FP1級 2025年1月 応用編 問59

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 製造業を営むX株式会社(資本金10,000千円、青色申告法人、同族会社かつ非上場会社で株主はすべて個人、租税特別措置法上の中小企業者等に該当し、適用除外事業者ではない。以下、「X社」という)の2026年3月期(2025年4月1日~2026年3月31日。以下、「当期」という)における法人税の確定申告に係る資料は、以下のとおりである。

〈X社の当期における法人税の確定申告に係る資料〉
  1. 減価償却費に関する事項
    当期における減価償却費は、その全額について損金経理を行っている。このうち、建物の減価償却費は8,000千円であるが、その償却限度額は7,500千円であった。一方、器具備品の減価償却費は2,500千円で、その償却限度額は2,800千円であった。
  2. 交際費等に関する事項
    当期における交際費等の金額は10,000千円で、全額を損金経理により支出している。このうち、参加者1人当たり10千円以下の飲食費が500千円含まれており、その飲食費を除いた接待飲食費に該当するものが6,000千円含まれている(いずれも得意先との会食によるもので、専ら社内の者同士で行うものは含まれておらず、所定の事項を記載した書類も保存されている)。その他のものは、すべて税法上の交際費等に該当する。
  3. 受取配当金に関する事項
    当期において、上場会社であるY社から、X社が前々期から保有しているY社株式に係る配当金600千円(源泉所得税控除前)を受け取った。なお、Y社株式は非支配目的株式等に該当する。
  4. 税額控除に関する事項
    当期における「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」に係る税額控除額が300千円ある。
  5. 「法人税、住民税及び事業税」等に関する事項
    1. 損益計算書に表示されている「法人税、住民税及び事業税」は、預金の利子について源泉徴収された所得税額30千円・復興特別所得税額630円、受取配当金について源泉徴収された所得税額90千円・復興特別所得税額1,890円および当期確定申告分の見積納税額1,900千円の合計額2,022,520円である。なお、貸借対照表に表示されている「未払法人税等」の金額は1,900千円である。
    2. 当期中に「未払法人税等」を取り崩して納付した前期確定申告分の事業税(特別法人事業税を含む)は730千円である。
    3. 源泉徴収された所得税額および復興特別所得税額は、当期の法人税額から控除することを選択する。
    4. 中間申告および中間納税については、考慮しないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問59

「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」(賃上げ促進税制。以下、「本控除」という)に関する以下の文章の空欄①~⑦に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

 「本控除は、青色申告書を提出する一定の企業において国内雇用者に対する給与等の支給額が増加した場合に、所定の方法により計算した金額を法人税額から控除することができる制度であり、中小企業者等(以下、「中小企業」という)向け、特定法人(以下、「中堅企業」という)向け、全企業向けで異なる適用要件と控除率が設けられています。
 中小企業では、雇用者給与等支給額が前事業年度から()%以上増加した場合に、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%相当額を税額控除することができます。また、上乗せ措置として、雇用者給与等支給額が前事業年度から2.5%以上増加した場合には、税額控除率に□□□%が加算され、教育訓練費の額が前事業年度から5%以上増加した場合(ただし、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合に限る)には、税額控除率に()%が加算されます。さらに、本控除の適用年度において、()やえるぼし(2段階目以上)の認定を取得した場合等には、税額控除率に□□□%が加算されます。中小企業では、これらすべての上乗せ措置の要件を満たした場合、最大で控除対象雇用者給与等支給増加額の()%相当額を税額控除することができます。
 中堅企業では、継続雇用者給与等支給額が前事業年度から3%以上増加した場合に、控除対象雇用者給与等支給増加額の10%相当額を税額控除することができます。また、上乗せ措置として、継続雇用者給与等支給額が前事業年度から4%以上増加した場合には、税額控除率に□□□%が加算され、教育訓練費の額が前事業年度から10%以上増加した場合(ただし、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合に限る)には、税額控除率に□□□%が加算されます。さらに、本控除の適用年度末において、プラチナ()やプラチナえるぼしの認定を取得している場合等には、税額控除率に□□□%が加算されます。中堅企業では、これらすべての上乗せ措置の要件を満たした場合、最大で控除対象雇用者給与等支給増加額の()%相当額を税額控除することができます。
 全企業向けにおいても、継続雇用者給与等支給額の前事業年度からの増加割合に基づく税額控除や税額控除率の上乗せ措置があります。ただし、その適用要件や税額控除率については、全企業向けよりも中小企業向けや中堅企業向けのほうが緩和、優遇されています。
 本控除による控除額は、適用年度の法人税額の()%相当額が限度となります。なお、中小企業では、適用年度の法人税額から控除しきれない金額(繰越税額控除限度超過額)を、最長で()年間にわたって繰り越すことができます」
 
年間

正解 

① 1.5(%)
② 10(%)
③ くるみん
④ 45(%)
⑤ 35(%)
⑥ 20(%)
⑦ 5(年間)

分野

科目:D.タックスプランニング
細目:10.法人税

解説

賃上げ促進税制の概要は次のとおりです。
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〔①について〕
賃上げ促進税制は、当期の給与等支給額が前事業年度の給与等支給額と比較して一定以上増加したときに、給与等支給増加額のうち一定割合の税額控除が受けられるものです。中小企業では1.5%以上増加したときに給与等支給増加額の15%が税額控除されるというのが基本的な枠組みです。
よって、正解は1.5(%)となります。

〔②、③について〕
賃上げ促進税制には、上記に加えて一定の要件を満たすことにより、税額控除率が増える上乗せ措置があります。中小企業に係る上乗せ要件は以下のとおりです。
  • 前事業年度に対する給与等支給額の増加割合が、2.5%以上であれば税額控除率が15%プラスされる
  • 当期の教育訓練費が前事業年度の教育訓練費と比較して5%以上増加し、かつ雇用者給与等支給額の0.05%以上であれば、税額控除割合が10%プラスされる
  • くるみん認定以上またはえるぼし認定(2段階目)以上を受けていれば、税額控除割合が5%プラスされる
よって、②は10(%)、③はくるみんが正解となります。

〔④について〕
中小企業が上乗せ要件のすべてを満たした場合、基本控除率の15%に加えて、給与増加割合で+15%、教育訓練費で+10%、子育て・女性活躍推進で+5%となり、合計で「15+15+10+5=45%」の控除率となります。
よって、正解は45(%)となります。

〔⑤について〕
中堅企業に係る上乗せ要件は以下のとおりです。
  • 前事業年度に対する給与等支給額の増加割合が、4%以上であれば税額控除率が15%プラスされる
  • 当期の教育訓練費が前事業年度の教育訓練費と比較して10%以上増加し、かつ雇用者給与等支給額の0.05%以上であれば、税額控除割合が5%プラスされる
  • プラチナくるみん認定またはえるぼし認定(3段階目)以上を受けていれば、税額控除割合が5%プラスされる
中堅企業が上乗せ要件のすべてを満たした場合、基本控除率の10%に加えて、給与増加割合で+15%、教育訓練費で+5%、子育て・女性活躍推進で+5%となり、合計で「10+15+5+5=35%」の控除率となります。
よって、正解は35(%)となります。

〔⑥について〕
本控除によって税額控除することができる金額は、大企業・中堅企業・中小企業にかかわらず、適用年度の控除前法人税額の20%が限度です。
よって、正解は20(%)となります。

〔⑦について〕
中小企業については、要件を満たす賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額がある場合、その金額を最長で5年間繰り越して各年の法人税額から控除することができます。
よって、正解は5(年間)となります。