FP1級 2024年5月 応用編 問53

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(59歳)は、妻Bさん(56歳)と母Cさん(83歳)との3人暮らしである。X社は、満60歳の定年制を採用しているが、継続雇用制度を利用した場合、最長で65歳まで勤務することができる。Aさんは、X社の継続雇用制度を利用して65歳まで同社に勤務するつもりであるが、65歳でX社を退職したあとに再就職するかどうかは、まだ決めていない。
 また、最近、要介護状態にある母Cさんの体調が思わしくなく、主に介護をする妻Bさんの負担が増えていることから、介護のために休みを取得したいと考えている。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんにアドバイスを求めることにした。Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。

〈Aさんの家族に関する資料〉
  1. Aさん(本人)
    • 1965年4月28日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1984年4月から1990年3月まで厚生年金保険の被保険者である。
      1990年4月から2000年3月まで国民年金の第1号被保険者である。1990年4月から1991年3月までは申請により保険料全額免除の適用を受けている(追納はしていない)が、1991年4月から2000年3月までは保険料を納付している(付加保険料は納付していない)。
      2000年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である。
      ※過去に厚生年金基金の加入期間はない。
    • 全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
    • 2000年4月から現在に至るまで雇用保険の一般被保険者である。
  2. Bさん(妻)
    • 1967年11月10日生まれ
    • 公的年金の加入歴
      1986年4月から2020年3月まで厚生年金保険の被保険者である。
      2020年4月から現在に至るまで国民年金の第3号被保険者である。
  3. Cさん(母)
    • 1940年12月6日生まれ
    • 収入は公的年金(老齢基礎年金および老齢厚生年金)のみである。
  • 妻Bさんおよび母Cさんは、Aさんと同居し、現在および将来においても、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
  • Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問53

Aさんが、定年後もX社の継続雇用制度を利用して厚生年金保険の被保険者として同社に勤務し、65歳で退職して再就職しない場合、Aさんが原則として65歳から受給することができる公的年金の老齢給付について、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、計算にあたっては、《設例》の〈Aさんの家族に関する資料〉および下記の〈条件〉に基づき、年金額は、2023年度価額に基づいて計算するものとする。また、妻Bさんは、公的年金の老齢給付を65歳から受給するものとする。

  1. 老齢基礎年金の年金額はいくらか。
  2. 老齢厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。
〈条件〉
  1. 厚生年金保険の被保険者期間
    • 総報酬制導入前の被保険者期間:108月
    • 総報酬制導入後の被保険者期間:324月
  2. 平均標準報酬月額および平均標準報酬額(65歳到達時点、2023年度再評価率による額)
    • 総報酬制導入前の平均標準報酬月額:22万円
    • 総報酬制導入後の平均標準報酬額:45万円
  3. 報酬比例部分の給付乗率
    • 総報酬制導入前の乗率:1,000分の7.125
    • 総報酬制導入後の乗率:1,000分の5.481
  4. 経過的加算額
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  5. 加給年金額
    39万7,500円(要件を満たしている場合のみ加算すること)

正解 

① 781,750(円)
795,000円×468月+12月×1/3480月=781,750円
② 1,485,494(円)
220,000円×7.1251,000×108月+450,000円×5.4811,000×324月
=968,420円(円未満四捨五入)
1,657円×432月-795,000円×360月480月=119,574円
968,420円+119,574円=1,087,994円
1,087,994円+397,500円=1,485,494円

分野

科目:A.ライフプランニングと資金計画
細目:5.公的年金

解説

〔①について〕
老齢基礎年金の年金額は、以下の算式で求めます。2023年度の基本年金額は795,000円です。

 基本年金額×保険料納付済月数480月

Aさんは、19歳0か月から厚生年金保険の被保険者であり、その後は国民年金第1号被保険者を経て、65歳まで厚生年金の被保険者となっています。保険料納付実績としては1990年4月から1991年3月まで1年間(12月)の全額免除期間を除く、「480月-12月=468月」が保険料納付済期間となります。

保険料免除期間は、免除された時期とその免除割合に応じて、一部が年金額に反映されます。Aさんの全額免除期間は2009年3月以前のものなので、全額免除期間の月数の1/3が保険料納付済期間に算入されます。
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したがって、老齢基礎年金の年金額は、

 795,000円×468月+12月×1/3480月
=795,000円×472月480月=781,749.9…円
(円未満四捨五入)781,750円

よって、正解は781,750(円)です。

〔②について〕
65歳以上の老齢厚生年金の年金額は、以下の算式で求めます。

 報酬比例部分の額+経過的加算額+加給年金額

【報酬比例部分の額】
次式で算出される額の合計になります。
  • 平均標準報酬月額×7.1251,000×総報酬制導入前の被保険者期間月数
    ※2003年3月以前
  • 平均標準報酬月額×5.4811,000×総報酬制導入後の被保険者期間月数
    ※2003年4月以降
厚生年金被保険者期間は総報酬制導入前が108月、総報酬制導入後が324月なので、報酬比例部分の額は、

 220,000円×7.1251,000×108月+450,000円×5.4811,000×324月
=220円×7.125×108月+450円×5.481×324月
=169,290円+799,129.8円=968,419.8円
(円未満四捨五入)968,420円

【経過的加算額】
厚生年金の被保険者期間の合計は「108月+324月=432月」です。20歳以上60歳未満の被保険者期間の月数ですが、Aさんには19歳0か月~19歳11か月までの1年分(12月)および60歳から65歳までの5年分(60月)があるので、この両方を差し引いた「432月-12月-60月=360月」となります。これを計算式に当てはめると、

 1,657円×432月-795,000円×360月480月
=715,824円-596,250円=119,574円

【加給年金額】
次の表の条件を満たすときに支給されます。被保険者期間の要件は満たしており、妻BさんはAさんより年下です。また、妻Bさんは厚生年金の被保険者期間を20年以上有していますが、特別支給の老齢厚生年金や本来の老齢厚生年金を受給していません。したがって、加給年金額397,500円の支給対象となります。
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以上より、老齢厚生年金の基本年金額は、

 968,420円+119,574円+397,500円=1,485,494円

よって、正解は1,485,494(円)です。