贈与と税金(全46問中1問目)

No.1

特定贈与信託契約(特定障害者扶養信託契約)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
2023年9月試験 問42
  1. 特定贈与信託契約では、委託者以外の1人の特定障害者を信託の利益の全部についての受益者としなければならない。
  2. 特定贈与信託契約は、当該信託の期間および受益者を変更することはできないが、取り消すことまたは合意によって終了することはできる。
  3. 特定贈与信託契約は、委託者が拠出する信託財産について、受益者が特別障害者の場合は6,000万円、特別障害者以外の特定障害者の場合は3,000万円を限度に贈与税が非課税とされる。
  4. 身体障害者手帳に身体上の障害の程度が2級である者として記載されている者は、特定贈与信託契約の特別障害者に該当する。

正解 2

問題難易度
肢135.8%
肢239.6%
肢39.7%
肢414.9%

解説

特定贈与信託契約(障害者非課税信託)は、障がいを持つ方の家族等(委託者)が信託銀行(受託者)に金銭等を信託し、障がいを持つ方(受益者)に対して、一生涯にわたり生活費や医療費等に充てるための金銭を定期的に送る信託契約です。対価を負担せずに信託の受益者となった場合は、受益権相当額の贈与を受けたものとみなされるのが原則ですが、本制度を利用することにより受益者となる特定障害者(特定贈与信託契約の対象となる障害者)の種別ごとに、当該信託受益権のうち一定金額まで贈与税が非課税となります(相続税法21条の4)。
  1. 適切。特定贈与信託契約は、信託利益の全部について委託者以外の1人の特定障害者を受益者とするものであり、受益者の死亡により終了するものでなければなりません(相続税法21条の4第2項)。
  2. [不適切]。特定贈与信託契約は、取消しや合意による終了、信託期間や受益者の変更ができないものでなければなりません。特定障害者扶養信託契約の主な要件は次のとおりです(相続税法令4条の12)。
    1. 受益者である特定障害者の死亡の日に終了すること
    2. 取消しや合意による終了、信託期間や受益者の変更ができないこと
    3. 金銭の支払いが、特定障害者の生活又は療養の需要に応じて定期かつ適切に行われること
  3. 適切。特定贈与信託契約では受益者の障害の程度により非課税限度額が設定されていて、受益者が特別障害者のときは6,000万円、特別障害者以外の特定障害者のときは3,000万円を限度に、受益権の設定に係る贈与税が非課税となります(相続税法21条の4第1項)。
  4. 適切。特定贈与信託契約における特別障害者とそれ以外の障害者の範囲は次のとおりです。身体障害等級が2級の者は、特別障害者に該当します(相続税法令4条の8)。
    特別障害者
    精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者、重度の知的障害者、精神障害等級が1級の者、身体障害等級が1級・2級の者など
    それ以外の障害者
    特別障害者以外の者であって、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者、知的障害者、精神障害等級が2級・3級の者など
したがって不適切な記述は[2]です。