FP1級 2021年9月 応用編 問58

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 小売業を営むX株式会社(資本金30,000千円、青色申告法人、同族会社かつ非上場会社で株主はすべて個人、租税特別措置法上の中小企業者等に該当し、適用除外事業者ではない。以下、「X社」という)の2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日。以下、「当期」という)における法人税の確定申告に係る資料は、以下のとおりである。

〈資料〉
  1. 減価償却費に関する事項
    当期における減価償却費は、その全額について損金経理を行っている。このうち、器具備品の減価償却費は3,000千円であるが、その償却限度額は2,800千円であった。一方、建物の減価償却費は5,800千円であるが、その償却限度額は6,000千円であった。なお、前期からの繰越償却超過額が当該建物について350千円ある。
  2. 役員給与に関する事項
    当期において、取締役のAさんに対して支給した役員給与は、2023年4月分から2023年11月分までは月額800千円であったが、2023年12月分から2024年3月分までは月額1,000千円に増額した。このAさんに対する役員給与について、増額する臨時改定事由は特になく、X社は所轄税務署長に対して事前確定届出給与に関する届出書を提出していない。
  3. 役員退職金に関する事項
    当期において、退任した取締役のBさんに対して役員退職金を35,000千円支給した。この役員退職金の税法上の適正額は、最終報酬月額800千円、役員在任期間15年、功績倍率2.5倍として功績倍率方式により算定した金額が妥当であると判断されたため、支給額のうち功績倍率方式により計算された適正額を上回る部分については、別表四において自己否認を行うことにした。
  4. 税額控除に関する事項
    当期における「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」に係る税額控除額が250千円ある。
  5. 「法人税、住民税及び事業税」等に関する事項
    1. 損益計算書に表示されている「法人税、住民税及び事業税」は、預金の利子について源泉徴収された所得税額30千円・復興特別所得税額630円および当期確定申告分の見積納税額2,500千円の合計額2,530,630円である。なお、貸借対照表に表示されている「未払法人税等」の金額は2,500千円である。
    2. 当期中に「未払法人税等」を取り崩して納付した前期確定申告分の事業税(特別法人事業税を含む)は730千円である。
    3. 源泉徴収された所得税額および復興特別所得税額は、当期の法人税額から控除することを選択する。
    4. 中間申告および中間納税については、考慮しないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問58

前問《問57》を踏まえ、X社が当期の確定申告により納付すべき法人税額を求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。
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正解 

 2,032,900(円)
8,000,000円×15%+(12,800,000円-8,000,000円)×23.2%=2,313,600円
2,313,600円-250,000円-30,630円=2,032,900円(100円未満切捨て)

分野

科目:D.タックスプランニング
細目:10.法人税

解説

X社の資本金は30,000千円=3,000万円のため、<資料>のその他の法人に該当します。中小法人の場合、所得金額800万円以下の部分は税率15%、それ以外の部分は税率23.2%を乗じます。問57⑦より所得金額は12,800,000円なので、法人税の算出税額は、
①800万円以下の部分
8,000,000円×15%=1,200,000円
②800万円超の部分
(12,800,000円-8,000,000円)×23.2%=1,136,000円
合計(①+②)
1,200,000円+1,136,000円=2,313,600円
《設例》4.税額控除に関する事項より、法人税額の特別控除に係る税額控除額が250,000円あります。法人税額の20%が控除限度額となることが通例ですが20%以内に収まっているので全額を控除することができます。

また問57⑥より、法人税額から控除される所得税額30,630円があるため、それぞれを法人税額から控除して納付すべき法人税額を求めます。

 2,313,600円-250,000円-30,630円=2,032,970円
(100円未満切り捨て)2,032,900円

よって、正解は2,032,900(円)です。