FP1級 2024年1月 応用編 問51

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 建設業を営むX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であるAさん(35歳)は、妻Bさん(35歳)、長男Cさん(8歳)および二男Dさん(3歳)との4人暮らしである。Aさんは高校卒業後、建設会社に就職したが、3年前に個人事業主として独立し、昨年、X社を設立した。X社は従業員数7名の会社であり、Aさん自身も現場で作業に従事していることから、Aさんは、自身がケガ等により障害を負った際に、社会保険制度から受けることができる給付について知りたいと思っている。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。

〈Aさんの家族に関する資料〉
  1. Aさん(本人)
    • 1988年11月17日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      2007年4月から2021年3月までの期間(168月)は、厚生年金保険の被保険者である(過去に厚生年金基金の加入期間はない)。
      2021年4月から2022年12月までの期間(21月)は、国民年金の第1号被保険者として保険料を納付している。
      2023年1月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
  2. Bさん(妻)
    • 1988年7月6日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      2007年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
    • 2007年4月から現在に至るまで雇用保険の一般被保険者である。
  3. Cさん(長男)
    • 2015年9月5日生まれ
  4. Dさん(二男)
    • 2020年3月17日生まれ
  • 妻Bさん、長男Cさんおよび二男Dさんは、Aさんと同居し、Aさんによって生計を維持されているものとする。
  • 妻Bさん、長男Cさんおよび二男Dさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問51

Mさんは、Aさんに対して、労働者災害補償保険(以下、「労災保険」という)について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~⑥に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

  1. 〈特別加入〉
     「労災保険の特別加入の対象となる中小事業主等は、業種ごとに定められた数以下の労働者を常時使用する個人事業主または法人の代表者等です。
     中小事業主等が特別加入するには、使用する労働者について労災保険の保険関係が成立していること、労働保険の事務処理を()に委託していること等の要件を満たし、申請書を所轄の労働基準監督署長を経由して所轄の()に提出する必要があります。加入が承認されると、保険給付は、原則として、労働者と同様に行われます」
  2. 〈保険給付〉
     「労災保険では、業務上の事由による傷病により療養を必要とするとき、社会復帰促進事業として設置された病院や()の指定する病院等で、療養補償給付として療養の給付を受けることができます。
     特別加入者は、業務上の事由による傷病の療養のため労働することができない日が()日以上となった場合、所定の手続により、()日目以降の休業した日について、休業補償給付および休業特別支給金の支給を受けることができます。その給付額は、原則として、休業1日につき、休業補償給付は休業給付基礎日額の()%相当額であり、休業特別支給金は休業給付基礎日額の20%相当額です。
     療養開始後1年6カ月を経過した日以後において、傷病が治癒せず、当該傷病による障害の程度が労災保険の傷病等級1級から3級までのいずれかに該当する場合には、休業補償給付に代えて、()年金が支給されます。
     傷病が治癒すると、療養補償給付や休業補償給付、()年金は支給されなくなりますが、治癒した時に、身体に障害があり、労災保険の障害等級1級から()級までのいずれかに該当する場合には障害補償年金が、障害等級□□□級から14級までのいずれかに該当する場合には障害補償一時金が支給されます」
 
 
年金

正解 

① 労働保険事務組合
② 都道府県労働局長
③ 4(日)
④ 60(%)
⑤ 傷病補償(年金)
⑥ 7(級)

分野

科目:A.ライフプランニングと資金計画
細目:4.社会保険

解説

〔①、②について〕
労災保険の適用労働者は、労働基準法の対象と同じく、事業に使用されて賃金を支払われる者ですから、個人事業主や法人の役員等およびその家族従業員は、適用対象外となります。特別加入はこれらの人にも労災保険の加入の途をひらく制度です。通常の労働者とほぼ同様の保険給付が行われますが、給付基礎日額が加入者の希望によって決まり、保険料はその給付基礎日額に基づいて算出されることなど異なる部分もあります。

特別加入制度では、加入対象者を❶中小事業主等、❷一人親方その他自営業者、❸特定作業従事者、❹海外派遣者、❺農業者に区分し、それぞれに加入要件を定めています。中小事業主等が特別加入するためには、
  1. 業種ごとに定められる一定の規模以下であること
  2. 雇用する労働者について保険関係が成立していること
  3. 労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること
の3つの要件を満たし、所轄の都道府県労働局長の承認を受ける必要があります。都道府県労働局長は、都道府県ごとに置かれる厚生労働省の地方支分部局の長で、その都道府県における各種労働法の施行に関する事務を担当する機関です。

また、労働保険事務組合は、厚生労働大臣から認可を受けて、事業主の代わりに雇用保険と労災保険の申告・納付等の事務処理をする団体です。事業協同組合、商工会議所、商工会などが設置しています。手数料を支払うことで労働保険の複雑な事務処理を外部委託することができます。

よって、①は労働保険事務組合、②は都道府県労働局長が正解となります。
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〔③、④について〕
保険給付に関しては特別加入者もほぼ同様です。休業補償給付は、労働者が労災の療養のために欠勤し賃金を受けられない場合に、休業4日目から休業給付基礎日額の60%相当額の支給を受けられるものです。これに加えて、休業給付基礎日額の20%相当額の休業特別支給金も支給されます。
よって、③は4(日)、④は60(%)が正解となります。

〔⑤について〕
労災による療養開始から1年6カ月が経過した時点で傷病が治っておらず、当該傷病による障害の程度が傷病等級1級から3級に該当する場合は、それまで支給されていた休業補償給付の支給は停止され、代わりに傷病補償年金が支給されるようになります。一方、傷病等級1級から3級に該当しない場合は、傷病が治るまで引き続き休業補償給付が支給されます。
よって、正解は傷病補償(年金)となります。
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〔⑥について〕
労災による傷病が治癒したときに身体に障害が残っている場合には、障害(補償)給付の支給対象となります。障害(補償)給付では、障害等級を第1級から第14級までの14段階に分けていて、1級~7級(上半分)は年金での支給、8級~14級(下半分)は一時金での支給となっています。
よって、正解は7(級)となります。
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