FP1級 2021年5月 応用編 問60
土地の借地権者であるAさんは、甲土地にある自宅で妻と2人で暮らしている。Aさんは、自宅の建替えを検討していたところ、先日、甲土地の貸主(地主)であるBさんから、甲土地を乙土地と丙土地に分割して、乙土地部分をAさんが取得し、丙土地部分をBさんが取得するように借地権と所有権(底地)を交換したいとの提案を受けた。
甲土地および交換後の乙土地、丙土地の概要は、以下のとおりである。
〈甲土地の概要〉
甲土地および交換後の乙土地、丙土地の概要は、以下のとおりである。
〈甲土地の概要〉
- 甲土地は360㎡の長方形の土地であり、交換後の乙土地および丙土地はいずれも180㎡の長方形の土地である。
- 交換後の乙土地のうち、第一種住居地域に属する部分は75㎡、第一種中高層住居専用地域に属する部分は105㎡である。
- 交換後の乙土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。
- 幅員15mの公道は、建築基準法第52条第9項の特定道路であり、特定道路から交換後の乙土地までの延長距離は63mである。
- 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
- 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
- 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
問60
建築基準法の規定および「固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例」に関する以下の文章の空欄①~⑧に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。- 〈建築基準法の規定〉
建築基準法では、都市計画区域と準都市計画区域内において、用途地域等に応じて、建築物の高さの制限を定めている。交換後の乙土地に建築する建築物に適用される高さの制限には道路斜線制限と(①)斜線制限があり、さらに第一種中高層住居専用地域内においては、「日影による中高層の建築物の高さの制限」(以下、「日影規制」という)が適用される場合を除き、(②)斜線制限がある。
なお、天空率により計算した採光、通風等が各斜線制限により高さが制限された場合と同程度以上である建築物については、各斜線制限は適用されない。
日影規制の対象区域は、(③)地域、工業地域、工業専用地域以外で、地方公共団体の条例で指定された区域となる。日影規制の対象区域である第一種中高層住居専用地域においては、原則として、高さが(④)mを超える建築物が日影規制による制限を受ける。 - 〈固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例〉
「固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例」(以下、「本特例」という)の適用を受けるためには、交換譲渡資産および交換取得資産がいずれも(⑤)年以上所有されていたものであり、交換取得資産を交換譲渡資産の交換直前の(⑥)と同一の(⑥)に供する必要がある。また、交換時における交換譲渡資産の時価と交換取得資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高いほうの価額の(⑦)%以内でなければならない。
なお、本特例の適用を受けた場合、交換取得資産は交換譲渡資産の取得費や(⑧)を引き継ぐことになる。
①斜線制限 |
②斜線制限 |
③地域 |
④m |
⑤年 |
⑥ |
⑦% |
⑧ |
正解
① 隣地(斜線制限) |
② 北側(斜線制限) |
③ 商業(地域) |
④ 10(m) |
⑤ 1(年) |
⑥ 用途 |
⑦ 20(%) |
⑧ 取得時期 |
分野
科目:E.不動産細目:3.不動産に関する法令上の規制
解説
〔①、②について〕
都市計画区域および準都市計画区域内の建築物に適用される斜線制限には次の3つがあります。建築物の敷地が2以上の用途地域にわたっている場合には、用途地域ごとに斜線制限が適用されます。
よって、①は隣地(斜線制限)、②は北側(斜線制限)が正解となります。〔③、④について〕
日影規制は、商業地域、工業地域、工業専用地域以外で、条例で指定した区域に適用されます。日影規制により制限を受ける建築物は、用途地域に応じて以下のようになっており、第一種中高層住居専用地域では、原則として高さ10mを超える建築物が対象となります。よって、③は商業(地域)、④は10(m)が正解となります。
〔⑤、⑥、⑦について〕
固定資産の交換の譲渡所得の特例は、個人が土地と土地、建物と建物などのように同じ種類の固定資産を交換したときに、その譲渡がなかったものとする特例です。本特例の適用を受けるためには下記6つの要件を満たす必要があります。
〔⑧について〕
本特例を受けた場合、譲渡はなかったものとみなされ、取得した資産は、譲渡した資産を取得した時から引き続き所有していたものとみなされます。Aさんは乙土地の取得費や取得時期として、甲土地の借地権の取得費や取得時期を引き継ぐことになります。
よって、正解は取得時期です。
都市計画区域および準都市計画区域内の建築物に適用される斜線制限には次の3つがあります。建築物の敷地が2以上の用途地域にわたっている場合には、用途地域ごとに斜線制限が適用されます。
- 道路斜線制限
- 道路の日照や通風に支障を来さないように、道路の反対側の境界線からの斜線で高さを制限する。すべての用途地域に適用される
- 隣地斜線制限
- 高さ20mまたは31mの位置からの斜線で高さを制限する。より厳しい絶対高さ制限がある第一種・第二種低層、田園住居以外の地域に適用される
- 北側斜線制限
- 住居専用地域において、敷地北側境界線上の5mまたは10mの位置からの斜線で高さを制限する。第一種・第二種低層、田園住居、第一種・第二種中高層の5つの地域に適用される
※中高層住居地域では日影規制の対象区域を除く
よって、①は隣地(斜線制限)、②は北側(斜線制限)が正解となります。〔③、④について〕
日影規制は、商業地域、工業地域、工業専用地域以外で、条例で指定した区域に適用されます。日影規制により制限を受ける建築物は、用途地域に応じて以下のようになっており、第一種中高層住居専用地域では、原則として高さ10mを超える建築物が対象となります。よって、③は商業(地域)、④は10(m)が正解となります。
〔⑤、⑥、⑦について〕
固定資産の交換の譲渡所得の特例は、個人が土地と土地、建物と建物などのように同じ種類の固定資産を交換したときに、その譲渡がなかったものとする特例です。本特例の適用を受けるためには下記6つの要件を満たす必要があります。
- 同じ種類の資産の交換であること(借地権は土地とみなす)
- 交換対象資産が販売のために所有している固定資産(棚卸資産)でないこと
- 譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること
- 取得する資産は、相手が1年以上所有していたものであり、交換のために取得したものでないこと
→取得資産を交換直後に譲渡するとNG - 取得する資産を交換前と同じ用途で使用すること
- 交換する資産同士の時価の差額が、高い方の価額の20%以内であること
〔⑧について〕
本特例を受けた場合、譲渡はなかったものとみなされ、取得した資産は、譲渡した資産を取得した時から引き続き所有していたものとみなされます。Aさんは乙土地の取得費や取得時期として、甲土地の借地権の取得費や取得時期を引き継ぐことになります。
よって、正解は取得時期です。
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