FP1級過去問題 2023年5月学科試験 問43

問43

贈与税の課税財産等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  1. 子が、父の所有する土地を借り受け、その土地上に子の居住用家屋を建て、父に対しては土地の公租公課に相当する金額のみを支払うことにした場合、原則として、父から子に借地権の贈与があったものとされる。
  2. 非上場である同族会社に対して無償で財産が提供されたことにより、同族会社の株式の価額が増加した場合、当該同族会社の株主は、その増加した部分に相当する金額につき、当該財産を提供した者から贈与により取得したものとされる。
  3. 債務者である子が資力を喪失して債務を弁済することが困難となり、子の父が当該債務を弁済した場合、弁済された金額は父からの贈与により取得したものとみなされるが、そのうち債務を弁済することが困難である部分の金額は、贈与により取得したものとされない。
  4. 離婚により、夫が妻に居住用マンションを財産分与した場合、原則として、妻が取得した当該マンションは贈与により取得したものとされない。

正解 1

問題難易度
肢159.8%
肢216.2%
肢38.4%
肢415.6%

解説

  1. [不適切]。個人間の土地の貸し借りで借賃のやり取りがある場合でも、権利金の授受がなく、その借賃が借り受ける土地の固定資産税等相当額以下にすぎないときは使用貸借に該当します。本肢では、子が父に対して土地の公租公課に相当する金額のみ支払うとあるため、借地権の贈与には該当せず、使用貸借に当たります(昭48直資2-189)。
  2. 適切。贈与契約や遺贈によらなくても、対価の支払いなく、または著しい低額の対価で実質的に経済的利益を受けた者は、その利益を贈与により取得したものとみなされます(相続税法9条)。会社に対し無償で財産の提供があったことにより同族会社の株式または出資の価額が増加した場合、財産の提供者と株主等の間に直接の関係はありませんが、株主等は、その財産を提供した者から贈与によって増加相当額を取得したものとして取り扱われます(相基通9-2)。
    同族会社の債権者が対価を受けないで債務の免除をしたことにより、当該同族会社の株式の価額が増加した場合、当該同族会社の株主は、その増加した部分に相当する金額を当該債権者から贈与により取得したものとみなされる。2024.5-43-4
    同族会社に対して無償で財産の提供があり、同族会社の株式の価額が増加した場合、当該同族会社の株主は、その増加した部分に相当する金額を当該財産を提供した者から贈与により取得したものとみなされる。2019.1-42-4
  3. 適切。債務について免除・引受け・第三者弁済された額は、贈与による取得とみなされて贈与税の課税対象となるのが原則です。ただし、資力を喪失して債務を弁済することが困難である者が、①債務の免除、②扶養義務者による債務の引受け・弁済があった場合、取得とみなされた額のうち弁済が困難な部分の金額は、贈与税の課税対象とされません(相続税法8条)。
    本肢の事例は、弁済が困難になった子の債務を扶養義務者である父が肩代わりしているため、②に該当し、贈与による取得とはみなされません。
    債務者である子が資力を喪失して債務を弁済することが困難となり、父が当該債務を弁済した場合、弁済された金額のうち債務を弁済することが困難である部分の金額は、贈与により取得したものとされない。2025.9-42-4
  4. 適切。離婚による財産分与によって取得した財産については、夫婦の協力によって得た財産の額等を考慮して社会通念上相当な範囲内である場合は、贈与による取得とはみなされず、贈与税の課税対象となりません。ただし、その範囲を超える額や、税金逃れのための離婚と認められる場合はこの限りではありません(相基通9-8)。
    元夫が所有する居住用マンションを元妻に財産分与した場合、原則として、元妻が取得した当該マンションは、贈与により取得したものとされない。2025.9-42-3
    元夫が所有するマンションを元妻に財産分与した場合、元夫の譲渡所得の金額の計算上、当該マンションの財産分与の価額が収入金額となる。2025.1-42-2
したがって不適切な記述は[1]です。