FP1級過去問題 2022年9月学科試験 問15

問15

会社役員賠償責任保険(D&O保険)の一般的な特徴に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  1. 会社役員賠償責任保険は、被保険者である会社役員が役員の業務の遂行に起因して保険期間中に損害賠償請求を受けた場合に、法律上の損害賠償責任を負うことによって被る損害に備えることができる。
  2. 会社役員賠償責任保険の補償の対象となる損害賠償金には、判決に基づく損害賠償金や和解金のほか、罰金、課徴金、懲罰的損害賠償金も含まれる。
  3. 株式会社が会社役員賠償責任保険の契約内容を決定するためには、株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)の決議が必要である。
  4. 会社役員賠償責任保険の株主代表訴訟敗訴時担保部分に係る保険料を、会社が一定の手続を経て会社法上適法に負担した場合、当該保険料について、役員個人に対する経済的利益の供与はなく、役員個人に対する給与課税は行われない。

正解 2

問題難易度
肢12.7%
肢274.5%
肢315.6%
肢47.2%

解説

  1. 適切。会社役員は会社法等で定められる多くの義務を負っており、業務遂行上これらの義務に違反してしまうと、株主や取引先または第三者から訴訟を起こされるリスクがあります。会社役員賠償責任保険(D&O保険)は、法人が契約者となりこれらのリスクに備えることができる保険です。
    労働災害総合保険のうち、使用者賠償責任保険は、被用者が業務の遂行に起因して第三者に損害を与え、使用者が法律上の損害賠償責任を負うことによって被る損害について保険金が支払われるものである。2021.5-15-3
  2. [不適切]。D&O保険の対象となる法律上の損害賠償金は、判決に基づく損害賠償金や和解金といった法律上の損害賠償金や訴訟・争訟費用であり、罰金・課徴金・懲罰的損害賠償金等は補償対象外になります。
  3. 適切。会社役員賠償責任保険契約の内容を決定する場合には、会社法の定めにより、株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)の決議によらなければなりません(会社法430条の3)。
  4. 適切。D&O保険は、役員が損害賠償責任を追及された場合に、会社が当該損害保険や争訟費用を補償するものです。役員が代表訴訟に敗訴した場合に損害賠償金と争訟費用を担保する特約では、役員が会社財産に対して実質的に求償することから、役員個人と会社との間で利益相反類似の関係があります。このため、株主代表訴訟敗訴時担保部分の特約保険料を会社負担とし、役員個人に対する給与と認定されないためには、①会社法に定める株主総会(取締役会設置会社においては取締役会)の承認、②社外取締役の同意の2つの手続きが必要です。
したがって不適切な記述は[2]です。