FP1級過去問題 2022年1月学科試験 問42

問42

贈与税の課税財産等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、贈与者および受贈者はいずれも個人であるものとする。
  1. 父が所有する土地(時価3,000万円)を、その土地上に自宅の建築を検討している子に1,000万円で譲渡した場合、その差額に相当する金額を子が父から贈与により取得したものとみなされる。
  2. 2024年11月に死亡した叔父から同年4月に現金1,000万円の贈与を受けていた甥が、叔父の相続または遺贈により財産を取得しなかった場合、叔父から贈与により取得した財産については、相続税の課税価格に加算されるため、甥に贈与税が課されることはないが、相続税の課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超える場合は、相続税が課される。
  3. 離婚により、夫が妻に居住用マンションを分与した場合、原則として、その財産を取得した妻に贈与税が課されることはなく、その財産を分与した夫が有償で譲渡したこととされ、譲渡所得として所得税の課税対象となる。
  4. 兄・弟・妹の3人が共有している土地について、兄がその持分を放棄した場合、その持分は弟・妹に帰属し、兄に係る持分を弟・妹が各自の持分に応じて贈与により取得したものとみなされる。

正解 2

問題難易度
肢14.9%
肢248.9%
肢333.7%
肢412.5%

解説

  1. 適切。個人から著しく低い価額の対価で譲り受けた場合、その財産の時価と支払った対価の額との差額に相当する金額が贈与によって取得したものとみなされます。親子間であっても例外ではないので、子は父から2,000万円の贈与を受けたものとして課税対象となります。なお、著しく低いかどうかは事例ごとに判断されますが、時価の3分の1の対価は明らかに著しく低いと言えます。
  2. [不適切]。生前贈与加算は、贈与者の死亡により相続財産を取得した場合に行います。甥は叔父の相続財産を受け取っていないので、生前に受け取った贈与はそのまま贈与税の課税対象となります。相続税は課されません(相続税法19条)。
  3. 適切。離婚時に財産分与として行われた不動産の譲渡については、通常、贈与税は課税されません。ただし、財産分与額が明らかに多すぎる場合や離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合については、贈与とみなされて贈与税が課されることがあります(相基通9-8)。分与した側は分与した時の土地や建物などの時価が譲渡所得の収入金額となり、譲渡所得として所得税の課税対象となります(所基通33-1の4)。
  4. 適切。共有している財産についてそのうちの1人がその持分を放棄した場合、放棄された持分は他の共有者の持分に帰属します(民法255条)。放棄された持分を取得した共有者は、その放棄による持分を贈与により取得したものとみなされます(相基通9-12)。
したがって不適切な記述は[2]です。