FP1級過去問題 2024年1月学科試験 問25

問25

居住者の事業所得の金額の計算における棚卸資産の価額の評価方法等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  1. 製造業を営む者が、原価計算を行わないため半製品および仕掛品について製造工程に応じて製品売価の何%として評価する場合、その評価方法は、売価還元法に該当する。
  2. その年の前年12月31日における棚卸資産につき低価法により評価していた場合、その年の12月31日における棚卸資産の評価額の計算の基礎となるその棚卸資産の取得価額は、当該低価法による評価額ではなく、当該低価法の基礎として選定している原価法により評価した価額による。
  3. 売上原価に計上する棚卸資産の評価方法は、事業の種類ごと、棚卸資産の区分ごとに選定し、所轄税務署長に届け出るが、届出をしない場合は、最終仕入原価法が評価方法とされる。
  4. 販売用の棚卸資産を自家消費したときは、原則として、事業所得の金額の計算上、当該棚卸資産の販売価額の50%相当額を総収入金額に算入する。

正解 4

問題難易度
肢18.7%
肢214.8%
肢311.4%
肢465.1%

解説

  1. 適切。売価還元法は、棚卸資産を種類と利益率で区別し、各グループごとに販売価額の総額に原価率を乗じて評価額を算出する方法です(所得税法令99条)。自己が製造等した棚卸資産は、製造原価の合計を取得価額とするのが原則ですが、製造業において原価計算を行わない場合、半製品および仕掛品の期末評価を、原価率と製造進捗率に応じてその製品売価の●%とすることがあります。計算に製造進捗率が関与しますが売価と原価率の関係で求める点は同じなので このような製造業における評価方法も売価還元法に該当するとされています(所基通47-4)。
  2. 適切。低価法は、原価法で求めた取得価額と期末時点の時価の低いほうを棚卸資産の評価額とする方法です。前年に低価法で評価した場合であっても、その評価額が当該棚卸資産の翌年の取得価額となるわけではありません。原価法による評価額(帳簿価額)がそのまま翌年の取得価額(期首商品棚卸高)となります(所基通47-14)。
  3. 適切。棚卸資産の評価の方法を選定するときは、事業の種類ごと、資産の区分(商品または製品、半製品、仕掛品、主要原材料および補助原材料その他の棚卸資産)ごとに届け出なければなりません。白色申告(青色申告ではない)の場合は、原則的評価方法が最終仕入原価法で、あらかじめ税務署に届け出ていれば他の5種類の原価法(個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、売価還元法)を選定することができます(所得税法令102条)。青色申告者は上記に加えて「低価法」を選択することができます。
  4. [不適切]。50%ではありません。棚卸資産を自家消費した場合は、販売価額を総収入金額に算入するのが原則ですが、取得価額以上かつ販売価額の70%以上の額を総収入金額に算入しているときにはその金額とすることが認められています(所基通39-2)。
したがって不適切な記述は[4]です。