FP1級過去問題 2023年5月学科試験 問22

問22

ポートフォリオ理論に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. ポートフォリオのリスクには、アンシステマティックリスク(非市場リスク)とシステマティックリスク(市場リスク)があり、最適ポートフォリオにおいては、システマティックリスク(市場リスク)がゼロとなる。
  2. 資産Aと資産Bの共分散は、資産Aと資産Bの相関係数を、資産Aの標準偏差および資産Bの標準偏差で除して算出することができる。
  3. 効率的フロンティア上のポートフォリオは、同じリスクのポートフォリオのなかで最も期待収益率が高くなる。
  4. 収益率の散らばりが正規分布していると仮定すると、期待収益率が年率10%、標準偏差が年率20%の場合、約99.7%の確率で将来の収益率が年率-30%から50%の範囲に収まるとされる。

正解 3

問題難易度
肢110.6%
肢219.1%
肢354.7%
肢415.6%

解説

  1. 不適切。ポートフォリオのリスクには、非市場リスク(アンシステマティック・リスク)と市場リスク(システマティック・リスク)があります。
    市場リスク(システマティック・リスク)
    分散投資によっても消去できない市場全体のリスク。マーケットリスク、分散不能なリスクとも呼ばれる
    非市場リスク(アンシステマティック・リスク)
    分散投資によって消去できるリスク。個別リスク、ユニークリスク、分散可能なリスクとも呼ばれる
    分散投資をして最適ポートフォリオを組んでも、市場リスク(市場全体の値動きの影響)をゼロにすることはできません。
  2. 不適切。相関係数、共分散および2資産の標準偏差の間には次の関係があります。

     相関係数=共分散資産Aの標準偏差×B資産の標準偏差

    この式を共分散について解く式に変換すると、

     共分散=相関係数×資産Aの標準偏差×B資産の標準偏差

    資産Aと資産Bの共分散は、資産Aと資産Bの相関係数に、資産Aの標準偏差および資産Bの標準偏差を乗じることで求めます。
    資産Aと資産Bの相関係数は、資産Aと資産Bの共分散を、資産Aの標準偏差と資産Bの標準偏差を掛け合わせた値で除して算出することができる。2024.9-22-4
  3. [適切]。効率的フロンティアとは、危険資産を組み合わせたポートフォリオの中で、同じリスクで最大のリターンを獲得できるポートフォリオの集合のことをいいます。縦軸にリターン、横軸にリスクをとったグラフ上において、曲線で「く」の字型の曲線で表されます。
  4. 不適切。正規分布とは、「平均値±標準偏差」の範囲に全体の約68.3%、「平均値±標準偏差×2」の範囲に全体の約95.5%、「平均値±標準偏差×3」の範囲に全体の約99.7%が含まれる確率分布です。
    収益率の変動が正規分布に従うと仮定した場合、次のような確率分布となります。
    約68.3%で「平均値±標準偏差」の範囲に収まる
    10+20[%] ⇒ -10%~+30%
    約95.5%で「平均値±標準偏差×2」の範囲に収まる
    10+20×2[%] ⇒ -30%~+50%
    約99.7%で「平均値±標準偏差×3」の範囲に収まる
    10+20×3[%] ⇒ -50%~+70%
    上記より、将来の収益率が「年率-30%から50%の範囲」に収まるのは「約95%の確率」であるといえます。
したがって適切な記述は[3]です。