FP1級 2019年9月 応用編 問65(改題)

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問65

遺留分および遺言に関する以下の文章の空欄①~⑧に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、本問において、改正相続法とは、2018年7月6日に成立し、同月13日に公布された「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」を指すものとする。

  1. 〈遺留分〉
     遺留分とは、相続財産の一定割合を一定の範囲の相続人に留保するものである。Aさんの相続において、仮に遺留分算定の基礎となる財産の価額が2億円である場合、子Fさんの遺留分の額は()万円となる。なお、遺留分権利者は、()の許可を受けることにより、相続の開始前において遺留分の放棄をすることができる。
     改正相続法により、2019年7月1日以後に開始した相続から、被相続人が相続人に対して生前に行った贈与については、特別受益に該当する贈与で、かつ、原則として相続開始前()年以内にされたものが、遺留分算定の基礎となる財産の価額に算入される。また、従来の遺留分減殺請求権は()請求権に変更され、遺留分権利者は、受遺者等に対し、遺留分に関する権利の行使によって()に相当する金銭の支払を請求することができる。
  2. 〈遺言〉
     民法に定める遺言の方式には普通方式と特別方式があり、普通方式には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言がある。このうち、公正証書遺言は、証人()人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して作成するものである。
     他方、自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付および氏名を自書し、これに押印して作成するものである。ただし、改正相続法により、自筆証書に添付する()については、自書でなくてもよいものとされ、他人による代筆やパソコン等によって印字する方法も認められる。また、改正相続法とともに成立した「()における遺言書の保管等に関する法律」により、2020年7月10日から自筆証書遺言の保管制度が開始された。()において保管された自筆証書遺言については、遺言者の相続開始時に()における()の手続が不要とされる。
万円
 
 
 
 
 

正解 

① 1,250(万円)
② 家庭裁判所
③ 10(年)
④ 遺留分侵害額
⑤ 2(人)
⑥ 財産目録
⑦ 法務局
⑧ 検認

分野

科目:F.相続・事業承継
細目:3.相続と法律

解説

〔①について〕
遺留分全体(総体的遺留分)の割合は、遺留分算定の基礎となる財産の価額を基準に、遺留分権利者が直系尊属のみのときは全体の1/3、それ以外のときは1/2となります。各個人の遺留分(個別的遺留分)は、遺留分全体に各人の法定相続分を乗して求めます。

養子を含めて子は4人なので、子Fさんの法定相続分は「1/2×1/4=1/8」、よって遺留分の額は、

 2億円×1/2×1/8=1,250万円
 
よって、正解は1,250(万円)となります。

〔②について〕
遺留分権利者は遺留分を事前に放棄することができますが、相続開始前に家庭裁判所の許可を受ける必要があります。
よって、正解は家庭裁判所となります。

〔③について〕
相続人に対して行った特別受益に該当する贈与で相続開始前10年以内にされたものは、遺留分算定の基礎となる財産の価格に算入されます。特別受益に該当する贈与とは、婚姻、養子縁組または生計の資本として相続人が受けた贈与のことです。
よって、正解は10(年)となります。

〔④について〕
遺留分に相当する財産を取り戻す請求権は、従来は遺留分減殺請求権とよばれていましたが、民法改正により「遺留分侵害額請求権」に変更になりました。遺留分を侵害する贈与財産を取り戻す制度から、侵害額に相当する金銭を請求できる制度に変わりました。
よって、正解は遺留分侵害額となります。

〔⑤について〕
公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと作成しなければなりません。
よって、正解は2(人)となります。

〔⑥について〕
自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文、日付および氏名を自書してこれに印を押さなければならないと定められていますが、自筆証書遺言に添付する財産目録(相続財産の種類や数量、価額を一覧にしたもの)だけは自書しなくてもよいとされています。
よって、正解は財産目録となります。

〔⑦について〕
これまで自筆証書遺言の遺言書は、主に自宅や銀行の貸金庫等で保管されていましたが、2020年7月10日から法務局で保管できる制度が開始しています。本制度を利用すると、遺言書の閲覧やコピーの請求、遺言書保管事実証明書の交付などのサービスを受けられます。
よって、正解は法務局となります。

〔⑧について〕
自筆証書遺言は、自宅等で保管していた場合、家庭裁判所の検認の手続きが必要ですが、自筆証書遺言保管制度を利用していた場合は検認の手続きは不要です。公証役場で保管する公正証書遺言と同様に、改ざんや変造のおそれがないためです。
よって、正解は検認となります。
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