FP1級 2024年5月 応用編 問62

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 Aさん(55歳)は、S市にある自宅(甲土地および甲土地上の戸建て住宅)と乙土地を8年前に父親の相続により取得している。現在、Aさんは自宅で妻と2人で暮らしているが、近々、自宅を売却し、息子夫婦が住むM市に住宅を購入する予定である。また、乙土地は月極駐車場として使用しているが、収益性が低く、将来の相続時に相続税評価額が高くなることが予想されることから、乙土地上に賃貸マンションを建築して賃貸事業を開始することを検討している。
 甲土地および乙土地の概要は、以下のとおりである。

〈甲土地および乙土地の概要〉
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  • 甲土地は252㎡の長方形の土地であり、乙土地は360㎡の長方形の土地である。
  • 幅員18mの公道は、建築基準法第52条第9項の特定道路であり、特定道路から甲土地および乙土地までの延長距離は42mである。
  • 幅員3mの公道は、建築基準法第42条第2項により特定行政庁の指定を受けた道路である。3m公道の道路中心線は、当該道路の中心部分にある。また、3m公道の甲土地および乙土地の反対側は宅地であり、がけ地や川等ではない。
  • 甲土地および乙土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地ではない。
  • 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
  • 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問62

乙土地に賃貸マンション(耐火建築物)を建築する場合、次の①および②に答えなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は㎡表示とすること。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。

  1. 建蔽率の上限となる建築面積はいくらか。
  2. 容積率の上限となる延べ面積はいくらか。特定道路までの距離による容積率制限の緩和を考慮すること。
〈特定道路までの距離による容積率制限の緩和に関する計算式〉
W1(a-W2)×(b-L)b
W1:前面道路幅員に加算される数値
W2:前面道路の幅員(m)
L :特定道路までの距離(m)
※「a、b」は、問題の性質上、伏せてある。

正解 

① 350(㎡)
② 1,764(㎡)

分野

科目:E.不動産
細目:3.不動産に関する法令上の規制

解説

まず、乙土地は2項道路(東側の3m道路)に接しているためセットバックについて考慮する必要があります。
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道路の反対側はがけ地や川等ではないことから、道路の中心線から2mの線まで後退することとなり、乙土地の東側0.5mがセットバック部分になります。このため、建蔽率・容積率の算定上に用いる敷地面積の計算に当たっては横幅を「18m-0.5m=17.5m」とみなします。したがって、乙土地の敷地面積は東側が0.5mだけ狭い「20m×17.5m=350㎡」となります。

〔①について〕
「敷地面積×建蔽率」で計算します。建築面積の計算では建蔽率の緩和を考慮する必要があります。
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本問の建物は耐火建築物であり、建蔽率80%の防火地域内に建築されるため、建蔽率の制限はなくなります。つまり、敷地面積の100%まで建築することができます。乙土地は350㎡なので建築面積の限度は、

 350㎡×100%=350㎡

よって、正解は350(㎡)になります。

〔②について〕
前面道路の幅員が6m以上12m未満である建築物の敷地が、70m以内の距離で幅員15m以上の道路(特定道路)に接続されている場合、その敷地の容積率の計算に当たり、以下の式で計算される値を前面道路幅に加算することができます。
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設問の式にW2=6、L=42を代入すると、前面道路幅員に加算される数値W1は、

 W1(12-6)×(70-42)706×287016870=2.4m

得られた2.4mを、乙土地が接している道路のうち幅員が最大の6m道路に加算した「6m+2.4m=8.4m」が前面道路の幅員となり、これを使って延べ面積の限度を算定することになります。指定容積率が600%、前面道路の幅員×法定乗数が「8.4m×0.6=5.04」なので、適用される容積率は2つを比べて小さい504%となります。乙土地は350㎡なので延べ面積の限度は、

 350㎡×504%=1,764㎡

よって、正解は1,764(㎡)になります。