FP1級過去問題 2023年5月学科試験 問27

問27

居住者に係る所得税の譲渡所得の基因となる資産の「取得の日」に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 借地権者が、その借地権の設定されている土地の所有権(底地)を取得した場合、借地権の部分と底地の部分とに区分し、それぞれ「取得の日」を判定する。
  2. 配偶者居住権を有する居住者が、当該配偶者居住権の目的となっている家屋を取得した場合、その「取得の日」は、配偶者居住権を取得した日となる。
  3. 工務店に請け負わせて建築した家屋の「取得の日」は、当該家屋の建築が完了した日となる。
  4. 限定承認によって取得した資産の「取得の日」は、被相続人が当該資産を取得した日となる。

正解 1

問題難易度
肢141.5%
肢218.0%
肢313.2%
肢427.3%

解説

  1. [適切]。借地権者が借地権の目的となっていた底地の所有権を取得した場合、その「取得の日」は借地権の部分と底地の部分と分けて判定します。具体的には、借地権の「取得の日」は借地権が設定された日に、底地の「取得の日」は底地の引渡し日となります(所基通33-10)。
    ※納税者の選択により、契約の効力発生日を取得の日とすることも可能です。
  2. 不適切。配偶者居住権を有する居住者が、その権利の目的となっている建物またはその敷地である土地等を取得した場合、その「取得の日」はその建物や土地等を取得した日となります(措法通31・32共-8)。配偶者居住権等を有していた期間があるとしても、当該建物または当該土地等の取得は配偶者居住権等の取得とは直接の関係がないからです。
  3. 不適切。他人に請け負わせて建築等した資産については、資産の引渡しを受けた日が「取得の日」になります(所基通33-9)。建築完了日が「取得の日」になるのは、自ら建築等した場合です。
  4. 不適切。相続や遺贈により取得した場合には、被相続人の取得日を引き継ぐのが原則ですが、限定承認で取得した資産は、相続開始時点が「取得の日」となります(所得税法59条)。限定承認が行われた場合、相続開始時点で被相続人から相続人に対して資産の譲渡があったとみなされ、譲渡課税される税制となっているためです。
    【参考】なぜ限定承認だけという疑問ですが、限定承認では被相続人の債務の限度で資産を引き継ぐという性質を有します。被相続人の所有期間中に値上がりした部分に対する譲渡課税を将来の相続人が負担すると、場合によっては相続財産の限度を超えて、相続人の固有財産から納付しなければならない事態にもなりかねません。これでは限定承認制度が設けられた趣旨から外れるため、限定承認では相続時に譲渡があったものとして被相続人の所有期間中に対応する譲渡益を一旦精算することになっています。
したがって適切な記述は[1]です。