FP1級過去問題 2015年10月学科試験 問49

問49

土地等の使用貸借に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
  1. 自己が所有する土地上に建物を建築して第三者に賃貸していた親が子に建物だけを贈与し、子は使用貸借で親から土地を借りて、建物は従前と同じ第三者に賃貸していた場合、親の所有する土地は貸家建付地として評価される。
  2. 親の借地権がある土地の所有権(底地)を子が地主から購入して、親が無償で子から土地を借りる場合、「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を所轄の税務署長に提出しないと、親から子に借地権の贈与があったものとして贈与税が課される。
  3. 子が親から借地権を無償で借りて、親の借地上に子が貸家を建てた場合、「借地権の使用貸借に関する確認書」を所轄の税務署長に提出すると、親の所有する借地権は貸家建付借地権として評価される。
  4. 子が親から借地権を無償で借りて、親の借地上に子が自宅を建てた場合、「借地権の使用貸借に関する確認書」を所轄の税務署長に提出し、使用貸借の事実が確認されないと、その実態に応じて親から子に借地権の贈与があったものとして贈与税が課される場合がある。

正解 3

問題難易度
肢119.9%
肢223.1%
肢344.2%
肢412.8%

解説

  1. 適切。子は贈与を受けた貸家のために、親の土地を無償で使用しているため使用貸借の関係にあります。使用貸借で貸している土地は、自用地価額そのままで評価するのが原則ですが、次の3つの条件を満たす場合には、例外的に貸家建付地として評価することになっています。
    1. 先に第三者と賃貸借契約している建物を贈与した
    2. その建物が建っている敷地を使用貸借している
    3. 相続開始時に贈与時の建物賃貸契約が継続している
    このような取扱いとなっているのは、贈与前に成立した借家権による敷地利用権が建物の贈与後も存続しており、それにより敷地の処分や利用等が制限されるため、その分を自用地価額から減額するのが相当だからです。
  2. 適切。借地権の目的となっている土地(底地)を借地権者以外の者が買い取った場合、本来であれば借地権者から買受人に地代が支払われるべきです。しかし、親子間のように特別な関係のときには地代の授受がないことがあります。この場合、親から子に借地権が贈与されたとみなされて贈与税の課税対象となるのが原則ですが、「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」が提出されたときは、引き続き借地権者は親であるものとみなし、贈与として取り扱わないことになっています(使用貸借通達5)。
    【参考】借地権の贈与に対して課税された場合は、混同により借地権は消滅するので、使用貸借に更改されたとみなされてその後は自用地として評価されることとなります。これに対して「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を提出した場合には、親が死亡したとき借地権として相続税が課税されることとなります。
    子が、親が有する借地権の目的となっている土地の所有権(底地)を地主から購入し、親が無償で子から土地を借りることになった場合、「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を提出しなければ、子から親に借地権の贈与があったものとして取り扱われる。2024.9-49-3
  3. [不適切]。借地権として評価されます。貸家建付借地権は、借地上に借地権者名義の貸家が建っているときの土地使用権の評価方法です。本肢の建物は子名義なのでこれに該当しません。借地権の使用貸借に係る使用権の価額はゼロとして扱われますから、借地権の目的となっている土地は借地権として評価されます。
  4. 適切。借地上に借地権者以外が所有する建物が存在する場合、その土地の使用権が、①使用貸借なのか、②借地権の転貸なのか、③借地権の譲渡なのか問題になることがあります。「借地権の使用貸借に関する確認書」は、認定課税や後日の紛議を避けるため使用貸借の事実確認を目的として税務署に提出する書類です。この書類を提出しなかった場合、借地権の転貸または譲渡があったものとして、借地権の設定対価相当額に対して贈与税が課税されることがあります(使用貸借通達2)。
したがって不適切な記述は[3]です。