FP1級 2023年9月 応用編 問61

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 Aさん(50歳)が所有している甲土地とその土地上の家屋は、昨年、父親の相続により取得したものであり、先日、相続税を納付した。甲土地上の家屋に父親が1人で居住していたが、Aさんは既に自宅を所有しているため、相続した家屋は空き家となっており、今後も移り住む予定はない。
 相続した家屋は築45年で老朽化が進んでいることから、Aさんは、家屋を取り壊して甲土地を譲渡するか、あるいは甲土地上に賃貸マンションを建築することを検討している。
 甲土地の概要は、以下のとおりである。

〈甲土地の概要〉
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  • 甲土地は352㎡の長方形の土地であり、第一種中高層住居専用地域に属する部分は224㎡、第一種低層住居専用地域に属する部分は128㎡である。
  • 幅員3mの公道は、建築基準法第42条第2項により特定行政庁の指定を受けた道路である。また、3m公道の甲土地の反対側は川である。
  • 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
  • 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問61

甲土地上に耐火建築物を建築する場合、次の①および②に答えなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は㎡表示とすること。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。

  1. 建蔽率の上限となる建築面積はいくらか。
  2. 容積率の上限となる延べ面積はいくらか。

正解 

① 219(㎡)
② 624(㎡)

分野

科目:E.不動産
細目:3.不動産に関する法令上の規制

解説

まず、甲土地は2項道路(東側の3m道路)に接しているためセットバックについて考慮する必要があります。
道路の反対側は川であることから、反対側の道路境界線から4mの線まで後退することとなり、甲土地の東側1mがセットバック部分になります。このため、建蔽率・容積率の算定上に用いる敷地面積の計算に当たっては横幅を「16m-1m=15m」とみなします。したがって、第一種中高層地域に属する部分は「14m×15m=210㎡」、第一種低層地域に属する部分は「8m×15m=120㎡」となります。

〔①について〕
建築物が建蔽率の異なる複数の用途地域にまたがって建築される場合、各用途地域ごとに「敷地面積×建蔽率」で建築面積を求め、その合計が敷地全体の建築面積の限度となります。

建築面積の計算では建蔽率の緩和を考慮する必要があります。
本問の建物は準防火地域と防火規制なしの地域にまたがって建築されるので、建築物全体が厳しいほうの準防火地域に存するとみなして規制が適用されます。そうなると"準防火地域内の耐火建築物等"に該当するため+10%の緩和を受けられます。指定角地ではないので角地の緩和はありません。

用途地域ごとに分けて建築面積の限度を計算し、それを合計します。
第一種中高層地域に属する部分
210㎡×(60%+10%)=147㎡
第一種低層地域に属する部分
120㎡×(50%+10%)=72㎡
建蔽率の上限となる建築面積
147㎡+72㎡=219㎡
よって、正解は219(㎡)になります。

〔②について〕
建築物が容積率の異なる複数の用途地域にまたがって建築される場合、各用途地域ごとに「敷地面積×容積率」で延べ面積を求め、その合計が敷地全体の延べ面積の限度となります。また、容積率には前面道路の幅員による制限があり、前面道路の幅員が12m未満の場合、以下の2つのうち小さい方の制限が適用されます。
  • 都市計画で定められた容積率(指定容積率)
  • 前面道路の幅員×法定乗数
敷地が2以上の道路に面している場合、幅員が最大のものが前面道路となるので、本問では6m道路が前面道路です。

用途地域ごとに分けて延べ面積の限度を計算し、それを合計します。
第一種中高層地域に属する部分
容積率:300%>6m×0.4=240% ∴240%
210㎡×240%=504㎡
第一種低層地域に属する部分
容積率:100%<6m×0.4=240% ∴100%
120㎡×100%=120㎡
容積率の上限となる延べ面積
504㎡+120㎡=624㎡
よって、正解は624(㎡)になります。