FP1級 2019年9月 応用編 問59(改題)
問59
法人税に関する以下の文章ⅠおよびⅡの下線部①~③のうち、最も不適切なものをそれぞれ1つ選び、その適切な内容について簡潔に説明しなさい。- 〈保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入〉
法人が、固定資産の滅失等により支払を受けた保険金等をもって代替資産を取得した場合、圧縮限度額の範囲内で圧縮記帳が認められる。圧縮記帳の対象となる保険金は、固定資産の滅失等のあった日から3年以内に支払の確定したものとされる。また、代替資産は、滅失等をした固定資産に代替する同一種類の固定資産とされ、滅失等をした固定資産が建物である場合、①一定期間内に取得した建物であれば代替資産となり、その構造や用途は問われない。
当期において火災保険の保険金の支払を受けたX社においては、建物の滅失により支出した経費の額を5,000千円とした場合、②保険金等の圧縮記帳における圧縮限度額は30,000千円となる。
なお、圧縮限度額の計算上、固定資産の滅失等により支出した経費には、③類焼者に対する賠償金やけが人への見舞金、被災者への弔慰金は含まれない。 - 〈給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除〉
X社が当期において「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」(以下、「本制度」という)の適用を受けるためには、①雇用者に対する当期の給与等支給額がその雇用者に対する前期の給与等支給額の101.5%以上でなければならない。
X社が当期において本制度の適用を受けることによる税額控除額は、原則として、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額(給与等支給増加額)の15%相当額である。
ただし、継続雇用者に対する当期の給与等支給額がその継続雇用者に対する前期の給与等支給額の102.5%以上であり、かつ、②雇用者に対する当期の教育訓練費の額が前期の教育訓練費の額の120%以上であること等を要件として、税額控除額が給与等支給増加額の40%相当額となる。
なお、税額控除することができる金額は、③当期における法人税額の20%相当額が限度である。
Ⅰ | |
Ⅱ |
広告
正解
Ⅰ | ② 保険金等の圧縮記帳における圧縮限度額は24,000千円となる。 |
Ⅱ | ② 雇用者に対する当期の教育訓練費の額が前期の教育訓練費の額の110%以上であること等が要件となる。 |
分野
科目:D.タックスプランニング細目:10.法人税
解説
〔Ⅰについて〕- 適切。代替資産が、滅失した固定資産と同一種類の固定資産であるかどうかは、減価償却資産の耐用年数表の"種類"の区分が同じであるかどうかで判断されます。耐用年数表では、"種類"、"構造または用途"、"細目"によって耐用年数を定めていますが、"建物"の区分に該当するのであれば、鉄骨やれんが造、金属造、木造、樹脂造、木骨モルタル造などの構造や用途は問わないことになります。
- 不適切。圧縮限度額は以下の式で求めます。圧縮記帳とは、受け取った保険金等で代替固定資産を取得および改良した場合に、支給された年度に一度に課税されることを防ぎ、取得年度の税負担を軽減する制度です。
設例の<資料>3.には、建物(帳簿価額15,000千円)が全焼、保険金50,000千円を受け取り、それを基に代替となる建物(取得価額36,000千円)取得したと説明されており、建物の滅失により支出した経費の額が5,000千円ですから、- 保険差益
- 50,000千円-5,000千円-15,000千円=30,000千円
- 圧縮限度額
- 30,000千円×36,000千円50,000千円-5,000千円=30,000千円×0.8=24,000千円
- 適切。滅失・損壊で支出した経費は、取り壊し費用、片付け費、消防費など直接関連している費用のみが対象となります。被害者への賠償金・見舞金等は圧縮記帳の対象外です。
〔Ⅱについて〕
「賃上げ促進税制」の概要は次のとおりです。X社の資本金は3,000万円なので、資本金1億円以下の中小企業等の欄で考えます。

- 適切。本特例の適用を受ける基本的な要件として、雇用者に対する給与等支給額が、前期の給与等支給額より1.5%増加、すなわち101.5%以上になっていなければなりません。
- 不適切。資本金1億円以下の中小企業等が40%の税額控除を受けるには、給与等支給増加額割合が2.5%以上、かつ、前年と比べて教育訓練費の額が10%以上増加、すなわち110%以上であることが要件となります。
- 適切。本特例による税額控除額は、当期の法人税額の20%が限度です。
広告
広告