FP1級 2017年1月 応用編 問59

【この問題にはが用意されています。読んでから回答してください。】
 個人事業主であるAさんは、妻Bさんと卸売業を営むとともに、所有する賃貸マンションから賃貸収入を得ている。また、Aさんは、加入していた生命保険契約を2023年6月に解約し、1,580万円の解約返戻金を受け取った。
 Aさんの家族構成および2023年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。なお、Aさんは、2023年は消費税について免税事業者であり、税込経理を行っている。

〈Aさんとその家族に関する資料〉
Aさん(50歳)
青色申告者
妻Bさん(45歳)
2023年中に青色事業専従者として給与収入90万円を得ている。
長女Cさん(24歳)
大学院生。2023年中に収入はない。
二女Dさん(20歳)
大学生。2023年中にアルバイトにより給与収入75万円を得ている。
母Eさん(80歳)
2023年中に老齢基礎年金70万円を受け取っている。

〈Aさんの2023年分の収入等に関する資料〉
  1. 事業所得に関する事項
    ①2023年中における売上高、仕入高等
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    • 上記の必要経費は税務上適正に計上されている。なお、青色事業専従者給与は
      含まれているが、売上原価および下記②の減価償却費は含まれていない。
    ②2023年中に取得した減価償却資産(上記①の必要経費には含まれていない)
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    • 償却方法は法定償却方法とする。
  2. 不動産所得に関する事項
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  3. Aさんが2023年中に解約した生命保険に関する事項
    ①一時払終身保険の解約返戻金
    契約年月
    2020年9月
    契約者(=保険料負担者)・被保険者
    Aさん
    解約返戻金額
    940万円
    正味払込済保険料
    1,000万円
    ②一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金
    契約年月
    2015年6月
    契約者(=保険料負担者)・被保険者
    Aさん
    解約返戻金額
    640万円
    正味払込済保険料
    500万円
  • 妻Bさん、長女Cさん、二女Dさんおよび母Eさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
  • Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
  • Aさんとその家族の年齢は、いずれも2023年12月31日現在のものである。
  • 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

問59

前問《問58》を踏まえ、Aさんの2023年分の課税総所得金額に対する算出所得税額(税額控除前の金額)を求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。なお、Aさんの2023年分の所得控除の合計額を300万円とし、記載のない事項については考慮しないものとする。
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正解 

 4,616,000(円)
860万円-930万円=▲70万円
70万円 > 48万円
▲70万円+48万円=▲22万円
(940万円+640万円)-(1,000万円+500万円)-50万円=30万円
2,160万円-22万円+30万円×12=2,153万円
2,153万円-300万円=1,853万円
1,853万円×40%-279万6,000円=4,616,000円

分野

科目:D.タックスプランニング
細目:2.所得税の仕組み

解説

課税総所得金額は、総所得金額から所得控除の合計額を引いた額なので、まずは総所得金額を求めます。

Aさんの収入は、事業所得・不動産所得・一時所得の金額の合計です。

【事業所得】
(問58より)2,160万円

【不動産所得】
総収入金額-必要経費で計算します。
 860万円-930万円=▲70万円

【解約返戻金 … 一時所得】
終身保険は解約時期にかかわらず一時所得、一時払個人年金保険(確定年金)は解約から5年を経過後に受け取っているので一時所得に該当します。
一時所得の金額は、総収入金額-支出金額-特別控除額(最高50万円)で計算し、求めた額のうち2分の1が総所得金額に算入されます。総収入金額は解約返戻金額の合計、支出金額は正味払込済保険料の合計なので、

 一時所得の金額 (940万円+640万円)-(1,000万円+500万円)-50万円=30万円
 総所得金額に算入する額 30万円×1/2=15万円

【損益通算】
不動産所得の必要経費には土地の取得に係るものが48万円含まれているので、この額は損益通算の対象となりません。よって、不動産所得の損失のうち損益通算できる額は「70万円-48万円=22万円」です。これを同じ経常所得グループの事業所得から引いて、事業所得の金額は「2,160万円-22万円=2,138万円」です。

以上より、総所得金額は、事業所得と一時所得を合計した「2,138万円+15万円=2,153万円」とわかります。

総所得金額が2,153万円、所得控除の合計額が300万円なので、課税総所得金額は「2,153万円-300万円=1,853万円」です。課税総所得金額を<資料>所得税の速算表に当てはめると、所得金額に対応する算出所得税額は、

 18,530,000円×40%-2,796,000円=4,616,000円

よって、正解は4,616,000(円)です。