FP1級過去問題 2023年1月学科試験 問21

問21

デリバティブを活用したリスクヘッジに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 外貨建債券を発行する日本国内の事業会社が、将来の円安による償還負担の増加をヘッジするために、債券の償還日に合わせて外貨売り/円買いの為替予約を行った。
  2. 多くの銘柄の国内上場株式を保有している個人投資家が、国内株式市場における全体的な株価の下落をヘッジするために、TOPIX先物の買建てを行った。
  3. 大量の固定利付国債を保有する銀行が、 今後の金利上昇リスクをヘッジするために、長期国債先物の買建てを行った。
  4. 継続的に米ドルの支払が発生する日本国内の輸入業者が、将来の円安による支払額の増加をヘッジするために、外貨固定金利受取り/円固定金利支払のクーポン・スワップを行った。

正解 4

問題難易度
肢117.1%
肢29.0%
肢322.5%
肢451.4%

解説

  1. 不適切。外貨建て債券を発行する国内企業では、償還時に円安になっていると、外貨で支払う償還金の負担が増します。このリスクを回避するには、あらかじめ外貨を決まった価格で買う(円を決まった価格で売る)ことを確定しておけばよいので、外貨買い/円売りの為替予約をするのが適切となります。
  2. 不適切。買い建てた場合には転売して決済し、売り建てた場合には買い戻して決済をします。TOPIX先物1枚を2,000円で買い建てたとして、将来1,900円に下落していた場合には、2,000円で買ったものを1,900円で売るので100円の損失が出てしまいます。逆にTOPIX先物1枚を2,000円で売り建てておけば、2,000円で売ったものを1,900円で買うことができるので100円の利得になります。このように今後相場が上昇すると見込んだときには先物を買い建て、下落すると見込んだときには売り建てるのが基本です。
    多くの銘柄の国内上場株式を保有している投資家に対して、国内株式市場における全体的な株価の下落に対するヘッジとして、TOPIX先物の買建てを提案した。2021.5-22-1
    多数の上場株式の銘柄を保有している投資家に対して、株価の全般的な下落に対するヘッジとして、TOPIX先物の買建てを提案した。2014.1-24-4
  3. 不適切。金利が上昇すると、既発債の価格は下がることになります。将来価格が下がることが予想される場合は、同じ商品の先物を売り建てるのが適切なリスクヘッジです。将来下がった価格で買い戻すことにより利益が出るので、価格低下の損失の影響を小さくすることができます。
  4. [適切]。クーポンスワップは、一定期間の利息を交換する取引です。外貨固定金利受取り/円固定金利支払ということは、外貨での金利を受け取る代わりに円の金利を支払う取引になります。円安/米ドル高になると、米ドルを通貨とする国の金利が上がるとともに、外貨で受け取る金利は円貨でより高く換算されるため、外貨固定金利受取り/円固定金利支払のクーポン・スワップをしていれば利益が期待できます。このため、円安による支払額の増加をヘッジするための戦略として有効です。
したがって適切な記述は[4]です。