FP1級過去問題 2025年1月学科試験 問50

問50

会社法における種類株式に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢において、発行会社は、いずれも株式会社かつ取締役会設置会社であるものとする。
  1. 取得条項付株式は、株式会社が発行する株式について、株主が株式会社に対して当該株式の取得を請求することができる旨を定めた株式であり、その取得対価には金銭のほか、社債や新株予約権等を定めることができる。
  2. 譲渡制限株式は、株式会社が発行する株式について、譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨を定めた株式であり、発行する株式の全部が譲渡制限株式である株式会社は、非公開会社とされる。
  3. 拒否権付株式は、株主総会または取締役会で決議すべき一定の事項について、当該決議のほか、当該種類株主による種類株主総会の決議が必要となる株式であり、相続により取得した当該株式の相続税評価については、普通株式の評価方法とは異なり、その拒否権を考慮して評価するものとされている。
  4. 全部取得条項付株式は、株式会社が発行する株式について、株式会社が株主総会の普通決議によって当該株式の全部を取得することができる旨を定めた株式であり、一般に、少数株主の排除や敵対的買収への防衛等を目的として発行される。

正解 2

問題難易度
肢112.4%
肢249.5%
肢323.4%
肢414.7%

解説

  1. 不適切。取得条項付株式は、一定の事由が生じたことを条件として、会社が株主からその株式を取得できる定めのある株式です(会社法2条19号)。一方で、本肢のように、株主が会社に対して株式の取得を請求する権利が付いた株式は、取得請求権付株式と呼ばれます(会社法2条18号)。
    取得条項の発動により株主から株式を買い取る場合、定款に定めることでその対価として、金銭のほか社債、新株予約権、新株予約権付社債を交付することができます(会社法107条2項3号)。
  2. [適切]。会社法の定義では、公開会社は「発行する株式の全部または一部について譲渡制限を定めていない株式会社」とされています(会社法2条5号)。非公開会社は公開会社以外の株式会社です。つまり、自由に譲渡できる株式が1株でもあれば公開会社、全部が譲渡制限株式の会社は非公開会社となります。
  3. 不適切。拒否権を考慮されません。拒否権付株式は、株主総会や取締役会で決定すべき重要な事項について、その決議に加えて当該種類株主による種類株主総会での決議も必要となる株式です(会社法108条1項8号)。「黄金株」とも呼ばれます。この株式を持つ株主は、特定の決議に対して拒否できる権限をもつため、企業防衛や創業者の影響力維持の目的で用いられます。このように価値が高い種類株式ですが、税務上の評価においては、普通株式と区別されることはなく同様に評価されます(文書回答事例)。
    拒否権付株式は、株主総会または取締役会で決議すべき一定の事項について、当該決議のほか、当該種類株主による種類株主総会の決議が必要となる株式である。2021.1-50-4
  4. 不適切。普通決議ではありません。全部取得条項付株式は、株式会社が発行する株式について、会社が株主総会の特別決議によって株式の全部を取得できる旨の定めがある株式です(会社法108条1項7号)。少数株主が保有する株式を強制的に買い上げる「キャッシュアウト」や、敵対的業者によって取得された株式の買取り策などの目的で発行されています。
したがって適切な記述は[2]です。