FP1級過去問題 2019年9月学科試験 問36(改題)

問36

宅地建物取引業法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、本問においては、買主は宅地建物取引業者ではないものとする。
  1. 買主が売主である宅地建物取引業者の契約不適合を担保すべき責任を追及するためには、当該不適合が売主の責めに帰すべき事由により生じたものであることを立証し、かつ、当該不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければならない。
  2. 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、宅地建物取引業者が目的物の契約不適合を担保すべき責任に関し、買主がその不適合を売主に通知すべき期間を目的物の引渡しの日から2年間とする旨の特約は有効である。
  3. 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して、宅地建物取引業者は、売買代金の額の2割を超える手付金を受領することはできない。
  4. 媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、依頼者に対し、媒介契約が専任媒介契約である場合は2週間に1回以上、専属専任媒介契約である場合は1週間に1回以上、当該媒介契約に係る業務の処理状況を報告しなければならない。

正解 1

問題難易度
肢175.8%
肢214.7%
肢34.0%
肢45.5%

解説

  1. [不適切]。契約不適合を担保する責任は原則として無過失責任なので、売主の帰責事由がなくても責任を追及できます。契約に特段の定めがなければ、不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知すれば、売主の担保責任を追及できます(民法566条)。
    買主が売主に対して契約不適合を担保すべき責任に基づく権利を行使するためには、当該不適合が売主の責めに帰すべき事由により生じたものであることを立証し、かつ、当該不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければならない。2016.9-35-3
  2. 適切。宅地建物取引業者が自ら売主となる取引では、契約不適合を担保すべき責任に関し、買主がその不適合を売主に通知すべき期間を引渡しから2年以上とする場合を除き、担保責任について民法の規定よりも買主に不利な特約をしてはいけません。本肢は「引渡しの日から2年間」としているので有効です(宅建業法40条)。
    民法の規定上は買主が不適合を知ったときから1年以内に通知ですが、これだと請求を受ける可能性のある期間が相当に長くなり宅地建物取引業者にとって酷です。一方、特約による担保責任の排除を認めてしまうと、宅地建物取引業者と個人の力関係の差から買主保護の点で不適切です。宅建業法ではこの点を踏まえて、宅地建物取引業者が自ら売主となる場合には引渡しの日から2年以上とする場合に限り担保責任を負う期間を制限することを許しています。
    宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、目的物が種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合、その不適合について買主が売主に通知すべき期間を引渡しの日から2年間とする特約を定めたときは、その特約は無効となる。2023.5-35-2
    宅地建物取引業者が自ら売主となり、宅地建物取引業者ではない買主と締結する売買契約においては、宅地建物取引業法により、宅地建物取引業者が目的物の契約不適合を担保すべき責任に関し、買主がその不適合を売主に通知すべき期間が売買契約の締結日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法の規定よりも買主に不利となる特約を締結することはできない。2017.9-36-b
    宅地建物取引業者が自ら売主となる場合、宅地建物取引業者が目的物の契約不適合を担保すべき責任に関し、買主がその不適合を売主に通知すべき期間が売買契約の締結日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法の規定よりも買主に不利となる特約を締結することはできない。2016.9-35-2
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、宅地建物取引業者が目的物の契約不適合を担保すべき責任に関し、買主がその不適合を売主に通知すべき期間を目的物の引渡しの日から3年間とする旨の特約は有効である。2015.9-35-3
    宅地建物取引業者が自ら売主となる場合、契約不適合を担保すべき責任については、契約解除等の期間を引渡日より1年以上とする特約以外に、民法の規定よりも買主に不利となる特約を締結することはできない。2014.9-36-3
  3. 適切。宅地建物取引業者が自ら売主となる取引では、買主から売買代金の2割を超える手付を受領することは禁止されています。2割を超えた約定があった場合、2割を超えた分が無効となります(宅建業法39条)。
    宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、手付金を受領した場合、その手付がいかなる性質のものであっても、宅地建物取引業者が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付金を放棄して契約の解除をすることができる。2023.5-35-4
    宅地建物取引業者が自ら売主となる不動産の売買契約において、買主が宅地建物取引業者でない法人の場合、売主の宅地建物取引業者は、売買代金の額の2割を超える手付金を受領することができる。2022.9-35-a
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して、買主の承諾を得られれば、宅地建物取引業者は、売買代金の額の2割を超える手付金を受領することができる。2021.1-35-1
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、「宅地または建物の引渡しがあるまでは、いつでも、買主は手付金を放棄して、売主は手付金を返還して契約を解除することができる」旨の特約は有効である。2021.1-35-2
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して手付金を受領し、当該契約に交付された手付金を違約手付金とする旨の特約が定められている場合、買主は手付金を放棄することにより契約を解除することはできない。2021.1-35-3
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して解約手付金を受領したときは、買主が契約の履行に着手するまでは、宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して契約を解除することができる。2021.1-35-4
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して手付金を受領したときは、その手付金がいかなる性質のものであっても、買主が契約の履行に着手するまでは、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。2019.1-35-3
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して、宅地建物取引業者は、売買代金の額の2割を超える手付金を受領することはできない。2016.1-35-1
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、買主が売主に対して解約手付金を交付した後、当該売買契約の履行に着手したとしても、売主が当該売買契約の履行に着手していなければ、買主は手付金を放棄することにより契約を解除することができる。2016.1-35-2
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、交付された手付金を違約手付金とする旨の特約が定められていても、売主が当該売買契約の履行に着手していなければ、買主は手付金を放棄することにより契約を解除することができる。2016.1-35-3
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約において、「宅地または建物の引渡しがあるまでは、いつでも、買主は手付金を放棄して、売主は手付金を返還して契約を解除することができる」旨の特約は有効である。2016.1-35-4
    宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約の締結に際して、宅地建物取引業者は、売買代金の額の1割を超える手付金を受領することはできない。2015.9-35-2
    民法では、買主から売主に対して解約手付が交付された場合、内金を支払った後では、売主が当該売買契約の履行に着手していないときであっても、買主は、手付金を放棄することにより契約を解除することができない。2014.1-37-b
  4. 適切。依頼者への報告義務は、専任媒介契約では2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上と定められています(宅建業法34条の2第9項)。
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    専属専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、依頼者に対し、当該専属専任媒介契約に係る業務の処理状況を、2週間に1回以上報告しなければならない。2022.1-34-1
    専属専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、依頼者に対し、当該媒介契約に係る業務の処理状況を、2週間に1回以上報告しなければならない。2020.1-34-3
    専属専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、依頼者に対し、当該専属専任媒介契約に係る業務の処理状況を、1週間に1回以上報告しなければならない。2018.1-35-4
    専属専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、依頼者に対し、当該専属専任媒介契約に係る業務の処理状況を、1週間に1回以上報告しなければならない。2016.9-34-3
    専属専任媒介契約を締結した依頼者は、他の宅地建物取引業者に重ねて媒介を依頼することはできないが、依頼者が自ら見つけた相手方と売買契約を締結することはできる。2016.9-34-4
    専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、依頼者に対し、当該専任媒介契約に係る業務の処理状況を、原則として、2週間に1回以上報告しなければならない。2015.1-35-c
    専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、依頼者に対し、当該専任媒介契約に係る業務の処理状況を、原則として、2週間に1回以上報告しなければならない。2014.1-36-2
したがって不適切な記述は[1]です。