FP1級 2019年5月 応用編 問57(改題)
Aさんは、2023年5月に28年2カ月勤めた商社を退職し、個人で輸入雑貨小売店を開業した。Aさんは、開業資金に充てるため、加入していた生命保険契約を2023年4月に解約し、解約返戻金を受け取っている。また、同月中に、25年以上前に購入したゴルフ会員権を売却している。
会社員時代に知り合った取引先から受注を得るなど、開業当初から事業は順調に推移した。しかし、2023年10月に不注意により店舗併用住宅内で小規模な火災が発生し、商品在庫200万円分と家財道具150万円分(いずれも損失額)が焼失している。
Aさんの家族および2023年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。なお、 Aさんは、2023年は消費税について免税事業者であり、税込経理を行っている。また、棚卸資産の評価方法について、納税地の所轄税務署長に税務上の届出はしていない。
〈Aさんとその家族に関する資料〉
会社員時代に知り合った取引先から受注を得るなど、開業当初から事業は順調に推移した。しかし、2023年10月に不注意により店舗併用住宅内で小規模な火災が発生し、商品在庫200万円分と家財道具150万円分(いずれも損失額)が焼失している。
Aさんの家族および2023年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。なお、 Aさんは、2023年は消費税について免税事業者であり、税込経理を行っている。また、棚卸資産の評価方法について、納税地の所轄税務署長に税務上の届出はしていない。
〈Aさんとその家族に関する資料〉
- Aさん(50歳)
- 白色申告者
- 妻Bさん(50歳)
- 事業専従者(Aさんの小売業に専従している)
- 長男Cさん(25歳)
- 会社員。2023年中に給与収入500万円を得ている。
- 長女Dさん(20歳)
- 大学生。2023年中に収入はない。
- 母Eさん(76歳)
- 2023年中に老齢基礎年金70万円を受け取っている。
- 事業所得に関する事項
- 上記の必要経費は税務上適正に計上されている。なお、売上原価および事業専従者控除は含まれていない。
- 給与所得に関する事項
給与収入の金額:680万円 - 譲渡所得に関する事項
Aさんが売却したゴルフ会員権に関する事項は、以下のとおりである。- 取得年月
- 1994年4月
- 売却金額
- 350万円
- 取得費
- 550万円
- 一時所得に関する事項
Aさんが解約した生命保険に関する事項は、以下のとおりである。- 保険種類
- 一時払変額個人年金保険(10年確定年金)
- 契約年月
- 2015年8月
- 契約者(=保険料負担者)
- Aさん
- 被保険者
- Aさん
- 解約返戻金額
- 620万円
- 正味払込済保険料
- 400万円
- 退職所得に関する事項
- 退職手当等の収入金額
- 2,200万円
- 勤続期間
- 28年2カ月
- Aさんは支払者に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している。
- 妻Bさん、長男Cさん、長女Dさんおよび母Eさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
- Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
- Aさんとその家族の年齢は、いずれも2023年12月31日現在のものである。
- 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
問57
所得税の所得控除に関する以下の文章ⅠおよびⅡの下線部①~③のうち、最も不適切なものをそれぞれ1つ選んでその番号を記入し、その適切な内容について簡潔に説明しなさい。- 〈雑損控除〉
雑損控除は、①納税者が有する一定の資産または納税者と生計を一にする配偶者その他の親族で総所得金額等が48万円以下である者が有する一定の資産について、災害または盗難もしくは横領による損失が生じた場合に、納税者のその年分の総所得金額等から当該損失の金額に基づいて計算した金額を控除することができる所得控除である。
Aさんが、災害による商品在庫200万円分と家財道具150万円分の損失額について雑損控除の適用を受ける場合、災害関連支出の金額および受け取った保険金等がないときは、②その控除額は、損失額の合計350万円から総所得金額等の10%相当額を差し引いた金額となる。
なお、所得控除はまず雑損控除から行うこととされ、雑損控除の金額が総所得金額等から控除しきれない場合は、③その控除しきれない金額を、翌年以後3年間にわたり、各年分の総所得金額等から繰越控除することができる。 - 〈扶養控除〉
扶養控除は、納税者が控除対象扶養親族を有する場合に、納税者のその年分の総所得金額等から控除対象扶養親族1人につき所定の金額を控除することができる所得控除である。扶養控除の対象となる控除対象扶養親族とは、原則として、①納税者と生計を一にし、かつ、合計所得金額が48万円以下である納税者の親族(配偶者を除く)のうち、年齢16歳以上の者である。
控除対象扶養親族は、その年齢等により区分され、Aさんの長女Dさんは、特定扶養親族に該当する。特定扶養親族とは、②控除対象扶養親族のうち、年齢19歳以上23歳未満の者をいい、その者に係る扶養控除の控除額は63万円である。
また、Aさんの母Eさんは、同居する老人扶養親族(同居老親)に該当する。同居する老人扶養親族とは、③控除対象扶養親族のうち、年齢70歳以上の者で、納税者またはその配偶者の直系尊属で、かつ、いずれかと同居を常況としている者をいい、その者に係る扶養控除の控除額は48万円である。
なお、控除対象扶養親族等に該当するかどうかの判定は、原則として、その年12月31日の現況によるものとされている。
Ⅰ | |
Ⅱ |
正解
Ⅰ | ② 損失額150万円から総所得金額等の10%相当額を差し引いた金額となる。 |
Ⅱ | ③ 同居する老人扶養親族に係る扶養控除の控除額は58万円である。 |
分野
科目:D.タックスプランニング細目:5.所得控除
解説
〔Ⅰについて〕
〔Ⅱについて〕
- ○適切。雑損控除は、納税者または生計を同一にする親族で総所得金額等が48万円以下である者の有する資産が、災害・盗難・横領等によって損害を受けた場合に、一定の金額の所得控除を受けることができる制度です。
- ×不適切。雑損控除の適用を受けるためには、対象となる資産が、棚卸資産もしくは事業用固定資産等または生活に通常必要でない資産のいずれにも該当しない資産でなければなりません。商品在庫は棚卸資産に該当するため雑損控除の対象にはならず、控除額は、家財道具150万円から総所得金額等の10%相当額を差し引いた金額になります。
- ○適切。雑損控除の額がある場合、所得控除の計算上、最初に雑損控除を引きます。その後、他の所得控除を引いていきますが、雑損控除の金額が総所得金額等から控除しきれない場合は、翌年以降3年間にわたり繰り越して総所得金額等から控除することができます。
〔Ⅱについて〕
- ○適切。扶養控除の対象となる控除対象扶養親族は以下のとおりです。
- 納税者と生活を一にしていること
- 合計所得金額が48万円以下であること
- 配偶者以外の親族であること
- その年の12月31日において16歳以上であること
- ○適切。控除対象扶養親族のうち、19歳以上23歳未満の者を特定扶養親族といい、その者に係る扶養控除の控除額は63万円になります。
- ×不適切。控除対象扶養親族のうち、老人扶養親族の対象となるためには以下の要件を満たす必要があります。
- その年の12月31日において70歳以上であること
- 納税者またはその配偶者の直系尊属で、どちらかと生計を一にしていること
- 合計所得金額が48万円以下であること
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