥、⑦について〕
譲渡に関しては次の要件があります。
  1. 新耐震基準に適合させた家屋(および敷地等)を売るか、家屋の全部の取壊し等をした後に敷地等を売ること
  2. 相続開始から3年目の年の12月31日までに売ること
  3. 売却代金が1億円以下であること
  4. 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
よって、⑥は1億(円)、⑦は耐震(基準)が正解となります。

〔⑧について〕
本特例を受けるためには、相続開始直前において被相続人が1人で住んでいたこと、相続開始から譲渡までに事業用・貸付用・居住用および物品の保管等に利用されていなかったことが要件となっています。本特例の適用を受けようとするときは、これらの事実について市区町村長が証明する「被相続人居住用家屋等確認書」を確定申告書に添付する必要があります。
よって、正解は市区町村となります。