FP1級過去問題 2025年5月学科試験 問46

問46

民法における配偶者居住権に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  1. 配偶者居住権は、居住建物の全部について無償で使用および収益をする権利であるが、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合、配偶者は配偶者居住権を取得することができない。
  2. 配偶者居住権を有する配偶者は、配偶者居住権を譲渡することができず、居住建物の所有者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用または収益をさせることができない。
  3. 配偶者居住権の存続期間は、遺産分割協議等において別段の定めがされた場合を除き、配偶者の終身の間とされている。
  4. 配偶者の死亡により配偶者居住権が消滅した場合、居住建物の所有者が、その消滅直前に当該配偶者が有していた配偶者居住権の価額に相当する金額を、相続または遺贈により取得したものとみなされる。

正解 4

問題難易度
肢115.0%
肢213.6%
肢36.6%
肢464.8%

解説

  1. 適切。居住建物に被相続人やその配偶者以外の共有者が存在する場合には、配偶者居住権は成立しません。これは共有者が子であった場合でも同様です。被相続人の一方的な意思表示等により、他の共有者に無償の居住を受忍させるのは酷であるためです(民法1028条)。
    被相続人が相続開始時に居住建物を子と共有していた場合、被相続人の配偶者は被相続人が所有していた共有持分に応ずる配偶者居住権を取得することができる。2024.5-45-1
    被相続人が相続開始時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合、配偶者は被相続人が所有していた共有持分に応ずる配偶者居住権を取得することができる。2022.9-44-1
  2. 適切。配偶者居住権は、被相続人と同居していた配偶者をそのまま自宅に住まわせるために認められる一身専属的な権利なので、第三者に譲渡することはできません。また、他の相続人所有の建物を借り受けて住んでいるようなものなので、所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築や増築をしたり、居住建物を第三者に使用収益させたりすることができません(民法1032条)。
    配偶者居住権は、譲渡することはできないが、配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得れば、当該居住建物を第三者に使用させることができる。2022.9-44-4
  3. 適切。配偶者居住権の存続期間は、原則として配偶者の終身の間となりますが、遺産分割協議や遺言に別段の定めがある場合は、その定めるところによります(民法1030条)。
    配偶者居住権の存続期間は、遺産分割協議等において別段の定めがされた場合を除き、配偶者の終身の間とされている。2022.9-44-2
  4. [不適切]。配偶者居住権は、一身専属的な権利のため相続の対象となりません。死亡により配偶者居住権が消滅した場合は、特に課税関係は生じず、居住建物やその敷地の所有者に対し相続税は課税されません。なお、合意解除や放棄の場合において対価の支払いがなかった場合には、居住建物の所有者に贈与税が課税されます(相基通9-13の2)。
したがって不適切な記述は[4]です。