FP1級 2020年1月 応用編 問60

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 会社員のAさんは、昨年母が死亡し、母および妻子とともに暮らしていた自宅(建物)およびその敷地である甲土地と、青空駐車場として使用している乙土地を相続により取得した。これらの土地は郊外に所在し、最寄駅までも遠く、交通の便があまり良くないことから、Aさんは今年中に他所に移り住むつもりでいる。
 Aさんは、自宅(建物)および甲土地を売却する方向で検討していたが、先日、大手不動産会社から、甲土地と乙土地とを一体とした土地の上に「サービス付き高齢者向け住宅」を建設して賃貸事業を始めてはどうかとの提案を受けた。その提案によれば、同社が全室をまとめて借り上げるため、長期にわたって安定した収入が確保でき、空室や家賃滞納等の運営に関する手間もかからないとのことである。
 甲土地および乙土地の概要は、以下のとおりである。

〈甲土地および乙土地の概要〉
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  • 甲土地は550㎡の長方形の土地であり、第一種住居地域に属する部分は110㎡、第二種住居地域に属する部分は440㎡である。
  • 乙土地は150㎡の長方形の土地であり、第一種住居地域に属する部分は30㎡、第二種住居地域に属する部分は120㎡である。
  • 乙土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。
  • 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
  • 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問60

建築物の用途に関する制限および高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づく「サービス付き高齢者向け住宅」の概要に関する以下の文章の空欄①~⑧に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。

  1. 〈建築物の用途に関する制限〉
     用途地域とは、地域における住居の環境の保護や商業、工業の利便の増進を図るなど、市街地の大枠としての土地利用を定めるもので、都市計画法において第一種住居地域や第二種住居地域など合計()種類が定められており、建築基準法において、その種類ごとに、当該用途地域内で建築することができる建築物の用途が制限されている。
     甲土地と乙土地とを一体とした土地について、第一種住居地域に属する部分および第二種住居地域に属する部分にまたがって建築物を建築する場合は、その全部について、()地域の建築物の用途に関する規定が適用される。
  2. 〈サービス付き高齢者向け住宅の概要〉
     サービス付き高齢者向け住宅とは、高齢者が日常生活を営むために必要な福祉サービスの提供を受けることができる良好な居住環境を備えた賃貸等の住宅で、その名称を使用するためには、都道府県知事等の登録が必要となる。当該住宅を新築する場合、登録基準は、各居住部分の床面積が原則として()㎡以上であること、()構造であること、ケアの専門家が少なくとも日中建物に常駐して状況把握(安否確認)サービスと()サービスが提供されることなどとされ、その登録は()年ごとの更新制となっている。
     登録されたサービス付き高齢者向け住宅は、所定の要件のもと、国による補助事業の対象となる。当該住宅を新築する場合、原則として、補助率は新築工事に要する所定の工事費の()%とされ、一戸当たりの上限額が設定されている。
     また、所定の要件を満たすサービス付き高齢者向け住宅を新築して賃貸の用に供する場合、固定資産税における()年間の減額措置や不動産取得税における軽減措置といった税制上の優遇措置が設けられている。
種類
地域
構造
サービス
年間

正解 

① 13(種類)
② 第二種住居(地域)
③ 25(㎡)
④ バリアフリー(構造)
⑤ 生活相談(サービス)
⑥ 5(年)
⑦ 10(%)
⑧ 5(年間)

分野

科目:E.不動産
細目:3.不動産に関する法令上の規制

解説

〔①について〕
用途地域は以下の住居系8つ、商業系2つ、工業系3つの計13種類です。
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よって、正解は13(種類)となります。

〔②について〕
建築物の敷地が2以上の用途地域にわたっている場合、その敷地の過半が属する区域の用途制限が適用されます。甲土地は、半分を超える部分が第二種住居地域に属しているので、第二種住居地域の用途制限が適用されます。
よって、正解は第二種住居(地域)となります。

〔③について〕
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、各戸が床面積25㎡(居間、食堂、台所等が共同利用の場合は18㎡)以上でなければなりません。
よって、正解は25(㎡)となります。

〔④について〕
サ高住は、60歳以上の高齢者および60歳未満の要介護認定を受けた者を対象とする住宅ですから、登録基準として加齢対応構造が求められています。床に段差のないバリアフリー構造、幅78cm以上の廊下、一定基準を満たす階段、便所・浴室への手すりの設置などが義務付けられています。
よって、正解はバリアフリー(構造)となります。

〔⑤について〕
サ高住では少なくとも、入居者に所定の基準を満たす状況把握サービス(入居者の心身の状況を把握し、その状況に応じた一時的な便宜を供与するサービス)及び生活相談サービス(入居者が日常生活を支障なく営むことができるようにするために入居者からの相談に応じ必要な助言を行うサービス)を提供しなければなりません。その他、入浴、排せつ、食事等の介護に関するサービス、食事の提供に関するサービス、調理、洗濯、掃除等の家事に関するサービス、心身の健康の維持及び増進に関するサービスが提供されることもあります。
よって、正解は生活相談(サービス)となります。

〔⑥について〕
サービス付き高齢者向け住宅事業を行う者は、住宅単位で都道府県知事の登録を受けることができます。登録は5年ごとの更新制です。
よって、正解は5(年)となります。

〔⑦について〕
所定の要件を満たすサ高住を新築した場合、サービス付き高齢者向け住宅整備事業より、最大で建築費の10%相当額の補助を受けることができます。その他、改修や既設改修も補助の対象(補助率1/3)となっています。
よって、正解は10(%)となります。

〔⑧について〕
建築費補助を受けた1個当たりの床面積が30㎡以上210㎡以下の新築サ高住では、新築後5年間、1戸当たり120㎡までの部分について、2分の1以上6分の5以下の範囲で市町村の条例で定める割合の固定資産税額が減額されます。また、1戸当たりの床面積が30㎡以上160㎡以下の新築サ高住では、家屋の課税標準や土地の税額について一般の住宅新築特例と同様の軽減措置が受けられます。
よって、正解は5(年間)となります。