FP1級 2022年9月 応用編 問56

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 Aさん(35歳)は、資産形成のために投資信託Yと投資信託Zについて長期保有するつもりで投資しており、さらに余裕資金を活用して上場株式への投資を検討している。
 Aさんは、東京証券取引所に上場している同業種のW社とX社について、〈W社とX社の財務データ〉を参考にして投資判断を行うつもりであるが、上場株式への投資にあたり、株式取引の基本的な仕組みを確認しておきたいと思っている。
 また、保有している投資信託について、〈直近1年間の投資信託Yと投資信託Zに関するデータ〉によるパフォーマンス評価を知りたいと思っている。なお、Aさんが保有する投資信託は、いずれも日経平均株価をベンチマークとするアクティブ運用の投資信託である。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

〈W社とX社の財務データ〉(単位:百万円)
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〈直近1年間の投資信託Yと投資信託Zに関するデータ〉
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  • 投資信託Yおよび投資信託Zは、日経平均株価をベンチマークとするアクティブ運用の投資信託である。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問56

Mさんは、Aさんに対して、《設例》の〈直近1年間の投資信託Yと投資信託Zに関するデータ〉に基づいて、投資信託のパフォーマンスについて説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、②および③については、小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。

  1. 「トラッキング・エラーとは、ポートフォリオの収益率とベンチマークの収益率との差(超過収益率)のバラツキ度合いを表したもので、通常、()で測定します。この数値が大きいほど、ポートフォリオの収益率の動きがベンチマークの収益率から乖離していたことを示します。パッシブ運用の投資信託の場合、0(ゼロ)に近いほど連動性が高い運用がなされていたと判断できます」
  2. 「アクティブ運用である投資信託Yと投資信託Zを比較すると、シャープ・レシオの値は投資信託Yが()、投資信託Zが□□□であり、投資信託Yのほうが効率的な運用であったといえます。また、インフォメーション・レシオの値は投資信託Yが□□□、投資信託Zが()であり、()のほうが効率的な運用であったといえます」
 
 
 
 

正解 

① 標準偏差
② 0.68
③ 0.19
④ 投資信託Y

分野

科目:C.金融資産運用
細目:3.投資信託

解説

〔①について〕
トラッキング・エラーは、主にインデックスファンドを評価に用いられる指標で、ポートフォリオの収益率がベンチマークとする指標からどの程度ズレていたかを示します。トラッキング・エラーが小さいほど、ベンチマークに正確に追従している優れた運用だということができます。トラッキング・エラーは、ポートフォリオのリターンとベンチマークのリターンの標準偏差として表されます。
よって、正解は標準偏差となります。

〔②について〕
シャープ・レシオは、ポートフォリオの超過収益率を標準偏差で除して求めます。

 シャープ・レシオ=ポートフォリオの収益率-安全資産利子率標準偏差

投資信託Yの収益率は14.5%、標準偏差は20%、安全資産利益率は1%ですから、

 14.5-120=0.675
(小数点以下第3位四捨五入)0.68

よって、正解は0.68となります。

〔③について〕
インフォメーション・レシオは、主にアクティブ運用の評価に用いられる指標で、ポートフォリオとベンチマークの収益率の差(アクティブリターン)を得るためにどの程度効率的だったかを示します。インフォメーション・レシオは以下の式で求めます。

 インフォメーション・レシオ=ポートフォリオの収益率-ベンチマークの収益率トラッキング・エラー

投資信託Zの収益率は11.5%、ベンチマークとする日経平均株価の収益率は10%、両者のトラッキング・エラーは8%ですから、

 11.5%-10%8%=0.1875
(小数点以下第3位四捨五入)0.19

よって、正解は0.19となります。

〔④について〕
投資信託Yの収益率は14.5%、ベンチマークとする日経平均株価の収益率は10%、両者のトラッキング・エラーは12%ですから、

 14.5%-10%12%=0.375

インフォメーション・レシオは、シャープ・レシオと同様に、値が大きいほどリスクに対して大きな収益が得られたことになり、効率的な運用だということができます。したがって、値が大きい投資信託Yのほうが効率的だったと評価できます。
よって、正解は投資信託Yとなります。