FP1級 2019年5月 応用編 問51

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(59歳)は、妻Bさん(57歳)との2人暮らしである。X社は、満60歳の定年制を採用しているが、再雇用制度が設けられており、その制度を利用して同社に再雇用された場合、最長で65歳まで勤務することができる。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに対し、X社の再雇用制度を利用して同社に勤務した場合の雇用保険からの給付や公的年金制度からの老齢給付について、アドバイスを求めることにした。Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。

〈Aさんの家族に関する資料〉
  1. Aさん(本人)
    • 1959年7月20日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1979年7月から1982年3月までの大学生であった期間(33月)は国民年金に任意加入していない。
      1982年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である(過去に厚生年金基金の加入期間はない)。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
    • 1982年4月から現在に至るまで雇用保険の一般被保険者である。
  2. Bさん(妻)
    • 1962年2月5日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1980年4月から1985年3月まで厚生年金保険の被保険者である。
      1985年4月から2017年3月まで国民年金の第3号被保険者である。
      2017年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
    • 2017年4月から現在に至るまで雇用保険の一般被保険者である。
  3. 長女(26歳)
    • 結婚して独立している。
  • 妻Bさんは、Aさんと同居し、現在および将来においても、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
  • Aさんと妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問51

Mさんは、Aさんに対して、Aさんが定年退職後もX社の再雇用制度を利用して雇用保険の一般被保険者として同社に勤務し続けた場合の雇用保険からの失業等給付について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~⑧に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。

  1. 「Aさんが、X社の再雇用制度を利用して60歳以後も引き続き同社に勤務し、かつ、60歳以後の各月(支給対象月)に支払われた賃金額(みなし賃金額を含む)が60歳到達時の賃金月額の()%相当額を下回る場合、Aさんは、所定の手続により、原則として、高年齢雇用継続基本給付金を受給することができます。
     仮に、Aさんに対して支給対象月に支払われる賃金額を28万2,000円、60歳到達時の賃金月額(みなし賃金日額に30を乗じて得た額)を47万円とした場合、Aさんに支給される高年齢雇用継続基本給付金の額は、1支給対象月当たり()円となります。
     なお、高年齢雇用継続基本給付金には、支給限度額や最低限度額が設けられており、これらの額は、原則として毎年()月1日に改定されます」
  2. 「Aさんが、X社の再雇用制度を利用して60歳以後も引き続き同社に勤務し、かつ、65歳到達前に退職して求職を希望する場合、Aさんは、所定の手続により、失業している日について基本手当を受給することができます。
     基本手当の日額は、原則として、被保険者期間として計算された最後の()カ月間に支払われた賃金(賞与等を除く)の総額を基に算出した賃金日額に、当該賃金日額に応じた給付率を乗じて得た額となります。なお、賃金日額には、下限額および受給資格者の年齢区分に応じて上限額が設けられています。また、賃金日額に応じた給付率は、受給資格に係る離職日において60歳以上65歳未満である受給資格者の場合、100分の45から100分の()の範囲です。
     Aさんが基本手当の支給を受けることができる最大の日数(所定給付日数)は、Aさんが特定受給資格者等に該当しない場合、()日となります。
     他方、Aさんが65歳の誕生日の属する月の末日でX社を退職して失業している場合、Aさんは、所定の手続により、()を受給することができます。Aさんに対して支給される()の額は、最大で基本手当日額に()日を乗じて得た額となります」
カ月
 
 

正解 

① 75(%)
② 42,300(円)
③ 8(月)
④ 6(カ月)
⑤ 80
⑥ 150(日)
⑦ 高年齢求職者給付金
⑧ 50(日)

分野

科目:A.ライフプランニングと資金計画
細目:4.社会保険

解説

〔①について〕
高年齢雇用継続基本給付金は、以下の要件を満たす場合に支給されます。
  • 60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者であること
  • 60歳以降の賃金月額が、原則60歳到達時の賃金月額の75%を下回ること
  • 雇用保険のみなし算定基礎期間(被保険者であった期間)が5年以上あること
よって、正解は75(%)です。

〔②について〕
高年齢雇用継続基本給付金の額は、支給月の賃金月額に最高15%の支給率を乗じた額です。支給率は低下率により変わりますが、低下率が61%以下のとき最高の15%となります。Aさんの支給対象月の賃金は282,000円、60歳到達時の賃金月額が470,000円なので、低下率は「282,000円÷470,000円×100=60%」です。したがって、高年齢雇用継続基本給付金の額は、支給対象月の賃金に15%を乗じた「282,000円×15%=42,300円」となります。
よって、正解は42,300(円)です。
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低下率75%と61%の間は支給率の計算が困難なので試験では出題されないでしょう。つまり、常に「×15%」で計算すると覚えておけばOKです。〔③について〕
高年齢雇用継続基本給付金は、雇用保険からの給付です。雇用保険の各種限度額や基準額は毎年8月1日に改定されます。これに対して、公的年金制度の限度額や基準額の改定は毎年4月1日なので、確実に押さえ分けましょう。
よって、正解は8(月)です。

〔④、⑤について〕
雇用保険の基本手当の日額は、被保険者期間の最後6か月間の賃金(臨時賃金、賞与を除く)を180で除した賃金日額(上限・下限あり)に、賃金日額に応じた50%(60歳以上65歳未満の人は45%)から80%の給付率を乗じて得た金額となります。

 基本手当の日額=6か月間の賃金(賞与等を除く)180×50%(45%)~80%

よって、④は6(カ月)、⑤は80(%)が正解です。

〔⑥について〕
自己都合退職等の一般受給資格者の所定給付日数は、算定基礎期間(被保険者であった期間)によってのみ決まります。Aさんのように算定基礎期間が20年以上である人の所定給付日数は150日です。
よって、正解は150(日)です。
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〔⑦、⑧について〕
高年齢求職者給付金は、65歳以上の高年齢被保険者が離職して失業の状態になり一定の条件を満たしている場合に一般被保険者の基本手当に代わり、支払われる給付金です。支給額は、算定基礎期間(被保険者であった期間)が1年のときは基本手当日額の50日分、1年未満のときは基本手当日額の30日分が一時金として支給されます。
Aさんが再雇用制度を利用して60歳から65歳まで勤務した場合、被保険者であった期間は1年以上ですから、高年齢求職者給付金の額は50日分となります。
よって、⑦は高年齢求職者給付金、⑧は50(日)が正解です。
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