FP1級過去問題 2024年5月学科試験 問30

問30

内国法人に係る法人税における役員給与および役員退職金に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 代表取締役が自社株式を100%保有している場合において、取締役経理部長として常時使用人としての職務に従事している代表取締役の配偶者は、使用人兼務役員となる。
  2. 役員に対して支給する定期給与の各支給時期における支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額である場合、その定期給与の当該各支給時期における支給額は、定期同額給与として損金の額に算入することができる。
  3. 外国籍の役員に対して、毎月、米ドルで同額を定期給与として支給する場合、為替変動により円に換算した額が毎月、同額とならないことから、当該定期給与は定期同額給与として損金の額に算入することができない。
  4. 自己都合により役員を退任した者に支給する役員退職金は、その支給額が職務の対価として適正な金額であっても、その支給額および支給時期についてあらかじめ所轄税務署長に届出をしていない場合、損金の額に算入することができない。

正解 2

問題難易度
肢117.3%
肢260.6%
肢36.1%
肢416.0%

解説

  1. 不適切。取締役の職にある者は、"経理部長"のように使用人としての職制上の地位を有し、常時その職務に従事しているとしても使用人兼務役員とはされません。使用人兼務役員に当たる場合は役員給与には該当しませんが、本肢の配偶者は普通の役員に当たるので役員給与として取り扱われます。また、同族株主グループに属する役員という点からも、使用人兼役員とはなりません(法人税法令71条)。
  2. [適切]。定期同額給与とは、その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与で、各支給時期における①支給額または②毎月供与される経済的利益の額が概ね一定であるものをいいます。支給額が同額でなくても、支給額から源泉税等の額(所得税、地方税、社会保険料)を控除した金額が同額であるものは、支給額が同額であるとみなされ、定期同額給与として認められます(法人税法令69条1項・2項)。
    役員に対して支給する定期給与の各支給時期における支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額である場合、その定期給与の各支給時期における支給額は、定期同額給与として損金の額に算入することができる。2020.1-30-1
    定期同額給与とは、役員に対して支給する給与で、支給時期が1カ月以下の一定の期間ごとであり、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与その他これに準ずる給与である。2015.9-31-a
  3. 不適切。外貨建てで支給される定期同額給与も、各支給時期において外貨の支給額が同額であるものは定期同額給与として損金に算入できます。円換算した毎月の支給額は為替変動により同額とはなりませんが、ここでいう「同額」とは、支給額を円換算した金額が同額であることまで求めるものではありません(法人税-質疑応答事例)。
  4. 不適切。役員退職金は、職務の対価として適正な額であれば、全額を損金算入することができます。退職理由にかかわらず、税務署へあらかじめ届け出る必要はありません。
    自己都合により役員を退任した者に支給する役員退職金を損金の額に算入するためには、その支給額が職務の対価として適正な金額であり、かつ、その支給額および支給時期についてあらかじめ税務署長に届け出る必要がある。2020.1-30-4
したがって適切な記述は[2]です。