FP1級過去問題 2020年9月学科試験 問19

問19

下記の〈他社株転換可能債(EB債)の概要〉に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
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  1. X株式会社の株価が終値で一度でも1,600円を下回ると、その直後の利払日の利率は0.10%になる。
  2. X株式会社の株価が終値で一度でも2,200円を上回ると、その直後の利払日に期限前償還される。
  3. X株式会社の株価が満期償還日直前の判定日の終値で2,400円である場合、償還日には、額面100万円につき100万円の償還金で償還される。
  4. X株式会社の株価が満期償還日直前の判定日の終値で1,000円である場合、償還日には、額面100万円につき250株のX株式会社の株式で償還される。

正解 3

問題難易度
肢16.0%
肢222.8%
肢356.0%
肢415.2%

解説

他社株転換可能債(EB債)は、仕組債の一種で債権にスワップやオプションなどのデリバディブを組み合わせた商品です。EB債では、連動する株式の価格変動によって、投資した資金が償還時に発行体以外の株式(他社株)に転換されて償還される可能性があるものをいいます。価格によって償還方法が決まるので、投資家が償還方法を選択することはできません。

EB債に係る各価格を確認しておきましょう。
ノックイン価格
判定日の株価が一度でもこの価格を下回った場合、その後転換価格まで回復した場合を除いて(価格の下がった)現物株式で償還される
基準価格
クーポンの利率が変わる株価
転換価格(行使価格)
EB債を株式に交換するときの株式1株当たりの値段
トリガー価格
判定日にこの株価に達していた場合、早期償還されその後の利払いを受けられなくなる
償還のパターンとしては以下の4つがあります。
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  1. 不適切。利払いの利率は、判定日における価格が1,600円以上であるかどうかによって決まります。期間中に終値が1,600円未満になった日があっても、判定日の終値で回復していれば5.00%相当の利払いを受けられます。
  2. 不適切。早期償還されるかどうかは、判定日における価格がトリガー価格(ノックアウト価格)に達しているかどうかで決まります。期間中に終値が2,200円以上の日があっても、判定日の終値で2,200円を下回っていれば早期償還はありません。
  3. [適切]。満期償還日直前の判定日の終値でトリガー価格(ノックアウト価格)に達した場合、次の利払い日である満期時に償還となります。償還されるのは額面金額100%ですので、額面100万円につき100万円の現金で償還されます。
  4. 不適切。判定日にノックイン価格以下に達しているので、X株式会社の株式に転換され償還されます。償還される株数は転換価格で割り戻されるため、額面100万円につき「100万円÷2,000円=500株」+現金調整額となります。X株式会社の株式は1,000円に値下がりしているので、「500株×1,000円=500,000円」しか償還されないことになります(元本欠損)。
したがって適切な記述は[3]です。