FP1級 2024年1月 応用編 問54

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 Aさん(35歳)は、東京証券取引所に上場している同業種のW社およびX社について、〈W社とX社の財務データ〉を参考に投資判断を行うつもりである。また、株価に大きな影響を与える金融政策や、保有している投資信託Yと投資信託Zについて、それぞれの値動きの相関関係を知りたいと思っている。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

〈W社とX社の財務データ〉(単位:百万円)
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〈投資信託Yと投資信託Zの実績収益率・標準偏差・共分散〉
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  • 「***」は、問題の性質上、伏せてある。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問54

Mさんは、Aさんに対して、日本銀行の金融政策およびイールドカーブについて説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~⑥に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

  1. 〈日本銀行の金融政策〉
     「日本銀行の金融市場調節方針は、金融政策決定会合において、9名の政策委員会委員(総裁、2名の副総裁、6名の審議委員)によって決定されます。金融政策決定会合は、通常、年()回、2日間かけて開催されており、会合終了後、直ちに、当該会合における決定内容が公表され、政策変更がない場合も、その旨が公表されます。また、会合における『主な意見』を取りまとめたものは、原則として、会合の()営業日後に公表されます。
     なお、金融政策決定会合には、()大臣および経済財政政策担当大臣(経済財政政策担当大臣が置かれていないときは、内閣総理大臣)等が、議決権を有しないものの、必要に応じて会合に出席し、意見を述べること、議案を提出すること、次回会合まで議決を延期することを求めることができます。
     日本銀行は、金融市場調節方針のもと、日々、金融市場において資金の供給や吸収を行っています」
  2. 〈イールドカーブ〉
     「残存期間の短い債券の利回りよりも、残存期間の長い債券の利回りのほうが高く、イールドカーブが右上がりの曲線となる状態を、□□□といい、残存期間の短い債券の利回りよりも、残存期間の長い債券の利回りのほうが低く、イールドカーブが右下がりの曲線となる状態を、()といいます。イールドカーブは、長短金利差が縮小すると、傾斜が小さくなって()化し、反対に長短金利差が拡大すると、傾斜が大きくなりスティープ化します。国債のイールドカーブが()になると、将来、景気後退に向かう可能性があると言われています。
     イールドカーブが右上がりの曲線となる状態のときに、時間の経過とともに債券の利回りが下がり、価格が上昇することを()効果といいます。イールドカーブの右上がりの傾斜が大きくなればなるほど、()効果が高くなり、多くのキャピタルゲインを得ることが期待できます」
営業日
大臣
 
 

正解 

① 8(回)
② 6(営業日)
③ 財務(大臣)
④ 逆イールド
⑤ フラット(化)
⑥ ロールダウン

分野

科目:C.金融資産運用
細目:1.マーケット環境の理解

解説

〔①について〕
金融政策決定会合は、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の会合のうち、通貨及び金融の調節に関する方針など金融政策の運営に関する事項を審議・決定する会合です。委員会は9名(総裁、副総裁2名、審議委員6人)で組織され、議事は出席した委員の多数決で決することとされています。
金融政策決定会合は、日本銀行法に基づき、年8回一定期間ごとに招集されています。これは米国の連邦公開市場委員会(FOMC)の開催回数と同じです。
よって、正解は8(回)となります。

〔②について〕
金融政策決定会合が開催された場合、議事の内容が以下のタイミングで公表されます。
  • 決定内容 会合終了後直ち
  • 「主な意見」 会合の6営業日後
  • 議事要旨 次回会合の3営業日後
  • 議事録 10年後
よって、正解は6(営業日)となります。

〔③について〕
日本銀行の金融政策は、政府の行う経済政策と相まって効果を示すものですから、両者の政策には整合性がなければなりません。政府との連絡を密にし政策の整合性を確保するために、政府関係者のうち財政政策を担当する財務大臣、経済政策を担当する経済財政政策担当大臣(置かれていないときは内閣総理大臣)は、必要に応じて、金融政策決定会合に出席することができます。政府関係者に議決権はありませんが、❶意見を述べること、❷議案を提出すること、❸次回会合まで議決を延期するよう求めることができます。
知識としては知らなくても銀行というワードと大臣の種類から、直感的に財務大臣だと勘づける問題かもしれません。
よって、正解は財務(大臣)となります。

〔④について〕
イールドカーブは、債券の残存期間を横軸に、満期までの利回りを縦軸にとって両者の関係を示したグラフです。特徴的な曲線の形状として順イールドと逆イールドがあります。
順イールド
イールドカーブが右上がりになっている状態。短期債券よりも長期債券の方が利回りが高いことを示し、通常時や景気拡大時はこの状態となる
逆イールド
イールドカーブが右下がりになっている状態。短期債券よりも長期債券の方が利回りが低いことを示し、金融引締め時や景気後退が懸念される時に現れる
長期債券のほうが利回りが低くなるのは逆イールドです。よって、正解は逆イールドとなります。
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〔⑤について〕
順イールドの状態において、短期債券と長期債券の利回りの差が縮小し、傾きが小さくなることをイールドカーブの「フラット化」といいます。逆に、曲線の傾きが大きくなることを「スティープ化」といいます。傾斜が小さくなるのはフラット化です。
よって、正解はフラット(化)となります。
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〔⑥について〕
順イールドの形状を見るとわかるように、イールドカーブが右上がりの曲線を描くときには、残存期間が短い債券ほど利回りが低くなっています。仮に、その他の条件が同じであるイールドカーブ上の2つの債券があったとします。
  1. 残存期間10年・利回り1%
  2. 残存期間9年・利回り0.8%
あなたが(1)の債券を購入したとすると、1年後には残存期間9年・利回り1%の債券を保有していることになります。イールドカーブが変化しなければ、市場では9年債が0.8%で取引されていますから、あなたが保有している債券は年0.2%だけ高い価値を有していることになります。この利回りの差の分だけあなたが保有している債券の価格は高く売れることになります。このように、保有期間の経過により債券価格が上昇するメカニズムを「ロールダウン効果」といいます。ロールダウン効果は債券投資の重要なファクターのひとつです。
よって、正解はロールダウン(効果)となります。