FP1級過去問題 2019年1月学科試験 問42

問42

贈与税の課税財産に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、贈与者および受贈者はいずれも個人であるものとする。
  1. 子Aさんが、父Bさんが300万円、母Cさんが200万円、子Aさんが100万円の保険料をそれぞれ負担した生命保険契約の死亡保険金3,000万円を父Bさんの死亡に伴って受け取った場合、子Aさんが贈与により取得したものとみなされる金額は、1,000万円である。
  2. 子Dさんが、父Eさんから土地を著しく低い価額の対価で譲り受けた場合、子Dさんが資力を喪失して債務を弁済することが困難な状態にあるときを除き、当該土地の相続税評価額と支払った対価の額との差額に相当する金額を父Eさんから贈与により取得したものとみなされる。
  3. 3人が共有している財産について、そのうちの1人がその持分を放棄した場合、その持分は他の共有者に帰属し、放棄した者に係る持分を他の共有者が各自の持分に応じて贈与により取得したものとみなされる。
  4. 同族会社に対して無償で財産の提供があり、同族会社の株式の価額が増加した場合、当該同族会社の株主は、その増加した部分に相当する金額を当該財産を提供した者から贈与により取得したものとみなされる。

正解 2

問題難易度
肢128.7%
肢237.8%
肢314.2%
肢419.3%

解説

  1. 適切。保険料を複数人が負担している場合、死亡保険料の課税関係は保険料の負担割合と契約者・被保険者・受取人の関係によって分けて考えます。

    つまり、以下の3つが組み合わさっていると考えます。
    • 契約者父B、被保険者父B、受取人子A → 相続税
    • 契約者母C、被保険者父B、受取人子A → 贈与税
    • 契約者子A、被保険者父B、受取人子A → 所得税
    子Aさんが贈与により取得したものとみなされる死亡保険金は、母Cさんが負担した保険料の部分のみです。保険料負担者が複数人いる場合、保険料の負担割合によりそれぞれの課税対象となる金額が決まります。母Cさんが負担した保険料は200万円のため、贈与により取得したものとみなされる金額は、

     3000万円×200万円300万円+200万円+100万円=1,000万円

    したがって記述は適切です。
  2. [不適切]。個人から著しく低い価額の対価で譲り受けた場合、その財産の時価と支払った対価の額との差額に相当する金額が贈与によって取得したものとみなされます。本肢は「相続税評価額と対価の額との差額」としているので誤りです。扶養義務者から財産を譲り受けたとき、贈与を受けた人が資力を喪失して債務を弁済することが困難な場合は、債務を弁済することが困難な金額については例外的に贈与税の課税対象外となるのは説明のとおりです。
  3. 適切。共有している財産についてそのうちの1人がその持分を放棄した場合、放棄された持分は他の共有者の持分に帰属します。放棄された持分を取得した共有者は、その放棄による持分を贈与により取得したものとみなされます。
    兄・弟・妹の3人が共有している土地について、兄がその持分を放棄した場合、その持分は弟・妹に帰属し、兄に係る持分を弟・妹が各自の持分に応じて贈与により取得したものとみなされる。2022.1-42-4
  4. 適切。同族会社に対して無償で財産の提供があった場合や、時価より著しく低い価額で現物の出資があった場合などは株式の価額が増加することになるため、会社の株主はその増加した部分に相当する金額は贈与により取得したものとみなされます。
    非上場である同族会社に対して無償で財産が提供されたことにより、同族会社の株式の価額が増加した場合、当該同族会社の株主は、その増加した部分に相当する金額につき、当該財産を提供した者から贈与により取得したものとされる。2023.5-43-2
したがって不適切な記述は[2]です。