FP1級 2021年9月 応用編 問51

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 Aさん(49歳)は、高校卒業後に就職した会社を32歳で退職してから現在に至るまで、個人事業主として妻Bさん(48歳)とともに駅前の商店街でパン屋を営んでいる。店では、2名の従業員を雇用しており、店の経営は堅調に推移している。
 Aさんは、最近、老後の生活に漠然とした不安を抱くことが多くなった。Aさんは、妻Bさんとともに国民年金の保険料を納付しているが、それ以外の準備はしていない。そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
 Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。

〈Aさんの家族に関する資料〉
  1. Aさん(本人)
    • 1972年5月10日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1991年4月から2004年9月まで厚生年金保険の被保険者である(厚生年金基金の加入期間はない)。
      2004年10月から現在に至るまで国民年金の第1号被保険者として国民年金の保険料を納付している(付加保険料は納付していない)。
  2. Bさん(妻)
    • 1973年7月11日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1992年4月から1999年3月まで厚生年金保険の被保険者である。
      1999年4月から2004年9月まで国民年金の第3号被保険者である。
      2004年10月から現在に至るまで国民年金の第1号被保険者として国民年金の保険料を納付している(付加保険料は納付していない)。
  • 妻Bさんは、Aさんと同居し、現在および将来においても、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
  • Aさんと妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問51

Aさんが、60歳に達するまで国民年金の保険料を納付した場合、Aさんが原則として65歳から受給することができる公的年金の老齢給付について、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、計算にあたっては、下記の〈条件〉に基づき、年金額は、2021年度価額に基づいて計算するものとする。

  1. 老齢基礎年金の年金額はいくらか。
  2. 老齢厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。
  1. 厚生年金保険の被保険者期間
    • 総報酬制導入前の被保険者期間:144月
    • 総報酬制導入後の被保険者期間:18月
  2. 平均標準報酬月額および平均標準報酬額(2021年度再評価率による額)
    • 総報酬制導入前の平均標準報酬月額:28万円
    • 総報酬制導入後の平均標準報酬額:36万円
  3. 報酬比例部分の給付乗率
    51_1.png./image-size:503×60
  4. 経過的加算額
    51_2.png./image-size:547×74
  5. 加給年金額
    390,500円(要件を満たしている場合のみ加算すること)

正解 

① 780,900(円)
780,900円×480月480月=780,900円
② 344,129(円)
280,000円×7.1251,000×144月+360,000円×5.4811,000×18月
=322,797円(円未満四捨五入)
1,628円×162月-780,900円×149月480月=21,332円(円未満四捨五入)
322,797円+21,332円=344,129円

分野

科目:A.ライフプランニングと資金計画
細目:5.公的年金

解説

〔①について〕
老齢基礎年金の年金額は、以下の算式で求めます。2021年度の基本年金額は780,900円です。

 基本年金額×保険料納付済月数480月

Aさんは、20歳前から厚生年金保険の被保険者であり、その後は第1号被保険者として国民年金の保険料を納付しています。60歳に達するまで国民年金の保険料を納付した場合、保険料納付月数は「40年×12月=480月」となります。免除期間はないのでそのまま計算します。

 780,900円×480月480月=780,900円

よって、正解は780,900(円)です。

〔②について〕
65歳以上の老齢厚生年金の年金額は、以下の算式で求めます。

 報酬比例部分の額+経過的加算額+加給年金額

【報酬比例部分の額】
次式で算出される額の合計になります。
  • 平均標準報酬月額×7.1251,000×総報酬制導入前の被保険者期間月数
    ※2003年3月以前
  • 平均標準報酬月額×5.4811,000×総報酬制導入後の被保険者期間月数
    ※2003年4月以降
Aさんの厚生年金被保険者期間は総報酬制導入前が144月、総報酬制導入後が18月なので、報酬比例部分の額は、

 280,000円×7.1251,000×144月+360,000円×5.4811,000×18月
=280円×7.125×194月+360円×5.481×271月
=287,280円+35,516.88円=322,796.88円
(円未満を四捨五入して)322,797円

【経過的加算額】
厚生年金の被保険者期間の合計は「144月+18月=162月」、20歳以上60歳未満の被保険者期間は20歳未満の13月(1991年4月~1992年4月)を引いた「162月-13月=149月」になります。これを計算式に当てはめると、

 1,628円×162月-780,900円×149月480月=21,331.6…円
(円未満を四捨五入して)21,332円

【加給年金額】
以下の条件を満たすときに支給されます。Aさんの厚生年金被保険者期間は162月であり、240月(20年)未満なので加給年金額を受け取ることができません。
以上より、老齢厚生年金の基本年金額は、

 322,797円+21,332円=344,129円

よって、正解は344,129(円)です。