FP1級 2019年9月 応用編 問55

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 Aさん(40歳)は、長男Bさん(5歳)の将来に向けた資産形成のため、NISAを利用して上場株式への投資を行いたいと考えている。Aさんは、同業種のX社とY社に興味を持ち、下記の財務データを入手した。また、外貨預金についても関心を持ち、下記の米ドル建定期預金による運用も考えている。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

〈X社とY社の財務データ〉(単位:百万円)
b1.png./image-size:516×485
〈米ドル建定期預金の概要〉
  • 預入期間:6カ月満期
  • 利率(年率):1.2%(満期時一括償還)
  • 適用為替レート(円/米ドル)
    b2.png./image-size:384×70
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問55

《設例》の〈X社とY社の財務データ〉に基づいて、①X社のサスティナブル成長率と②Y社のインタレスト・カバレッジ・レシオをそれぞれ求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。

正解 

① 5.25(%)
(120,000百万円1,800,000百万円-200,000百万円×100)×(1-36,000百万円120,000百万円)=5.25%
② 9.85(倍)
250,000百万円+800百万円+5,200百万円26,000百万円=9.85%(小数点以下第3位四捨五入)

分野

科目:C.金融資産運用
細目:10.金融商品と税金

解説

〔①について〕
サスティナブル成長率は、外部資金調達を行わずに内部留保の再投資のみで実現可能な成長率のことで、以下の算式で求めます。

 サスティナブル成長率(%)=内部留保率×自己資本利益率×100

【内部留保率】
内部留保率は、当期純利益に対する内部留保額の割合で「内部留保額÷当期純利益×100」で求めます。内部留保額とは、当期純利益のうち配当に充てられなかった額の割合ですから「当期純利益-配当金総額」で計算します。※模範解答のように「1-配当性向」で求めることもできます。

X社の当期純利益は120,000、内部留保額は「120,000-36,000=84,000」なので、内部留保率は、

 84,000÷120,000×100=70%

【自己資本利益率】
自己資本利益率は、自己資本に対してどの程度の利益を上げたかを示す指標で「当期純利益÷自己資本×100」で求めます。自己資本の額は、純資産の額から「新株予約権」と「非支配株主持分」の2つを除いた「1,800,000-200,000=1,600,000」なので、X社の自己資本利益率は、

 120,000÷1,600,000×100=7.5%

以上より、X社のサスティナブル成長率は、

 70%×7.5%×100=5.25%
 ※内部留保率と自己資本利益率は、小数に直して計算します

よって、正解は5.25%です。

〔②について〕
インタレスト・カバレッジ・レシオは、借入金などの利息の支払い能力を評価するための指標で、事業利益が金融費用(支払利息・割引料)の何倍であるかを以下の算式で求めます。

 インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)=事業利益÷金融費用

事業利益は、本業の収益である営業利益に金融収益を足した額です。金融収益とは、営業外利益のうち受取利息・受取配当金・その他投資利益等の合計です。

Y社の事業利益は「250,000+800+5,200=256,000」、金融費用(支払利息のみ)は26,000なので、インタレスト・カバレッジ・レシオは、

 256,000÷26,000=9.846…倍
(小数点以下第3位四捨五入)9.85倍

よって、正解は9.85(倍)となります。