FP1級過去問題 2015年10月学科試験 問32

問32

株式を100%保有する関係にある内国法人の親法人と子法人間の取引において適用される税制(いわゆるグループ法人税制)等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
  1. 親法人による完全支配関係がある子法人が保有する土地(帳簿価額2,000万円)を親法人に対して時価で移転した場合、その譲渡損益は、親法人がその土地をグループ外の法人等に譲渡したときに、親法人において計上する。
  2. 親法人による完全支配関係がある子法人が親法人から寄附金を受け取った場合、親法人においては、支払った寄附金が法人税法上全額損金算入となり、子法人においては、受け取った寄附金が法人税法上全額益金算入となる。
  3. 親法人による完全支配関係がある子法人が親法人に現物分配(金銭以外の資産の交付)を行った場合には、時価により譲渡したものとされ、譲渡益に対して法人税が課される。
  4. 資本金が5億円以上の親法人による完全支配関係がある子法人は、資本金の額または出資金の額が1億円以下であっても、各事業年度の所得の金額のうち、年800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率の適用はない。

正解 4

解説

  1. 不適切。完全支配関係にある法人間において、子法人が所有していた土地を時価で親法人へ移転(譲渡)した場合、子法人側に譲渡損益が生じます。グループ法人税制によると、譲渡損益は子法人の益金や損金として計上せず、再譲渡等が行われるまで繰り延べられます。そして、第三者等に再譲渡等が行われた事業年度に子法人の益金または損金として計上されることになります。なお、完全支配関係にある法人間の資産の譲渡のうち、帳簿価額が1,000万円未満の資産や棚卸資産は、譲渡損益の繰り延べの対象になりません。
  2. 不適切。完全支配関係にある法人間において、親法人から子法人に対して寄附金の受渡しが行われた場合、親法人においては支払った寄附金の額は全額損金不算入となります。また、子法人においては受取った寄附金(受贈益)の額は全額益金不算入になります。なお、100%支配以外の法人間で寄附金の授受が行われた場合には、寄付金支出側は損金算入(損金算入限度額あり)となり、寄附金受領側はその全額を益金算入します。
  3. 不適切。完全支配関係にある法人間において、子法人が親法人に現物分配を行った場合、帳簿価額(簿価)により譲渡したものとされます。したがって子法人に譲渡損益が生じることはないため、現物分配について法人税は課されません。なお、現物分配とは金銭以外の資産を剰余金の配当等して交付することをいいます。
  4. [適切]。一般的には資本金等の額が1億円以下の中小法人であれば、課税所得800万円以下の金額に対して法人税の軽減税率が適用されます。しかし、資本金等のの額が1億円以下であっても、資本金等の額が5億円以上の親法人と完全支配関係がある子法人である場合、軽減税率は適用されません。
したがって適切な記述は[4]です。