FP1級 2021年1月 応用編 問58
Aさんは、2024年10月に30年7カ月勤めた商社を退職し、個人で小売店を開業した。会社員時代に培った人脈により、Aさんの人柄をよく知る人たちが懇意にしてくれたこともあり、開業当初から事業は順調に推移した。Aさんが2024年中に得た所得には、給与所得、退職所得、事業所得のほかに、ゴルフ会員権を売却したことによる譲渡所得と加入していた生命保険契約を解約したことによる一時所得がある。
Aさんの家族および2024年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。なお、Aさんは、2024年は消費税について免税事業者であり、税込経理を行っている。また、棚卸資産の評価方法について、納税地の所轄税務署長に税務上の届出はしていない。
〈Aさんとその家族に関する資料〉
〈Aさんの2024年分の収入等に関する資料〉
Aさんの家族および2024年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。なお、Aさんは、2024年は消費税について免税事業者であり、税込経理を行っている。また、棚卸資産の評価方法について、納税地の所轄税務署長に税務上の届出はしていない。
〈Aさんとその家族に関する資料〉
- Aさん(53歳)
- 白色申告者
- 妻Bさん(50歳)
- 専業主婦であったが、2024年11月からAさんの小売業に従事している。
- 長女Cさん(20歳)
- 大学生。2024年中に収入はない。
- 母Dさん(80歳)
- 2024年中に老齢基礎年金70万円と遺族厚生年金90万円を受け取っている。
〈Aさんの2024年分の収入等に関する資料〉
- 給与所得に関する事項
給与収入の金額:900万円 - 退職所得に関する事項
- 退職手当等の収入金額
- 2,500万円
- 勤続期間
- 30年7カ月
- 事業所得に関する事項
- 上記の必要経費は税務上適正に計上されている。なお、必要経費には売上原価は含まれていない。
- 譲渡所得に関する事項
Aさんが売却したゴルフ会員権に関する事項は、以下のとおりである。- 取得年月
- 2000年8月
- 売却金額
- 300万円
- 取得費
- 400万円
- 一時所得に関する事項
Aさんが解約した生命保険に関する事項は、以下のとおりである。- 保険種類
- 一時払変額個人年金保険(10年確定年金)
- 契約年月
- 2016年8月
- 契約者(=保険料負担者)
- Aさん
- 被保険者
- Aさん
- 解約返戻金額
- 480万円
- 正味払込保険料
- 400万円
- 妻Bさん、長女Cさんおよび母Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
- Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
- Aさんとその家族の年齢は、いずれも2024年12月31日現在のものである。
- 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
問58
Aさんの2024年分の①事業所得の金額および②退職所得の金額を、それぞれ求めなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は円単位とすること。なお、事業所得の金額の計算上、妻Bさんが事業専従者の要件を満たしている場合、事業専従者控除額を控除すること。①円 |
②円 |
正解
① 2,000,000(円) |
② 4,650,000(円) |
分野
科目:D.タックスプランニング細目:3.各種所得の内容
解説
〔①について〕
事業所得の金額は、1年間の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除して計算します。
【総収入金額】
売上高が収入金額となります。売上値引・返品高・売上割戻がある場合、売上高から直接控除できるので、
1,700万円-100万円=1,600万円 … (1)
【必要経費】
必要経費として控除できるのは、収入を得るために要した費用および事業用資産に生じた損失などであり、売上原価、減価償却費、青色事業専従者給与、事業専従者控除などが含まれます。
500万円+900万円=1,400万円 … (2)
(1)~(2)より、事業所得の金額は、
1,600万円-1,400万円=200万円
よって、正解は2,000,000(円)となります。
〔②について〕
退職所得の金額は「(退職収入ー退職所得控除額)×1/2」で求めます。この式中の退職所得控除額は、勤続年数20年以下か20年超で計算方法が変わります。Aさんの勤続年数は30年7カ月ですので切り上げて31年で計算します。
退職所得控除額 800万円+70万円×(31年-20年)=1,570万円
退職所得の金額 (2,500万円-1,570万円)×1/2=465万円
よって、正解は4,650,000(円)となります。
事業所得の金額は、1年間の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除して計算します。
【総収入金額】
売上高が収入金額となります。売上値引・返品高・売上割戻がある場合、売上高から直接控除できるので、
1,700万円-100万円=1,600万円 … (1)
【必要経費】
必要経費として控除できるのは、収入を得るために要した費用および事業用資産に生じた損失などであり、売上原価、減価償却費、青色事業専従者給与、事業専従者控除などが含まれます。
- 資料(3)中に記載されている必要経費
500万円 - 売上原価
年初の商品棚卸高+年間の仕入高-年末の商品棚卸高で求めます。年末の商品棚卸高については、設例に"棚卸資産の評価方法について届出はしていない"とあるので、原則的評価方法である最終仕入原価法による評価額を使います。
0円+1,500万円-600万円=900万円 - 事業専従者控除額
その年を通じて6か月を超えて専ら白色事業に従事している者がいるときに、以下の2つのうち低い額の控除を受けられる制度です。- 配偶者86万円+それ以外の専従者1人につき50万円
- 専従者控除適用前の事業所得の金額を「専従者の数+1」で除した額
500万円+900万円=1,400万円 … (2)
(1)~(2)より、事業所得の金額は、
1,600万円-1,400万円=200万円
よって、正解は2,000,000(円)となります。
〔②について〕
退職所得の金額は「(退職収入ー退職所得控除額)×1/2」で求めます。この式中の退職所得控除額は、勤続年数20年以下か20年超で計算方法が変わります。Aさんの勤続年数は30年7カ月ですので切り上げて31年で計算します。
退職所得控除額 800万円+70万円×(31年-20年)=1,570万円
退職所得の金額 (2,500万円-1,570万円)×1/2=465万円
よって、正解は4,650,000(円)となります。
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