FP1級 2023年9月 応用編 問62
Aさん(50歳)が所有している甲土地とその土地上の家屋は、昨年、父親の相続により単独で取得したものであり、先日、相続税を納付した。甲土地上の家屋に父親が1人で居住していたが、Aさんは既に自宅を所有しているため、相続した家屋は空き家となっており、今後も移り住む予定はない。
相続した家屋は築45年で老朽化が進んでいることから、Aさんは、家屋を取り壊して甲土地を譲渡するか、あるいは甲土地上に賃貸マンションを建築することを検討している。
甲土地の概要は、以下のとおりである。
〈甲土地の概要〉
相続した家屋は築45年で老朽化が進んでいることから、Aさんは、家屋を取り壊して甲土地を譲渡するか、あるいは甲土地上に賃貸マンションを建築することを検討している。
甲土地の概要は、以下のとおりである。
〈甲土地の概要〉
- 甲土地は352㎡の長方形の土地であり、第一種中高層住居専用地域に属する部分は224㎡、第一種低層住居専用地域に属する部分は128㎡である。
- 幅員3mの公道は、建築基準法第42条第2項により特定行政庁の指定を受けた道路である。また、3m公道の甲土地の反対側は川である。
- 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
- 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
- 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
問62
Aさんが、相続した家屋を取り壊し、以下の〈条件〉でその敷地である甲土地を譲渡した場合、次の①~③に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。なお、譲渡所得以外の所得や所得控除等は考慮しないものとする。- 「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」の適用を受けた場合の課税長期譲渡所得金額はいくらか。
- 「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」(相続税の取得費加算の特例)の適用を受けた場合の課税長期譲渡所得金額はいくらか。
- 上記①で求めた金額と上記②で求めた金額のいずれか低い金額に係る所得税額、復興特別所得税額および住民税額の合計額はいくらか。
〈譲渡資産(甲土地)に関する資料〉
- 譲渡資産の譲渡価額
- 4,900万円
- 譲渡資産の所有期間
- 45年
- 譲渡資産の取得費
- 不明
- 譲渡費用
- 900万円(家屋の取壊し費用、仲介手数料等)
- 相続人
- Aさん(ほかに相続人はいない)
- 甲土地の相続税評価額
- 3,600万円
(甲土地以外に相続した土地等はない) - Aさんの相続税の課税価格
- 7,900万円
(債務控除100万円を控除した後の金額。相続時精算課税の適用はない) - Aさんが納付した相続税額
- 660万円
(贈与税額控除、相次相続控除は受けていない)
①円 |
②円 |
③円 |
正解
① 7,550,000(円) 49,000,000円-(49,000,000円×5%+9,000,000円)=37,550,000円 37,550,000円-30,000,000円=7,550,000円 |
② 34,580,000(円) 6,600,000円×36,000,000円79,000,000円+1,000,000円=2,970,000円 49,000,000円-(49,000,000円×5%+2,970,000円+9,000,000円)=34,580,000円 |
③ 1,533,700(円) 7,550,000円×15%=1,132,500円
1,132,500円×2.1%=23,782.5円 1,132,500円+23,782.5円=1,156,200円(100円未満切捨て) 7,550,000円×5%=377,500円 1,156,200円+377,500円=1,533,700円 |
分野
科目:E.不動産細目:5.不動産の譲渡に係る税金
解説
〔①について〕
空き家に係る特別控除は、被相続人が住んでいた家屋(1981年5月31日以前築に限る)とその敷地を相続し、耐震改修をして家屋と土地をセットで売るか、家屋を取り壊して土地を売った場合に、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。なお、2024年1月1日以降に行う譲渡で、被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋を相続または遺贈で取得した相続人が3人以上の場合は、控除限度額が2,000万円になります。
譲渡所得は「収入金額-(取得費+譲渡費用)」で求めるので、各要素を整理します。
4,900万円-(245万円+900万円)=3,755万円
