FP1級 2020年1月 応用編 問61

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 会社員のAさんは、昨年母が死亡し、母および妻子とともに暮らしていた自宅(建物)およびその敷地である甲土地と、青空駐車場として使用している乙土地を相続により取得した。これらの土地は郊外に所在し、最寄駅までも遠く、交通の便があまり良くないことから、Aさんは今年中に他所に移り住むつもりでいる。
 Aさんは、自宅(建物)および甲土地を売却する方向で検討していたが、先日、大手不動産会社から、甲土地と乙土地とを一体とした土地の上に「サービス付き高齢者向け住宅」を建設して賃貸事業を始めてはどうかとの提案を受けた。その提案によれば、同社が全室をまとめて借り上げるため、長期にわたって安定した収入が確保でき、空室や家賃滞納等の運営に関する手間もかからないとのことである。
 甲土地および乙土地の概要は、以下のとおりである。

〈甲土地および乙土地の概要〉
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  • 甲土地は550㎡の長方形の土地であり、第一種住居地域に属する部分は110㎡、第二種住居地域に属する部分は440㎡である。
  • 乙土地は150㎡の長方形の土地であり、第一種住居地域に属する部分は30㎡、第二種住居地域に属する部分は120㎡である。
  • 乙土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。
  • 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
  • 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問61

甲土地と乙土地とを一体とした土地の上に耐火建築物を建築する場合、次の①および②に答えなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は㎡表示とすること。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。

  1. 建蔽率の上限となる建築面積はいくらか。
  2. 容積率の上限となる延べ面積はいくらか。

正解 

① 546(㎡)
② 1,624(㎡)

分野

科目:E.不動産
細目:3.不動産に関する法令上の規制

解説

本問ではセットバックを考える必要がないので、設例に記載の敷地面積をそのまま使って計算できます。

〔①について〕
建築物が建蔽率の異なる複数の用途地域にまたがって建築される場合、各用途地域ごとに「敷地面積×建蔽率」で建築面積を求め、その合計が敷地全体の建築面積の限度となります。

建築面積の計算では建蔽率の緩和を考慮する必要があります。
本問の建物は準防火地域に建築されるので"準防火地域内の耐火建築物等"に該当し、第一種住居の部分、第二種住居地域の部分ともに+10%の緩和を受けられます。また、乙土地は指定角地に該当するので、乙土地に隣接する甲土地を一体利用するときには敷地全部についてさらに+10%の緩和を受けることができます(合わせて+20%)。

用途地域ごとに分けて建築面積の限度を計算し、それを合計します。
第一種住居地域に属する部分
(110㎡+30㎡)×(50%+20%)=98㎡
第二種住居地域に属する部分
(440㎡+120㎡)×(60%+20%)=448㎡
建蔽率の上限となる建築面積
98㎡+448㎡=546㎡
よって、正解は546(㎡)になります。

〔②について〕
建築物が容積率の異なる複数の用途地域にまたがって建築される場合、各用途地域ごとに「敷地面積×容積率」で延べ面積を求め、その合計が敷地全体の延べ面積の限度となります。また、容積率には前面道路の幅員による制限があり、前面道路の幅員が12m未満の場合、以下の2つのうち小さい方の制限が適用されます。
  • 都市計画で定められた容積率(指定容積率)
  • 前面道路の幅員×法定乗数
敷地が2以上の道路に面している場合、幅員が最大のものが前面道路となるので、本問では6m道路が前面道路です。

用途地域ごとに分けて延べ面積の限度を計算し、それを合計します。
第一種住居地域に属する部分
容積率:200%<6m×0.4=240% ∴200%
(110㎡+30㎡)×200%=280㎡
第二種住居地域に属する部分
容積率:300%<6m×0.4=240% ∴240%
(440㎡+120㎡)×240%=1,344㎡
容積率の上限となる延べ面積
280㎡+1,344㎡=1,624㎡
よって、正解は1,624(㎡)になります。