FP1級 2017年1月 応用編 問52(改題)

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(59歳、独身)は、2017年2月に60歳を迎える。X社は、満60歳の定年制を採用しているが、再雇用制度が設けられており、その制度を利用して同社に再雇用された場合、最長で65歳まで勤務することができる。
 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに対し、X社の再雇用制度を利用して同社に65歳になるまで勤務し続けた場合の雇用保険からの雇用継続給付および公的年金制度からの老齢給付について、アドバイスを求めることにした。Aさんに関する資料は、以下のとおりである。

〈Aさんに関する資料〉
生年月日:1957年2月25日
社会保険の加入歴
国民年金
1977年2月から1979年3月までの大学生であった期間は任意加入していない。
厚生年金保険
1979年4月から引き続き被保険者である。
健康保険
全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
雇用保険
1979年4月から引き続き一般被保険者である。
  • Aさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問52

Aさんが、定年退職後もX社の再雇用制度を利用して同社に勤務し、62歳から特別支給の老齢厚生年金と高年齢雇用継続基本給付金を同時に受給する場合、在職支給停止の仕組みにより支給調整された年金(以下、「在職老齢年金」という)と高年齢雇用継続基本給付金との調整について、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。
なお、計算にあたっては、以下の〈条件〉と〈資料〉の計算式を利用し、支給停止基準額の計算上、支給停止調整開始額は2023年度価額を使用すること。

  1. 高年齢雇用継続基本給付金との調整前の在職老齢年金の年金額はいくらか。
  2. 高年齢雇用継続基本給付金との調整後の在職老齢年金の年金額はいくらか。
〈条件〉
  • 60歳以後の賃金月額:43万8,000円
  • 60歳以後の標準報酬月額:44万円(60歳以降、賞与の支給はない)
  • 60歳到達時の賃金月額(みなし賃金日額に30を乗じて得た額):73万円
  • 特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)の年金額:131万4,000円
〈資料〉
在職支給停止の仕組みによる支給停止基準額
支給停止基準額=(総報酬月額相当額+基本月額-支給停止調整開始額)×12×12

正解 

① 897,000(円)
1,314,000円÷12=109,500円
1,314,000円-(440,000円+109,500円-480,000円)×12×12=897,000円
② 580,200(円)
440,000円×6100×12=316,800円
897,000円-316,800円=580,200円

分野

科目:A.ライフプランニングと資金計画
細目:5.公的年金

解説

老齢厚生年金を受給しながら厚生年金の被保険者として勤務している人は、標準報酬月額と基本月額の合計が支給停止調整開始額を超えると、その超えた額の2分の1に相当する年金額が支給停止されます。
老齢厚生年金の基本月額は、調整の対象となる年金額を12で割った金額です。

 1,314,000円÷12月=109,500円

標準報酬月額は44万円、支給停止調整開始額は48万円(2023年度価額)なので、<資料>より支給停止基準額は、

 (440,000円+109,500円-480,000円)×1/2×12=417,000円

したがって、在職老齢年金の年金額(調整前)は、

 1,314,000円-417,000円=897,000円

よって、正解は897,000(円)となります。

〔②について〕
特別支給の老齢厚生年金と高年齢雇用継続給付を同時に受給する場合、老齢厚生年金の一部または全部が在職老齢年金の仕組みにより支給停止になるのに加えて、高年齢雇用継続給付の給付額に応じて最高で標準報酬月額の6%相当額が停止されます。
60歳到達時と比較した60歳以降の賃金月額の低下率は「43万8,000円÷73万円×100=60%」で、低下率が61%以下なので、高年齢雇用継続給付として賃金の15%が支給される代わりに、標準報酬月額6%相当額の年金が停止されます。

 440,000円×6%×12=316,800円

したがって、在職老齢年金の年金額(調整後)は、

 897,000円-316,800円=580,200円

よって、正解は580,200(円)となります。