FP1級 2022年9月 応用編 問53

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 Aさん(61歳)は、夫Bさん(64歳)との2人暮らしである。大学卒業後、X株式会社(以下、「X社」という)に入社し、X社に勤務する夫Bさんと結婚後、一時、育児のために離職していたがX社に再就職し、現在に至っている。X社は65歳定年制を採用しており、Aさんは65歳まで勤務する予定である。
 Aさんには、62歳から特別支給の老齢厚生年金が支給されるが、在職老齢年金により年金が支給停止されることがあると聞き、その仕組みを知りたいと思っている。また、夫Bさんが2022年10月に65歳となりX社を定年退職するので、退職後の公的医療保険について自分の被扶養者とすることができるのか知りたいと思っている。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。

〈Aさんの家族に関する資料〉
  1. Aさん(本人)
    • 1960年11月26日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1980年11月から1983年3月までの大学生であった期間(29月)は国民年金に任意加入していない。
      1983年4月から1986年5月まで厚生年金保険の被保険者である。
      1986年6月から1990年3月まで国民年金の第3号被保険者である。
      1990年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である。
      厚生年金保険の被保険者期間において厚生年金基金の加入期間はない。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
    • 1990年4月から現在に至るまで雇用保険の一般被保険者である。
  2. Bさん(夫)
    • 1957年10月3日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1977年10月から1980年3月までの大学生であった期間(30月)は国民年金に任意加入していない。
      1980年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である。
      厚生年金保険の被保険者期間において厚生年金基金の加入期間はない。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
    • 1980年4月から現在に至るまで雇用保険の一般被保険者である。
    • 1986年7月20日生まれ
    • 結婚しており、Aさん夫妻とは生計を別にしている。
  • 夫Bさんは、Aさんと同居し、現在および将来においても、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
  • Aさんと夫Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問53

Mさんは、Aさんに対して、夫Bさんが2023年10月末日付けでX社を退職した場合の公的医療保険について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~⑥に入る最も適切な数値または記号を、解答用紙に記入しなさい。なお、空欄②に入る最も適切な語句は、下記の〈空欄②の選択肢〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

 「夫Bさんが、Aさんが加入する健康保険の被扶養者になるためには、主としてAさんにより生計を維持されていることが必要です。夫Bさんの年間収入が()万円未満でAさんの年間収入の2分の1未満である場合は、生計を維持しているものと認められます。なお、公的年金や失業等給付による収入は()。
 夫Bさんが、健康保険の被扶養者とならない場合、夫Bさんが加入する健康保険の任意継続被保険者となるか、国民健康保険の被保険者となります。
 健康保険の任意継続被保険者となるためには、原則として退職日の翌日から()日以内に、夫Bさんの住所地を管轄する全国健康保険協会の都道府県支部で資格取得の申出を行う必要があります。任意継続被保険者の保険料は、原則として、退職時の標準報酬月額に所定の保険料率を乗じた額となり、その全額が自己負担となります。ただし、2023年度において、退職時の標準報酬月額が()万円を超えていた場合は、標準報酬月額を()万円として算出した保険料となります。任意継続被保険者として健康保険に加入を継続することができる期間は、最長2年間です。
 国民健康保険の被保険者となる場合は、原則として退職日の翌日から()日以内に、夫Bさんの住所地の市町村(特別区を含む、以下、「市町村」という)で手続する必要があります。保険料は各市町村の条例により、均等割、平等割、所得割、資産割の一部または全部の組合せによって決定されます。保険料には上限が定められており、2023年度の賦課限度額は、65歳以上の場合は年間()万円です」

〈空欄②の選択肢〉
  1. 年間収入に含まれます
  2. 2分の1が年間収入に含まれます
  3. 年間収入に含まれません
万円
万円
万円

正解 

① 180(万円)
② イ
③ 20(日)
④ 30(万円)
⑤ 14(日)
⑥ 87(万円)

分野

科目:A.ライフプランニングと資金計画
細目:4.社会保険

解説

〔①、②について〕
健康保険の扶養認定は、主に被保険者との親族関係、収入要件および生計維持要件で判定されます。
親族関係
被保険者の3親等内の親族であること
配偶者(内縁関係含む)、直系尊属、子、孫、兄弟姉妹以外の人は被保険者と同居していること
生計維持要件
年間収入が130万円(60歳以上または障害年金受給者の場合は180万円)未満であること
同居の場合、被保険者の年間収入の2分の1未満であること
別居の場合、被保険者からの仕送り額未満であること
扶養認定における年間収入には、課税・非課税を問わず、継続的に得られる収入を包括的に含むので、障害年金・障害年金、雇用保険の失業給付、恩給等も年間収入に含まれます。
よって、①は180(万円)、②はの「年間収入に含まれます」が正解となります。

〔③について〕
任意継続被保険者となるには、資格喪失日(退職日の翌日等)から20日以内に、退職前の健康保険協会・組合に対して加入手続きをすることが要件になります。
よって、正解は20(日)となります。

〔④について〕
任意継続被保険者の標準報酬月額は、以下の2つの金額のうち少ない額となります。
  • 任意継続加入者になった直前の標準報酬月額
  • 健康保険協会・組合の全被保険者の標準報酬月額を平均した額
2023年度における協会けんぽの標準報酬月額を平均した額は30万円なので、Aさんの退職時の標準報酬月額が30万円を超えていたときには、30万円を標準報酬月額として保険料が計算されます。
よって、正解は30(万円)となります。

〔⑤について〕
会社を退職して国民健康保険の被保険者となるときは、退職日の翌日から14日以内に市町村(特別区を含む、以下同じ)で加入手続きをしなければなりません。
よって、正解は14(日)となります。

〔⑥について〕
国民健康保険の保険料は、基礎賦課額、後期高齢者支援金等賦課額、介護納付金賦課額の合計であり、それぞれの賦課額は、市町村の条例より所得割、均等割、平等割、資産割を組み合わせた方法で算定されます。
各賦課額には法定の限度額があり、2023年度は基礎賦課額65万円、後期高齢者支援金等賦課額22万円、介護納付金賦課額17万円です。65歳未満の人は介護納付金賦課額もいっしょに徴収されるため年間の賦課限度額は「65万円+22万円+17万円=104万円」ですが、65歳以上になると介護保険料が公的年金から特別徴収されるため、65歳以上の場合、介護納付金賦課額を除いた「65万円+22万円=87万円」が年間の賦課限度額です。
よって、正解は87(万円)となります。