FP1級 2025年9月 応用編 問62

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 Aさん(50歳)は、昨年、父の相続により、弟と妹とともに実家の家屋とその敷地(甲土地)について、それぞれ3分の1ずつの共有持分を取得した。相続人は、Aさん、弟、妹の3人であり、申告期限までに相続税の申告・納付は完了している。
 父が1人で居住していた実家の家屋(築50年)は、老朽化が進んでおり、現在は空き家となっている。Aさん、弟、妹にはそれぞれ持家があることから、甲土地を売却するか、有効活用するかについて話し合っている。
 甲土地の概要は、以下のとおりである。

〈甲土地の概要〉
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  • 甲土地は400㎡の正方形の土地であり、第一種中高層住居専用地域に属する部分は300㎡、近隣商業地域に属する部分は100㎡である。
  • 幅員15mの公道は建築基準法第52条第9項の特定道路であり、特定道路から甲土地までの延長距離は63mである。
  • 甲土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。
  • 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
  • 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問62

甲土地上の第一種中高層住居専用地域に属する部分と近隣商業地域に属する部分にまたがって耐火建築物を建築する場合、次の①および②に答えなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は㎡表示とすること。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
  1. 建蔽率の上限となる建築面積はいくらか。
  2. 容積率の上限となる延べ面積はいくらか。なお、特定道路までの距離による容積率制限の緩和を考慮すること。

〈特定道路までの距離による容積率制限の緩和に関する計算式〉
W1(a-W2)×(b-L)b
W1:前面道路幅員に加算される数値
W2:前面道路の幅員(m)
L :特定道路までの距離(m)
※「a、b」は、問題の性質上、伏せてある。

正解 

① 340(㎡)
② 996(㎡)

分野

科目:E.不動産
細目:3.不動産に関する法令上の規制

解説

〔①について〕
建築物が建蔽率の異なる複数の用途地域にまたがって建築される場合、各用途地域ごとに「敷地面積×建蔽率」で建築面積を求め、その合計が敷地全体の建築面積の限度となります。

建築面積の計算では建蔽率の緩和を考慮する必要があります。
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本問の建物は防火地域と準防火地域にまたがって建築されるので、建築物全体が厳しいほうの防火地域に存するとみなして規制が適用されます。そうなると"防火地域内の耐火建築物等"に該当するため、建蔽率80%の近隣商業地域の部分は制限なし(100%)、第一種中高層地域の部分は+10%の緩和を受けられます。また、甲土地は指定角地に該当するので、さらに+10%の緩和を受けることができます(合わせて+20%)。

用途地域ごとに分けて建築面積の限度を計算し、それを合計します。
第一種中高層地域に属する部分
300㎡×(60%+20%)=240㎡
近隣商業地域に属する部分
100㎡×100%=100㎡
建蔽率の上限となる建築面積
240㎡+100㎡=340㎡
よって、正解は340(㎡)になります。

〔②について〕
前面道路の幅員が6m以上12m未満である建築物の敷地が、70m以内の距離で幅員15m以上の道路(特定道路)に接続されている場合、その敷地の容積率の計算に当たり、以下の式で計算される値を前面道路幅に加算することができます。
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設問の式にW2=6、L=63を代入すると、前面道路幅員に加算される数値W1は、

 W1(12-6)×(70-63)706×7704270=0.6m

得られた0.6mを、甲土地が接している道路のうち幅員が最大の6m道路に加算した「6m+0.6m=6.6m」が前面道路の幅員となり、これを使って延べ面積の限度を算定することになります。

用途地域ごとに分けて延べ面積の限度を計算し、それを合計します。
第一種中高層地域に属する部分
容積率:200%<6.6m×0.4=264% ∴200%
300㎡×200%=600㎡
近隣商業地域に属する部分
容積率:400%>6.6m×0.6=396% ∴396%
100㎡×396%=396㎡
容積率の上限となる延べ面積
600㎡+396㎡=996㎡
よって、正解は996(㎡)になります。