FP1級過去問題 2025年9月学科試験 問19

問19

株式の投資指標等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. ROICは、企業が事業活動のために投下した資本を使って、どれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標であり、一般に、当期純利益を株主資本および有利子負債の合計額で除して算出される。
  2. WACCは、企業の資金調達におけるコスト(資本コスト)を示す指標であり、一般に、株主の期待する収益率(株主資本コスト)と、有利子負債に係る債権者の要求する収益率(負債コスト)を単純平均して算出される。
  3. 株価キャッシュフロー倍率は、株価が割高であるか割安であるかを判断するための指標であり、一般に、株価を1株当たりキャッシュフローで除して求められる。
  4. イールドレシオは、株式相場が割高であるか割安であるかを判断するための指標であり、一般に、株式益利回りから長期債利回りを差し引いて求められる。

正解 3

問題難易度
肢110.3%
肢29.8%
肢367.0%
肢412.9%

解説

  1. 不適切。当期純利益ではありません。ROIC(Return On Invested Capital:投下資本利益率)は、企業が事業活動のために投下した資本(株主資本+有利子負債)を使って、本業でどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。ROICでは利益の指標として税引後営業利益(NOPAT)を使います。
    ●ROIC(%)=税引後営業利益/(株主資本+有利子負債)×100
     税引後営業利益=営業利益-(1-実効税率)
  2. 不適切。単純平均ではありません。WACC(Weighted Average Cost of Capital:加重平均資本コスト)は、資金を調達するのに要する平均コストを表す指標です。企業によってデット(借金・負債)とエクイティ(株式)のバランスは異なるため、株主資本コストと負債コストを加重平均することで算出します。
    ●WACC=株式資本コスト×株式資本の割合+税引後負債コスト×負債の割合
  3. [適切]。株価キャッシュフロー倍率(PCFR:Price Cash Flow Ratio)は、株価を1株当たりキャッシュフローで除して求めたものです。PER(株価収益率)と同じく株価の割高・割安を判断するための指標であり、PCFRの値が低いほど割安だと評価されます。
    ●株価キャッシュフロー倍率=株価÷1株当たりキャッシュフロー
  4. 不適切。イールドレシオは、株式相場の割高・割安を判断するための指標で「長期債利回り÷株式益利回り」で求めます(レシオ=比率なので除算)。これに対して、長期債利回りから株式益利回りを差し引いたものが「イールドスプレッド」です。記述のように、株式益利回りから長期債利回りを差し引く指標は存在しません。
    ●イールドレシオ=長期債利回り÷株式益利回り
したがって適切な記述は[3]です。