FP1級過去問題 2022年5月学科試験 問24

問24

「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律」(預金者保護法)に関する次の記述のうち、適切なものはいくつあるか。なお、金融機関に過失はないものとし、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 偽造されたキャッシュカードによる預金等の不正払戻しについては、金融機関から生年月日等の他人に類推されやすい暗証番号を別の番号に変更するように複数回にわたる働きかけが行われたにもかかわらず、引き続き、生年月日等を暗証番号にしていた場合など、顧客に過失が認められる場合、被害額の75%相当額が補償の対象となる。
  2. 盗取されたキャッシュカードによる預金等の不正払戻しについては、顧客が他人に暗証番号を知らせた場合やキャッシュカード上に暗証番号を書き記していた場合など、顧客に重大な過失が認められる場合であっても、被害額の全額が補填される。
  3. 盗取されたキャッシュカードによる預金等の不正払戻しについて、補償の対象となる被害額は、やむを得ない特別の事情がある場合を除き、金融機関に対して盗取された旨の通知があった日から30日前の日以降において行われた不正払戻しの額とされる。
  1. 1つ
  2. 2つ
  3. 3つ
  4. 0(なし)

正解 1

問題難易度
肢154.1%
肢229.7%
肢36.1%
肢410.1%

解説

  1. 不適切。偽造キャッシュカードによる預金等の不正払戻しについては、金融機関が次のいずれかを立証した場合を除き、無権利者に対する払戻しは無効となります。
    • 預貯金者の故意
    • 預貯金者が重過失、かつ、金融機関が善意無過失
    本肢では過失の程度は明らかにされていません。しかし、偽造キャッシュカードの場合は払出しが有効(補償なし)になるか無効(全額補償)になるかの違いだけであって、そもそも割合的な補償はありません
    無効の場合は預貯金債権は消滅せず、預貯金者は金融機関に対して不正払戻し分についても払戻し請求をすることができるためです(預金者保護法4条)。一方、金融機関は不正払出しをした者に対して不当利得の返還等を求めることになります。
    盗取されたキャッシュカードによる預金の不正払戻しについては、預金者にカードや暗証番号の管理等について過失が認められない場合、被害額の全額が補償の対象となる。2025.9-24-b
    盗取されたキャッシュカードによる預金等の不正払戻しについては、顧客にカードや暗証番号の管理について過失(重大な過失を除く)が認められる場合、対象となる被害額の75%相当額が補償の対象となる。2018.9-24-2
  2. 不適切。盗難キャッシュカードによる預貯金等の不正払戻しがあった場合は、預貯金者の過失の有無等により補償額が以下のように変わります(預金者保護法5条1項~3項)。
    本問では、金融機関に過失はなく必要な要件を満たしているとあります。金融機関が善意無過失だとすると、預貯金者に重大な過失がある場合には「補償なし」となります。
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    偽造されたキャッシュカードによる預金の不正払戻しについては、預金者にカードや暗証番号の管理等について重大な過失が認められる場合であっても、被害額の全額が補償の対象となる。2025.9-24-a
    偽造されたキャッシュカードによる預金等の不正払戻しについては、顧客にカードや暗証番号の管理について過失(重大な過失を除く)が認められる場合であっても、対象となる被害額の全額が補償の対象となる。2018.9-24-1
  3. 適切。盗難キャッシュカードによる預貯金等の不正払戻しがあった場合、補償の対象となる被害額は、原則として、預貯金者が金融機関に対し盗取された旨の通知をした日の30日前の日(基準日)以降に発生した被害に限られます。盗難に気付けず通知できなかった等のやむを得ない事情があるときは、その期間分を30日に加算できます(預金者保護法5条6項)。ただし、盗取から2年以内が通知期限となります(預金者保護法7条)。
    盗取されたキャッシュカードによる預金の不正払戻しについては、原則として、預金者が盗取された旨を金融機関に通知した日から60日前の日以降に生じた被害額が補償の対象となるが、その通知を盗取された日から2年以内に行わない場合、被害額は補償されない。2025.9-24-c
    盗取されたキャッシュカードによる預金等の不正払戻しについて、補償の対象となる被害額は、やむを得ない事情がある場合を除き、金融機関に対して盗取された旨の通知があった日から60日前の日以降において行われた不正払戻しの額とされる。2018.9-24-3
したがって適切なものは「1つ」です。