FP1級 2021年9月 応用編 問57

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問57

設例》のX社の当期の〈資料〉と下記の〈条件〉に基づき、同社に係る〈略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉の空欄①~⑦に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、別表中の「***」は、問題の性質上、伏せてある。

〈条件〉
  • 設例に示されている数値等以外の事項については考慮しないものとする。
  • 所得の金額の計算上、選択すべき複数の方法がある場合は、所得の金額が最も低くなる方法を選択すること。
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正解 

① 2,500,000(円)
② 200,000(円)
③ 800,000(円)
④ 5,000,000(円)
⑤ 200,000(円)
⑥ 30,630(円)
⑦ 12,800,000(円)

分野

科目:D.タックスプランニング
細目:10.法人税

解説

まず、会計上の利益から法人税の所得金額と納付税額を計算する大まかな流れ、別表四における加算・減算の項目を確認しておきましょう。
〔①について〕
見積り額として当期の損益計算書に損金計上した法人税額等は、実際にはまだ支出していませんから損金不算入となります。このため、5.(1)に記載がある当期確定申告分の見積納税額2,500千円が加算対象となります。
よって、正解は2,500,000(円)です。

〔②について〕
減価償却の償却超過額とは、決算書において損金とした減価償却費の中で税法上の償却限度額を超える部分であり、税法上の損金と認められないので損金不算入となります。償却限度額は、個々の資産ごとに判断します。
1.の記載より、器具備品の償却額が限度額を超えているため、その超える「3,000-2,800=200千円」の部分が損金不算入として加算の対象となります。建物の減価償却費は限度額未満ですが、余った枠を別の資産のために使うことはできないので注意しましょう。
よって、正解は200,000(円)です。

〔③について〕
定期同額給与の額の変更は、事業年度開始3カ月以内の改定(通常改定)、臨時改定、著しい業績悪化による改定以外は認められません。それ以外の理由で改定した場合、以下の部分が損金不算入となります。
X社は正当な事由なく800千円から1,000千円に増額改定しているので、12月から3月の4カ月間に支払われた増額分200千円が損金として認められません。したがって損金不算入額は「200千円×4か月=800千円」となります。
よって、正解は800,000(円)です。

〔④について〕
役員退職金をいくら支払うかは会社の自由ですが、不相当に高額な部分は税務調査で損金処理が否認されることがあります。損金として認められる額は個別の事情に異なりますが、実務上は功績倍率法により役員退職金の適正額を決めることが多いです。功績倍率法は、役員の退職直前給与額を基礎として、役員の法人の業務に従事した期間及び役員の職責に応じた倍率を乗ずる方法により支給する金額を算定する方法です。

 役員退職金の適正額=最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率
 役職により異なるが、社長は3.0倍までOKとされている

最終報酬月額が800千円、役員在任期間15年、功績倍率2.5倍だと、役員退職金の適正額は「800千円×15年×2.5=30,000千円」です。X社は実際に支払った額のうち適正額を超える部分「35,000千円-30,000千円=5,000千円」を自己否認するので、この額を損金不算入額とします。
よって、正解は5,000,000(円)です。

〔⑤について〕
減価償却費のうち損金となるのは税法の償却限度額までであるのが原則ですが、償却限度額を超える部分は翌期以降に繰り越すことができ、翌期以降で同じ資産に関して償却不足額が出た場合には、その部分を限度として繰り越した償却超過額の損金算入が認められます。これが減価償却超過額の認容額です。
  1. 2022年 減価償却費2,000 償却限度額1,500
    1,500が損金となり、超過した500は繰り越し
  2. 2023年 減価償却費1,000 償却限度額1,300
    償却不足額の300に繰り越した500のうち300を割り当てて、損金は1,300
    ⇒300が減価償却超過額の認容額となる
1.では、建物について繰越償却超過額350千円があり、同じ建物に関して当期に「6,000-5,800=200千円」の未償却額が生じているため、繰越償却超過額のうち200千円が損金算入として減算の対象となります。
よって、正解は200,000(円)となります。

〔⑥について〕
法人が支払を受ける利子等、配当等などについて源泉徴収された所得税および復興特別所得税額が該当します。預金の利子について源泉徴収された所得税額30千円・復興特別所得税額630円があるため、法人税額から控除される所得税額は、

 30,000円+630円=30,630円

よって、正解は30,630(円)となります。

〔⑦について〕
法人税の所得金額は、当期利益の額に加算額を加え減算額を減らした「仮計」に、"法人税額から控除される所得税額"を加え、"欠損金又は災害損失金等の当期控除額"を控除した額になります。
所得税額は最終的に法人税額から控除されますが、会計上では租税公課等として費用処理されているので一旦は所得金額に加算します。欠損金等は過年度分の欠損金額の繰越控除により損金となる額ですから所得金額から差し引きます。
加算の合計額
2,500,000+200,000+800,000+5,000,000=8,500,000円
減算の合計額
200,000+730,000=930,000円
所得金額
5,199,370+8,500,000-930,000+30,630-0=12,800,000円
よって、正解は12,800,000(円)となります。