FP1級過去問題 2024年1月学科試験 問24

問24

金融商品取引に係るセーフティネットに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされている要件等はすべて満たしているものとする。
  1. 証券会社に預け入れた信用取引に係る委託保証金および委託保証金の代用有価証券は、投資者保護基金の補償対象となる。
  2. 銀行で購入した投資信託は、投資者保護基金の補償対象となる。
  3. 農業協同組合(JA)に預け入れた当座貯金や無利息普通貯金などの決済用貯金は、その預入金額の多寡にかかわらず、全額が農水産業協同組合貯金保険制度の保護の対象となる。
  4. 預金保険制度で保護される預金等の額の算定にあたり、金融機関の破綻後に複数の預金口座を有する預金者が死亡した場合、当該預金者の相続人の預金等としてではなく、死亡した預金者の預金等として名寄せされる。

正解 2

問題難易度
肢19.2%
肢273.2%
肢39.9%
肢47.7%

解説

  1. 適切。信用取引を行うために証券会社に差し入れた委託保証金や代用有価証券は、投資者保護基金の補償対象になります。これらも証券会社が投資家から預かっている資産だからです。ただし、貸借取引において証券会社から融資を受けるための担保である金銭や有価証券は補償対象外になります。
  2. [不適切]。補償対象となりません。投資者保護基金に加入できるのは証券会社に限られるため、銀行など証券会社以外の金融機関で購入した投資信託は投資者保護基金で補償されません。
  3. 適切。預金保険制度は銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、信金中央金庫、全国信用協同組合連合会、労働金庫連合会、商工組合中央金庫の預金を保護対象としているので、農業協同組合の貯金はカバーしていません。しかし、農業協同組合、漁業協同組合、農林中央金庫等にも預金保険制度と同等の「農水産業協同組合貯金保険制度」があり、決済用貯金は全額が保護されます。
    農業協同組合に預け入れた当座貯金や無利息普通貯金などの決済用貯金は、その預入金額の多寡にかかわらず、全額が農水産業協同組合貯金保険制度の保護の対象となる。2018.1-23-3
  4. 適切。預金者である被相続人の死亡と金融機関の破綻の先後、および遺産分割の有無により名寄せの方法が変わります。本肢のように破綻後に死亡した場合は、被相続人の預金として名寄せされます。
    破綻前に被相続人が死亡した場合
    遺産分割協議が成立している場合、被相続人の預金は各相続人の預金として分割して名寄せされる。未分割の場合、一旦は各相続人自身の預金のみで名寄せされ、分割後に被相続人の預金を含めて再度名寄せが行われる
    破綻後に被相続人が死亡した場合
    被相続人の預金として名寄せされる
    相続開始前の破綻では、破綻時において預貯金債権は被相続人に帰属するので被相続人名義で名寄せされます。相続が開始すると、預貯金債権は遺産分割の成立までは相続人の共有となるので、相続開始後の破綻では相続人名義で名寄せされるということです。
    預金保険制度で保護される預金等の額の算定にあたり、金融機関の破綻後に死亡した被相続人の預金については、その相続人が当該金融機関に有する他の預金等と合算される。2019.9-24-4
    預金保険制度で保護される預金等の額の算定にあたり、金融機関が破綻した日よりも前に相続が開始した被相続人の預金は、相続分が確定している場合、その相続人が当該金融機関に有する他の預金等と合算される。2016.1-23-4
したがって不適切な記述は[2]です。