Aさんは単独で取得したとあり、空き家特例により上記の金額から3,000万円が控除されるので、
3,755万円-3,000万円=755万円
よって、正解は7,550,000(円)となります。
〔②について〕
相続税の取得費加算の特例は、相続税の申告期限後3年以内に相続財産を譲渡した場合に、譲渡人が納付した相続税額のうち譲渡資産に対応する部分の額を譲渡所得の計算上の取得費に加算できる特例です。相続では被相続人の取得費を引き継ぐことから、相続した財産を近い時期に譲渡した場合、キャピタルゲインに対して相続税と所得税で2回課税される弊害を緩和するための措置です。
取得費として加算できるのは、Aさんが納付した相続税額のうち甲土地に対応する部分です。対応する部分の割合は、相続税の課税価格に算入された金額をベースにして求めるので、分母としては債務控除前の金額、土地は「小規模宅地等の評価減の特例」適用後の金額を使います。したがって、加算できる取得費は、
660万円×3,600万円8,000万円=297万円
①の譲渡所得の計算と比べると、取得費が「245万円+297万円=542万円」に増えることだけが異なるので、取得費加算の特例を受けた場合の課税長期譲渡所得金額は、
4,900万円-(542万円+900万円)=3,458万円
よって、正解は34,580,000(円)となります。
〔③について〕
2つを比べると①のほうが譲渡所得が低くなるので、課税長期譲渡所得金額は755万円を使います。
相続では被相続人の取得時期を引き継ぐので、所有期間は45年です。所有期間5年を超える土地建物の譲渡所得は長期譲渡所得に該当し、所得税15%、復興特別所得税0.315%(所得税額に対して2.1%)、住民税5%の税率で課税されます。
空き家に係る特別控除は、被相続人が住んでいた家屋(1981年5月31日以前築に限る)とその敷地を相続し、耐震改修をして家屋と土地をセットで売るか、家屋を取り壊して土地を売った場合に、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。なお、2024年1月1日以降に行う譲渡で、被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋を相続または遺贈で取得した相続人が3人以上の場合は、控除限度額が2,000万円になります。
譲渡所得は「収入金額-(取得費+譲渡費用)」で求めるので、各要素を整理します。
- 収入金額 譲渡価額の4,900万円
- 取得費(不明なので概算取得費)4,900万円×5%=245万円
- 譲渡費用 900万円
4,900万円-(245万円+900万円)=3,755万円
Aさんは単独で取得したとあり、空き家特例により上記の金額から3,000万円が控除されるので、
3,755万円-3,000万円=755万円
よって、正解は7,550,000(円)となります。
〔②について〕
相続税の取得費加算の特例は、相続税の申告期限後3年以内に相続財産を譲渡した場合に、譲渡人が納付した相続税額のうち譲渡資産に対応する部分の額を譲渡所得の計算上の取得費に加算できる特例です。相続では被相続人の取得費を引き継ぐことから、相続した財産を近い時期に譲渡した場合、キャピタルゲインに対して相続税と所得税で2回課税される弊害を緩和するための措置です。
取得費として加算できるのは、Aさんが納付した相続税額のうち甲土地に対応する部分です。対応する部分の割合は、相続税の課税価格に算入された金額をベースにして求めるので、分母としては債務控除前の金額、土地は「小規模宅地等の評価減の特例」適用後の金額を使います。したがって、加算できる取得費は、
660万円×3,600万円8,000万円=297万円
①の譲渡所得の計算と比べると、取得費が「245万円+297万円=542万円」に増えることだけが異なるので、取得費加算の特例を受けた場合の課税長期譲渡所得金額は、
4,900万円-(542万円+900万円)=3,458万円
よって、正解は34,580,000(円)となります。
〔③について〕
2つを比べると①のほうが譲渡所得が低くなるので、課税長期譲渡所得金額は755万円を使います。
相続では被相続人の取得時期を引き継ぐので、所有期間は45年です。所有期間5年を超える土地建物の譲渡所得は長期譲渡所得に該当し、所得税15%、復興特別所得税0.315%(所得税額に対して2.1%)、住民税5%の税率で課税されます。
- 所得税等
- 所得税 7,550,000円×15%=1,132,500円
復興特別所得税 1,132,500円×2.1%=23,785.5円
小計 1,132,500円+23,785.5円=1,156,200円(100円未満切捨て) - 住民税
- 7,550,000円×5%=377,500円
- 合計
- 1,156,200円+377,500円=1,533,700円
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