FP1級 2024年5月 応用編 問54

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 Aさん(43歳)は、資産形成を目的として上場株式と投資信託への投資を行うことを検討している。Aさんは、上場株式については同業種のX社とY社に興味を持っており、投資対象としてふさわしいかX社とY社の財務データを比較してみたいと考えている。また、上場株式や投資信託への投資にあたり、2024年1月から始まったNISAを利用したいと考えている。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

〈X社とY社の財務データ等〉(単位:百万円)
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  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問54

《設例》の〈X社とY社の財務データ等〉に基づいて、Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。また、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

 「X社とY社の財務データについて比較検討すると、売上高はY社がX社の約1.38倍ですが、総資産経常利益率ではX社の値が約()%、Y社の値が約□□□%であり、X社の資産効率のほうがよいといえます。総資産経常利益率を、売上高経常利益率と()率の2指標に分解して比較すると、前者についてはX社の値が約13.25%、Y社の値が3.40%、後者についてはX社の値が約0.88回、Y社の値が約1.22回であることから、X社のほうが売上高に対する経常的な利益の割合、いわゆる利幅がより高いことがその要因だとわかります。
 また、株主への利益還元の度合いを測る指標である()で比較すると、X社の値が約□□□%であるのに対してY社の値が約()%であり、Y社のほうが株主への利益還元の度合いが高いといえます。なお、企業活動において、外部から資金調達を行わずに内部留保を再投資して実現できる成長率をサスティナブル成長率と呼び、自己資本利益率が一定である場合、()が低いほうがサスティナブル成長率は高くなります」
 

正解 

① 11.71(%)
② 総資産回転(率)
③ 配当性向
④ 26.97(%)

分野

科目:C.金融資産運用
細目:5.株式投資

解説

〔①について〕
総資産経常利益率は、貸借対照表上の総資産に対する経常利益の割合で「当期経常利益÷総資産×100」の算式で求めます。X社の経常利益は288,000、総資産は2,460,000なので、総資産経常利益率は、

 288,000÷2,460,000×100=11.707…%
(小数点以下第3位四捨五入)11.71%

よって、正解は11.71(%)となります。

〔②について〕
総資産経常利益率を、売上高経常利益率と()の2指標に分解すると次のような形になります。

 経常利益総資産経常利益売上高×②

②の分子は、売上高経常利益率の分母である売上高と約分されるべきなので「売上高」、売上高で約分された後に残る分母には総資産が当てはまります。

 経常利益総資産経常利益売上高×売上高総資産

分子が売上高、分母が総資産である指標は総資産回転率です。
よって、正解は総資産回転(率)となります。

〔③について〕
株主への利益還元度合いですから、配当性向または配当利回りが当てはまると予想できます。本問では株価が示されておらず配当利回りの計算は不可能なので、配当性向が適切と考えることができます。
さらに、設問最後の『()が低いほうがサスティナブル成長率は高く』に注目すると、サスティナブル成長率(%)=内部留保率×自己資本利益率×100、内部留保率=1-配当性向 ですから、空欄に当てはまるのは配当性向と判断できます。
よって、正解は配当性向となります。

〔④について〕
配当性向は、当期純利益のうちどれだけの金額を配当金の支払いに充てたかを示す指標で、「配当金総額÷当期純利益×100」の算式で求めます。Y社の配当金総額は24,000、当期純利益は89,000なので、配当性向は、

 24,000÷89,000×100=26.966…%
(小数点以下第3位四捨五入)26.97%

よって、正解は26.97(%)となります。