FP1級過去問題 2024年5月学科試験 問39

問39

「固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例」(以下、「本特例」という)の適用に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
  1. Aさん所有の建物(時価300万円)とその敷地たるX土地(時価1,700万円)を、Bさん所有のY土地(時価2,000万円)と交換した場合、Aさんは建物および土地について本特例の適用を受けることができる。
  2. Aさん所有のX土地とBさん所有のY土地を交換した場合、BさんがY土地を所有していた期間が1年未満であったときは、AさんとBさんはいずれも本特例の適用を受けることはできない。
  3. Aさん所有のX土地と不動産事業を営むBさんが販売のために所有するY土地を交換した場合、AさんとBさんはいずれも本特例の適用を受けることはできない。
  4. Aさん所有のX土地とBさん所有のY土地を交換した場合、Aさんが取得したY土地を取得後、従前のX土地と同一の用途に供することなく直ちに売却しても、Bさんは本特例の適用を受けることができる。

正解 1

問題難易度
肢150.1%
肢218.1%
肢316.5%
肢415.3%

解説

固定資産の交換の譲渡所得の特例とは、個人が土地と土地、建物と建物などのように同じ種類の固定資産を交換したときに、その譲渡がなかったものとする特例です。本特例の適用を受けるためには下記6つの要件を満たす必要があります。
  1. 同じ種類の資産の交換であること(借地権は土地とみなす)
  2. 交換対象資産が販売のために所有している固定資産(棚卸資産)でないこと
  3. 譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること
  4. 取得する資産は、相手が1年以上所有していたものであり、交換のために取得したものでないこと
    →取得資産を交換直後に譲渡するとNG
  5. 取得する資産を交換前と同じ用途で使用すること
  6. 交換する資産同士の時価の差額が、高い方の価額の20%以内であること
なお、交換差金がある場合には、授受した交換差金が譲渡所得として所得税の課税対象となります。
  1. [不適切]。Aさんの譲渡資産である土地1,700万円と、交換取得資産であるBさんの土地2,000万円の時価の差額300万円は、高い方の土地の20%(2,000万円×20%=400万円)以内なので、土地については特例適用を受けることができます。しかし、同じ種類の資産と交換されていない建物については、本特例の適用を受けることはできません。
    Aさんが、所有する建物(時価200万円)とその敷地たるX土地(時価1,800万円)を、Bさん所有のY土地(時価2,000万円)と交換した場合、AさんとBさんはいずれも土地の部分については本特例の適用が受けられ、建物の部分(時価200万円)については交換差金となり、Aさんは建物を200万円で譲渡し、BさんはY土地のうち200万円相当額を譲渡したとして、それぞれ譲渡所得の課税対象となる。2021.9-39-a
    Aさんが、X土地(Aさんの持分3分の1、Bさんの持分3分の2)のうちのAさんの持分3分の1(時価1,000万円)を、Bさん所有のY土地(時価1,000万円)と交換して、X土地をBさんの単独所有、Y土地をAさんの単独所有とした場合、AさんとBさんはいずれも本特例の適用が受けられる。2021.9-39-b
    Aさん所有の土地(時価2,000万円)とBさん所有の土地(時価2,000万円)を交換した場合において、Aさんが、交換により取得した土地を取得後、同一の用途に供することなく、直ちに売却したときは、AさんとBさんの双方が本特例の適用を受けることができなくなる。2021.9-39-c
    Aさんが、所有するX宅地(時価6,000万円)を、Bさん所有のY宅地(時価5,000万円)と交換した場合、Aさんは、これらの宅地の時価の差額相当額(1,000万円)の交換差金をBさんから収受しないときは、本特例の適用が受けられない。2014.1-40-1
    Aさんが、所有するX宅地(時価4,500万円)および建物(時価500万円)を、Bさん所有のY宅地(時価5,000万円)と交換した場合、Bさんが、交換により取得した建物を取り壊したとしても、AさんはX宅地の部分について本特例の適用が受けられ、建物の部分(時価500万円)については交換差金として課税対象となる。2014.1-40-2
    Aさんが、X宅地(Aさんの持分3分の1、Bさんの持分3分の2)のうちのAさんの持分3分の1(時価1,000万円)を、Bさん所有のY宅地(時価1,000万円)と交換して、X宅地をBさんの単独所有、Y宅地をAさんの単独所有とした場合、Aさんは本特例の適用が受けられる。2014.1-40-3
    Aさんが、2023年10月に相続(限定承認に係るものではない)により取得したX宅地(時価1,000万円、父が平成10年12月に売買により取得したもの)を、Bさん所有のY宅地(時価1,000万円)と交換した場合、Aさんは本特例の適用が受けられる。2014.1-40-4
  2. 適切。本特例の適用を受けるためには、譲渡する資産・取得する資産のそれぞれが1年以上所有されていたことが要件となります。本肢では、Bさんが交換に出した土地の所有期間が1年未満であり、Aさんからすると取得する資産が1年未満、Bさんからすると譲渡する資産が1年未満となるため、両者ともに本特例の適用を受けることはできません。
  3. 適切。本特例の適用対象となる資産は、販売のために所有している固定資産(棚卸資産)でないことが要件です。Bさんが交換対象としているのは販売用に所有する土地なので、本特例の適用を受けることはできません。
  4. 適切。本特例の適用を受けるには、取得した資産を交換前と同じ用途で使用する必要があります。Bさんが交換して取得した資産を同じ用途で使用すればよいので、交換相手であるAさんが直ちに売却したとしても、Bさんには影響がなく本特例の適用を受けることができます。
したがって不適切な記述は[1]です。