FP1級 2019年5月 応用編 問57(改題)

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問57

所得税の所得控除に関する以下の文章ⅠおよびⅡの下線部①~③のうち、最も不適切なものをそれぞれ1つ選んでその番号を記入し、その適切な内容について簡潔に説明しなさい。

  1. 〈雑損控除〉
     雑損控除は、①納税者が有する一定の資産または納税者と生計を一にする配偶者その他の親族で総所得金額等が48万円以下である者が有する一定の資産について、災害または盗難もしくは横領による損失が生じた場合に、納税者のその年分の総所得金額等から当該損失の金額に基づいて計算した金額を控除することができる所得控除である。
     Aさんが、災害による商品在庫200万円分と家財道具150万円分の損失額について雑損控除の適用を受ける場合、災害関連支出の金額および受け取った保険金等がないときは、②その控除額は、損失額の合計350万円から総所得金額等の10%相当額を差し引いた金額となる
     なお、所得控除はまず雑損控除から行うこととされ、雑損控除の金額が総所得金額等から控除しきれない場合は、③その控除しきれない金額を、翌年以後3年間にわたり、各年分の総所得金額等から繰越控除することができる
  2. 〈扶養控除〉
     扶養控除は、納税者が控除対象扶養親族を有する場合に、納税者のその年分の総所得金額等から控除対象扶養親族1人につき所定の金額を控除することができる所得控除である。扶養控除の対象となる控除対象扶養親族とは、原則として、①納税者と生計を一にし、かつ、合計所得金額が48万円以下である納税者の親族(配偶者を除く)のうち、年齢16歳以上の者である
     控除対象扶養親族は、その年齢等により区分され、Aさんの長女Dさんは、特定扶養親族に該当する。特定扶養親族とは、②控除対象扶養親族のうち、年齢19歳以上23歳未満の者をいい、その者に係る扶養控除の控除額は63万円である
     また、Aさんの母Eさんは、同居する老人扶養親族(同居老親)に該当する。同居する老人扶養親族とは、③控除対象扶養親族のうち、年齢70歳以上の者で、納税者またはその配偶者の直系尊属で、かつ、いずれかと同居を常況としている者をいい、その者に係る扶養控除の控除額は48万円である
     なお、控除対象扶養親族等に該当するかどうかの判定は、原則として、その年12月31日の現況によるものとされている。

正解 


損失額150万円から総所得金額等の10%相当額を差し引いた金額となる。

同居する老人扶養親族に係る扶養控除の控除額は58万円である。

分野

科目:D.タックスプランニング
細目:5.所得控除

解説

〔Ⅰについて〕
  1. 適切。雑損控除は、納税者および生計を同一にする親族で、総所得金額等が48万円以下である者の有する資産が、災害・盗難・横領等によって損害を受けた場合に、一定の金額の所得控除をうけることができます。
  2. 不適切。雑損控除の適用を受けるためには、対象となる資産が棚卸資産もしくは事業用固定資産等または生活に通常必要でない資産のいずれにも該当しない資産でなければなりません。商品在庫は棚卸資産に該当するため雑損控除の対象にはならず、控除額は、家財道具150万円から総所得金額等の10%相当額を差し引いた金額になります。
  3. 適切。所得控除は、最初に雑損控除を差し引きその後他の所得控除を差し引きますが、雑損控除の金額が総所得金額等から控除しきれない場合は、翌年以降3年間にわたり総所得金額等から繰越控除することができます。
したがって不適切な記述は②、「損失額の合計350万円」の部分が誤りで、正しくは「家財道具の損失額150万円」となります。

〔Ⅱについて〕
  1. 適切。扶養控除の対象になる控除対象扶養親族は以下のとおりです。
    • 納税者と生活を一にしていること
    • 合計所得金額が48万円以下であること
    • 配偶者以外の6親等内の血族および3親等以内の姻族であること
    • その年の12月31日において16歳以上であること
  2. 適切。控除対象扶養親族のうち、19歳以上23歳以下の者を特定扶養親族といい、その者に係る扶養控除の控除額は63万円になります。
  3. 不適切。控除対象扶養親族のうち、老人扶養親族の対象となるためには以下の要件を満たす必要があります。
    • その年の12月31日において70歳以上であること
    • 納税者またはその配偶者の直系尊属で、どちらかと生計を一にしていること
    • 年間の合計所得金額が48万円以下であること
    老人扶養親族のうち、納税者またはその配偶者のいずれかと同居している「同居老親」については、老人扶養親族に係る扶養控除の控除額は58万円になります。なお、控除額48万円は老人扶養親族のうち「同居老親以外」の者の控除額です。
したがって不適切な記述は③、「控除額は48万円」の部分が誤りで、正しくは「控除額は58万円」となります。